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第十五話



バシン!!!



「ぐうっ…」


横殴りのキャラテ尻尾がヴェルテルを吹き飛ばす。

しかしヴェルテルは吹き飛ばされながら、

十メートル以内で体勢を立て直し構える。


「ばかな!この私が攻撃を喰らうまで気付かないとは!!!

……ん?この気配は……?」


「ヴェルテル。強くなったな。

キャラテの戯れ程度の攻撃だが受けて無事とか。」


「魔王様!!!」


跳び付く様な勢いで俺の前に跪いて諾々と涙を流す現魔王…

俺は少し引いたが態度には出さず問いかけた。


「ヴェルテル。現魔王はお前だ。俺の事はシンヤと呼べ。

で、この書状だ。お前達には特例で許す。」


「…は?…し、しかし無罪と云う訳には…」


「今お前が喰らった一撃、唯の上級魔族ならあっさり消し飛ぶ威力だ。

それでも罰を受けてないと言うならあれに入るか?」


俺は魔力球を指さす。

ヴェルテルは魔力球を見て一瞬で顔色を変え、

悟ったのか言った。


「ま…、いえ、シンヤ様のお言葉に従います。」


「そっちのレガとか言ったか?お前もキャラテに一度潰されたから罰は受けた。

これからもヴェルテルに付き従え。裏でな。」


「はっ!我が命尽きるまでお言葉に従います。」


「キャラテ。睡眠快癒(キュアスリープ)


「えっ?パパ何?」


「今からディーブレイカーに行き、

ヴェルテルと一緒にキルケとか云う一味をこいつに掘り込んで来い。

で、ヴェルテルは街の中心部にこいつを設置して見世物にしろ。

俺の定めを破りし者の末路とな。」


「シンヤ様は来て頂けないので?」


「今回は人の勇者として召喚されているのであの大陸には入れん。

入るなら浄化する事になるが良いか?」


「わ、判りました。あの、もう一度お会い出来ますでしょうか?」


捨てられる子犬みたいな目で俺を見る魔王…

…仕方ないか。魔王としての重責を押し付けた負い目もあるし。


「ああ、こっちの件が片づいた後に召喚()んでやる。

勝手に来るなよ?来たらあれに掘り込む。」


「もも、勿論です。」


「じゃあ送り返す。送還ヴェルテル。

じゃあキャラテ。あの球持ってディーブレイカーで掃除して来てくれ。」


「ん。じゃあちょっと行ってくる。」


キャラテは魔力球と共に転移した。


「さて、レガ。」


「はっ!」


「お前が知りえる限りの情報を言え。」


俺はテーブルを出し茶を淹れ、寛ぎ体勢を整えて大臣達数人を呼び、

レガから話を聞くことにした。



@@@@@@@



「やはり召喚場所は知らんか…」


「はっ!我等がこちらに合流した時には完全に切り離された状態でして、

上級魔族の三名しか連絡や情報が流れない様に管理されていました。」


「ちっ…処分したのは早計だったか。

最後の一体もキャラテがあっさり潰したし、魔王召喚が事実なら召喚されるまで待つか。

リーメイルとリーガントレットの近くならすぐ始末出来るし、

それ以外の場所なら、二つか三つの国が壊滅している間に討伐すれば良いか。」


俺はさっき、森で魔族を蹴散らした時に思い付いたセリフを口にしていた。

なんだかんだで邪魔くさくなってきたからな。

俺のセリフの意味が段々と理解しだしたのか人間側は段々と顔色を悪くしていく。

魔族側のレガもドン引きしている。

と、大人しく聞いていたコンホルムがギアドに食って掛かった。


「だ、大臣!この小僧は一体何者なんだ!?」


「黙れコンホルム!キュオー様がいたら今の言葉で死んでいるぞ!」


「き、キュオー様!?まさかいきなり居なくなった我が国の守護龍か!?」


「そうだ。先程いた銀髪の少女がキュオー様だ。

そしてこのお方が勇者王のシンヤ様だ。

証明もされている。護国宝剣の月光剣をエルリッヒ王に返還なされた。」


「な、なんと…」


コンホルムは絶句して硬直した。


さっきの俺と魔族の話を聞いてなかったのかよ…

まぁ少し離れてたし痛みでそれどころじゃなかっただろうし。

だがこいつは王都に帰ったら一兵卒からやり直しさせるか。


「あ~…、一つ勘違いしているのを訂正しとく。

キャラテはリーガントレットの守護龍なんかじゃないぞ。

偶々、国を守った行動をしたかも知れんが、

実際は俺とメディアの墓を守っただけだな。

聖銀龍は世界の守護をしているが、人族の一国家を守ったりしない。

レガ。この百年でディーブレイカーを攻めて来た人族はいたか?」


「はっ!六十年前にこの大陸西方六ヶ国が連合して三百隻の艦隊が攻めてきましたが、

キュオー様のブレスで全て海の藻屑になりました。

その後ディーブレイカーに一番近い国の国土の半分をブレスで焼き払ったと聞きました。」


「だ、そうだ。

そもそもギアド大臣、城でキャラテに殺されかけたのを忘れたのか?

そして壊滅した艦隊や焼き払われた国の情報とかは?」


ギアドは…いや、テーブルに座っていた人達と会話が聞こえる範囲に居た護衛騎士数人は顔面蒼白になり身体を震わせている。


「あの魔族討伐大艦隊の原因不明事故はキュオー様のブレスか…」

「リーバックラー連合王国壊滅の原因がキュオー様だったなんて…」


「そのリーバックラーの被害はどんなものだったんだ?」


「はい。リーバックラーは海洋国家でして西方諸島群との貿易で栄えてましたが、

海軍船、貿易商船が主港や他多数の港と共に壊滅。

港の倉庫も一緒に焼き払われたので一気に落ち目になり、

今では名前が一地方都市に残っているだけです。

他の五国も船団壊滅での影響で西方の一帯は紛争地域になってます。」


………思ったより大事になってるな。

まぁ自業自得だが。


「エルリッヒ王にも言ったのだがな…

俺はこの戦争、もしリーガントレットに非があれば国を亡ぼすつもりでいた。

俺が兵ごと魔族を排除しようとしていたのはそれが理由でもある。

参加している兵には関係ない。その兵士達の家族も関係ない。

だがな…戦争を決め戦いに送り出した者は、その参加した者並び関係者の命全てに責任を持ち責任を取らないといけない。

この言葉は俺が王家に代々忘れる事なかれと伝えていた。

特に人同士の戦いではな。

ギアド大臣以下この戦争に乗り気だった者達はエルリッヒ王を弱腰とか批判したのだろう?

お前達にその覚悟があったのか?魔族に唆されたといえ兵を駒扱いしていなかったか?

大臣。俺が城で断罪したとき一族全ての血を以て償えと言ったな?

大げさな事だと思うか?」


ギアドは俯き絞り出す様に声を出す。


「いえ…正当な判断だと思います。」


「コンホルム、今の話はお前にも関係しているぞ。

お前はギアド大臣と違って魔族共に操られてなかったからな。

リーメイルの王位でも提示されたか?」


コンホルムは俺の言葉を聞いてる内に段々顔色を青くしていたが、

最後の方は白くなっていた。


「さて大臣。城に戻るか。…ん?」


おいおい…キャラテがブレス吐いたな…

まぁ向こうの事はヴェルテルに任そう。


「シンヤ様、どうかなさいましたか?」


「いや、たいした事じゃない。

部隊長、遠征軍の総指揮を任す。

速やかに王都に撤退して通常状態に戻せ。

大臣、コンホルムも連れて帰る。異存はないな?」


「はい。シンヤ様にお任せします。」


「よし。レガはもう少しここに居てくれ。」


「はっ。いつまでもお待ちしています。」


「では城に戻る。」


来る時は六名と一匹だった。

帰るのは七名だけになった。

内一人は項垂れて顔色がかなり悪いが。

俺は七名でリーガントレットの城に転移した。












予定より遅れました。

水中花は明日の昼頃です。

次の予定は月末までに(>_<)

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