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第二十四話

遅くなりました。

予定では今朝のいつもの時間に投稿するつもりが予約忘れ(´Д⊂ヽ

昼休みに確認して助かった…


元リーヘルム帝国の旧帝都の南門が遠目に見える位置に転移してくる。

と、キャラテが呟く。


「僕、あんまりこの辺好きじゃない…」


あ~…そらトラウマになってても仕方ないか…

俺はキャラテに言う。


「うん。その感覚はよく分かるがこう考えてみろ。ギルツゲーネフに攫われてここに囚われたから俺達と出会えたってね。」


「!」


キャラテは目を瞠って驚いている。


「そうだ!パパとママに逢えたんだもの♪パパありがとう♪」


俺に抱き付き頭をグリグリ脇腹に押し付けてくる。

俺はキャラテの頭を撫でながら旧帝都の南門に向かう。

多数の馬車が並んでいる脇を通り人が並んでいる列に並ぶ。


現在リーガントレットの第二都市リーヘルムを名乗っているこの都市は、元リーヘルム皇帝の一族が仕切っている。

ギルツゲーネフ討伐時の戦友に当時皇太子であったヴィンケルマン・イグ・ブラーエ・リーヘルムも居た。

俺がリーガントレットの国政に関わり出した時に補佐を頼み助けてもらった。

その子孫達がこの元帝都を収めている。


懐かしい景色を見て思い出に耽っていると西から多数のモンスターの反応がした。

この街の東西南二キロは森を切り開き一部は農地になっている。

東は大森林、西は隣国まで続く樹海、南は大街道で隣国、今はリーガントレットの別の街に続いていて、北はギルツゲーネフの広範囲殲滅術で小国ぐらいの平野が出来ている。


マップで確認すると数人が逃げていて、その後ろから数百以上のモンスター反応が出ている。

数が多い。トレインじゃないな。

スタンピードか…マップのギリギリの範囲で土系の上位竜が確認出来た。

真っ直ぐこっちに向かっている。

俺はため息を吐きキャラテに言う。


「キャラテ、魔物どもを蹴散らすぞ。ただしキャラテはブレスと術の使用禁止でな」


もぐもぐ物を食ってるのでこっくり頷くキャラテ。

俺達は西門に転移した。


転移してきたと同時ぐらいに襲撃を知らせる鐘が鳴り響く。

ふむ。良い反応だ。しかし多数の馬車や人を放置して門を閉めるか!

俺は首を振りつつ真っ直ぐ西に向かって歩き出す。

キャラテは俺から離れ西北に歩いている。ものを食いながら…

森と城壁の中間ぐらいで冒険者と思える男四人女二人とすれ違う。


「おい!逃げろ!今見えている雑魚はいいが、背後にドラゴンがいるんだ!」


俺は答える。


「警備兵が門を閉めたんでな。門前の一般人に被害が出ない様に全部蹴散らす。お前達は門前で俺達が討ち漏らした奴を始末してくれ。」


「分かった!死ぬなよ!」


リーダーらしき男があっさり言い、素早く去って行く。

ふっ…自爆術で足止めするとでも思ったのかな?

さて始めるか。


「炎の(ファイヤーウォール)


数キロの長さ高さは城壁と同じ二十メートルの炎の壁を作る。

恐慌状態の魔物共は止まらず突っ込んできて焼かれていく。

ゴブリン、コボルド、オークに狼系の下位魔物はそれで焼き朽ちていく。

しかしたまに抜けてくる魔物もいる。

オークジェネラル、トロール、オーガ、ハーピー、ヘルハウンド、ロックベア、バジリスク、ヒポグリフ、ミノタウロス、ワイバーンなど。


………………多くね?ってかどんだけ多種多様な生息数だよ!

空中の敵はハーピーぐらいは放置して、ヒポグリフとワイバーンは殲滅する。

地上の敵はオークジェネラルとオーガを放置、残りを殲滅していく。

チラリとキャラテを見ると、もぐもぐ物を食いながら不可視尻尾で一匹も通していない。

一振り事に、脅威の再生力を持つトロールや鋼の剣でも傷を付けるのが難しい石熊ロックベアが木っ端微塵になり散らばっていく。


炎の壁を抜けてきた魔物を二百ほど始末して、マップで確認すると雑魚はほぼ殲滅できた。

炎の壁を解除する。

そこにはオークキング、トロールキング、オーガキング三体が並んでいた。

こいつらは恐慌になっていない。

冷静で判断力を持っている。

回りを見渡し数匹しか俺の後ろに行っていないのを見て目を剥き俺の左、南の方に歩き出す。

流石に俺の正面、ドラゴンの進路に戻るつもりはないみたいだな。

が、俺は逃がすつもりは無い。

三体の進路先に転移、俺が多用する手の平サイズの火球をトロールキングに投げつける。

トロールキングは鬱陶しいとばかりに左手で払おうとするが、接触した所を焼き尽くしそのまま胸に潜り込む。

確実に体内に入ったのを視認して指を弾く。


ボン


トロールキングは弾け散った。

呆然とし尻餅を搗くオークキング。恐怖の叫びを上げ俺に突進してくるオーガキング。

くくくっ…三体の中で一番死に難いトロールキングを瞬殺されたのは恐ろしいだろうな。

次に俺の正面から来る巨体のオーガキングを十字に手刀で切り裂く。

最後にオークキングに目を向けると首を横に振りズリズリ尻を地面に付けたまま下がっていく。

その下がっていく跡に水気が残っている。


うわっ…こいつ漏らしてやがる。


俺はため息を吐き火球を投げつける。

今度の火球は着弾すると火柱を上げオークキングを燃やし尽くす様に術式を弄る。

結果を見届ける事なく最初に居た西門とドラゴンの進路上に転移で戻る。


既にキャラテが待っていて、串焼きを両手に持ち食べながら森を見ていた。

俺も森に目を向けると森から木々が倒れている様子と音が聞こえてきた。


バキバキバキバキ!!!


少し待っていると巨体が見えてくる。

キャラテより大きいな…

大体二十メートル以上あるな。

姿形はステゴサウルスに似ている。

ステゴサウルスと違うのは巨体と背中に三列の角が尻尾まで並んでいるところか。


森からのっしのっしと余裕を持って歩いて来る。

俺達から百メートルぐらいの所で足を止め首を上に向け息を吸っている。


ん?ブレスでも吐くのか?


様子を見ているとある意味ブレスを吐いた。


竜の雄叫ドラゴンクライ


聴いた者、人や魔物を分け隔てなく抵抗できなかった者達を恐慌状態に陥れる。

それに音で衝撃波ソニックブームを叩き付ける。

俺達は微動だにせずそれを受ける。

一応俺とキャラテの服を術で守ったが。

…が、キャラテが持ってた串焼きの串は忘れてた。

キャラテは左手に持ってた串焼きを齧っていた。

それは無事だった。だが右手に持っていた串はバラバラに吹き飛んだ。


………………


キャラテは右手を見ながら左手の串に残っていた肉をゆっくり咀嚼して食べ飲みこむ。

右手に残っていた串の残骸を地面に落とし拳を握る。

背後の城壁付近は恐慌に陥り騒ぎになっているが、まるで別世界の出来事の様な感じで聞こえる。


ふっとキャラテが消える。

速い!

転移じゃなく一気にドラゴンの正面に踏み込み、大型トラックのキャビンぐらいある顔面の左頬に右拳を叩き突けた。


「ギャオオオオオオォ………」


ゴロゴロ転がっていくドラゴン。

転がっていく方に転移で先回りするキャラテ。

転がって来たドラゴンを蹴り上げて空に弾き飛ばす。

叫び声を上げるドラゴン。

百メートル程離れている俺が首を少し上に向けるほど打ち上がる。

今度はキャラテ、そのまま飛び上がりドラゴンと同じ高さに達すると前転する。

踵落としかと見ていると足の届く位置に居ない。不可視の尻尾を振り下ろす気配がした。


バキバキバキ!


背中中央にあった立派な角が数本纏めて折れ飛んだ。

地面に落ちる前に全部無限収納に取り込む。

ドラゴン本体は地面に叩き付けられ周囲と深さ五十メートルぐらいのクレーターが出来た。

キャラテはクレーターの淵に下り何の感情も見せずドラゴンを見ている。

ドラゴンは身動みじろぎしクレーターの底からキャラテを見上げ、諦めた様に地面を見ながらのそのそとクレーターを上る。

キャラテから数メートル離れた所に上り、頭を下げたままキャラテの方を向きコロンと腹を見せキュウキュウ啼き出した。


こいつ命乞いを始めやがった!

それでもドラゴンの上位種か!


俺が呆気に囚われて近付きながら見ているとキャラテの右手に炎が浮かぶ。

キャラテが何か呟いている。


「上手く焼けるかなぁ~?失敗して焦がすより生で食べる方が良いかな?でもこいつらは生だと不味いしなぁ…」


食うんかい!

思わずツッコミを入れそうになったが何とか我慢する。

俺はキャラテの側に行き声を掛ける。


「キャラテ。焼くなら俺が焼いてやるぞ。」


「ほんとパパ♪」


俺とキャラテがどんな焼き加減が良いか会話していたら、

「ボン!」

と云う音がしてドラゴンが居た所に五歳ぐらいの幼女が裸で転がっていた。

一瞬俺とキャラテは会話を止め幼女を見たが直ぐに会話を続ける。


「しかしキャラテ、そのまま焼いて良いのか?この種のドラゴンは血抜きしてからよく叩いて寝かした方が美味くなるぞ?」


「でも僕、お腹減ってるし少しぐらい不味くても我慢して食べるよ?」


「チョット待ってぇぇぇ!!!」


ドラゴン幼女が叫んだ。

だが構わず俺達は会話を続ける。


「そういえば昔、確か血抜きせず、叩きまくって裂けた傷から血を流しながら処理する調理法を聞いたな。あの方法は生きたままでやらないと美味くならないって聞いた。今なら小さくなって叩きやすいからその方法で調理するか?」


「嫌あぁぁぁぁぁぁ~~~!!!」


「僕は美味しく食べられるならどんな調理でも良いよ♪じゃあ叩くね♪」


「お願いします!!!わらわの話を聞いてくだされ!!!」


ここで俺達は会話を止めドラゴン幼女を見る。


「ちょっとさっきから五月蠅いぞ。折角美味く食える様に相談しているんだから大人しく待っていろ。」


「お願いします!わらわ、まだ死にたくない!何でもしますから助けてくだされ!」


「じゃあ黙って僕に叩かれ僕の糧になれ。」


「嫌ぁあぁぁぁぁぁぁ~~~!!!!!」


キャラテの言葉で叫びながら転がりクレーターの底に落ちて行く幼女。

俺達もクレーターの底に行く。


「そういえば血抜きしてからこれぐらいの深さに埋め寝かす熟成方法もあったな…あれは最短でも十日は埋めとかないと駄目と聞いたから今回は無理だが。」


「それはまた次の機会にするよ。今は少しでも早くこいつを食べたい!」


ジュルリと涎を啜るキャラテ。

全てを諦めた顔をして泣きながら語る幼女。


「ヒック…ヒック…わらわが悪かったのじゃ…せめて苦痛を長引かせず一気に止めを刺してくだされ…」


ふむ。やっと謝ったか。

俺とキャラテはアイコンタクトして取り敢えず話を聞くことにする。

キャラテは残念そうに指を咥えて幼女を見ていたが俺の無限収納にあった調理済の竜肉を出すと笑顔で受け取った。


クレーターから出てドラゴン幼女に話を聞く。


「さて、少し時間をやろう。何か言いたいなら早く言え。つまらん言い訳ならキャラテがドラゴンの叩きにするぞ?」


「は、はい。わらわがあの街に行こうとしたのは竜珠を盗られたからなのじゃ!」


ピクッとキャラテが反応する。


竜珠


上位種のドラゴンが持っている至宝の一つ。

それも上位種が必ず持っているとは限らない秘宝とも云えるモノ。


「…さっきの冒険者たちか?」


「あの人間共じゃない。わらわが眠っている間に盗まれたんじゃ!」


「…キャラテ。叩きを始めるか?」


「待って!!!最後まで聞いて!!!わらわの睡眠は短い期間だけど深い眠りに入るから起きんのじゃ!だから寝る前は出入口を完全に封鎖して埋め地下深くで寝る。普通なら見つかるはずはないのじゃが…」


「それで怒り狂って竜珠の反応があるあの街に来たと?」


「そうじゃ!良く判ったの人間よ。竜珠の事を知っておるのか?」


「お前はキャラテがどんな存在か、まだ分からないのか?」


「?わらわを圧倒するのは凄まじいが、世には稀にいるじゃろ?わらわは人間を過小評価はせんぞ!」


「ふう…キャラテ。」


俺が声を掛けるとキャラテは一瞬だけ存在感を洩らす。

幼女は息を呑み凍り付く。

暫くするとカタカタ震えながら両膝を付きキャラテに向かい頭を地面に叩きつけ小声で呟く。


「せ、聖銀龍様とは知らずに数々のご無礼、真にすまんかったのじゃ…わらわの未熟故わらわを食してもらうことで償いとうございます…」


「竜珠を盗られたんなら仕方ない。お前を食べるのは止めてやる。」


「あ、有難い事じゃがわらわはわらわを許せませんのじゃ。」


「まあ待て。お前、何年生きている?」


「わらわはあと十年で三百歳になるが…」


「ほう…?キャラテより百以上、下か。それでは仕方ないな。」


「ん。僕より子供で竜珠を盗られてる。今回は許してやる。」


「あ、ありがとうなのじゃ!聖銀龍様、本当に許してたもれ。生を永らえるだけでも充分じゃ。竜珠は諦めて森へ帰るのじゃ…」


トボトボと森に向かって歩き出す幼女ドラゴン。


「まあ待て。このまま帰すのは公平でない。竜珠のある場所に案内しろ。俺達が取り返してやる。」


目を瞠り驚く幼女。


「め、迷惑をかけたわらわを許すどころか竜珠も取り返してくれるなんて……」


ポロポロ涙を流し頭を下げてくる。


「もし取り返してくれたなら、わらわは生涯、聖銀龍様と其方に仕えまする。」


「まぁその話はどうでも良いが、取り敢えず服を着ろ。」


俺はローブを出し渡しながら言った。






次の予定は、出番のないロセッティ視点の回想でも出そうと思います。

相変わらずノロノロ更新ですがよろしくお願いいたします。

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