第十三話
俺は近くの森に転移してきた。
近くと云っても砦から直線距離で二キロは離れている。
砦の北に位置する国境沿いの森で色々な魔獣やモンスター達が生息する大森林だ。
その森の一般人は疎か冒険者達でも滅多に入り込まない奥地にそいつ等はいた。
下級魔族 十五
中級魔族 四
上級魔族 二
一瞬で鑑定をし、一番密集している場所に単体攻撃火球を十発放ち、
一番外側に居た上級魔族の後ろに転移、手刀で十字に切り浄化火球で焼き尽くす。
十発の火球の内七発は下級魔族をあっさり消去、
二発は中級魔族に向かい侮った一匹を消去、もう一匹は一本腕を犠牲にして耐えた。
ラストは上級魔族だがこれは防がれた。
残り十二
また十発火球を出し下級魔族と中級魔族に放ち、
上級魔族に正面から接近して貫手で胸を貫き、そこに浄化火球を置く。
上級魔族は信じられないと云った顔を見せて消滅、
その瞬間に範囲浄化拘束魔術を発動。
火球に対応しようとしていた魔族は動きを止められ、
なすすべなく火球の餌食になって焼き消える。
ここまでで約七秒。
残り一
動きを封じられた片腕の中級魔族に近付くと聞いた。
「どこで儀式召喚をやっている?」
「ば、馬鹿な!?なぜそのことが!?」
「お前達は俺の目を逸らせる為の使い捨てなんだと自覚しろ。
すでにリーメイルの方は一掃した。あとの残りはこっちの砦にいる奴等だけだ。」
「俺達が使い捨てだと!ふざけるな!我等は一丸となって魔王様の復活の為に…」
ふっ…復活などする訳ないだろ。確実に滅ぼしたものが。
だが俺は何も言わずまだ続きを喋ろうとしてた魔族を真っ二つに切り裂いた。
「ふん…魔王復活か…別物を呼び寄せるだけなのにな…」
まぁ目的が判った。
本当かどうかは見つけてから判断すれば良いし、
魔王が召喚されたなら探す手間が省ける。
が、場所によっては被害の規模が読めん。
やはり地道に探すしかないか…
転移してキャラテの横に出る。
「パパ早かったね♪上級魔族もいたでしょ?」
「ああ。だが上級魔族といっても成り立てで中級とあまり変わりはなかったな。
あの程度なら強襲して蹴散らした方が犠牲は少なく済ませられる。」
俺とキャラテの会話に周りの連中は絶句して、
得体の知れない物を見る目付きでこっちを見てる。
失敬な!キャラテと一緒にするな!
俺がそんな事を思い浮かべているとキャラテが頬を膨らませて俺を見た。
「…パパ。今、僕に失礼な事考えたでしょ?」
「…いや。そんな事ないお?」
小首を傾げて俺はとぼけた。だが、
「その反応が答えでしょ!!!」
キャラテが叫ぶと同時に俺の頭上に大質量の何かが降って来た。
ドガッ!!!!!
何とか腕でガードしたが足元の強化が間に合わず地中に埋まる。
俺の周囲五メートル程、深さ三メートルのクレーターが出来ていた。
今のはキャラテの尻尾攻撃か!
服を破らず尻尾だけを元の大きさに戻し、
俺の反応を凌ぐ攻撃をしてまた今の状態にする。
へ~本当にかなり成長してるな。
今も怒っている振りをして腰に手を当て俺を見下ろしているが、
眼に楽しそうな光が見える。
ふっ。そこがまだ経験不足だな。
いきなり攻撃したキャラテの行動とその威力に大臣以下の連中はあっけにとられこっちを見ている。
俺は無論無傷で、服装にも乱れが無く、クレーターの底からキャラテの横に飛び出す。
キャラテの頭にポンと手を置き撫でて聞く。
「お前飽きてきたんだろ?」
「うん。眠くなってきた。」
「もう少し我慢しろ。今の攻撃で奴等に気付かれただろうから向こうから来るだろうし。」
俺がキャラテに言うと同時ぐらいに砦の大扉が開き、
騎馬二十数騎ほどが駆け寄って来た。
俺とキャラテはさりげなく大臣達を守れる位置に移動して待つ。
先頭の騎士が怒鳴って問うてきた。
「何事だ!?敵襲か!?」
俺はその言葉を聞くなり大声を出す。
「部隊長!撤収を開始しろ!」
「貴様!?何を言っている!?」
「黙れ!おい大臣。あれがお前がねじ込んだ奴か?」
俺に怒鳴られて口をパクパク開け、
周りの撤収作業を見て狼狽えている騎士に指を指す。
鑑定で人間と判ってるがな。
「いいえ。彼は遠征軍司令官です。
コンホルム卿、陛下からの命令だ。遠征は取り止める。」
「馬鹿な!?理由は何です、ギアド大臣!?
そもそもこの遠征はあなたの主導でしょうが!」
「五月蠅い黙れ。」
俺はコンホルムとか云う奴の顔面に風の玉を叩き付ける。
「ぎゃ!!!」
コンホルムが落馬して顔を抑えて転げまわる。
騎馬から五人が慌てて飛び降りポーションを飲まして介抱している。
「キャラテ。ここに来ているので全てか?
砦に残っていないか?」
「うん。後ろの方にいる八人だけだよ。」
「で、ギアド大臣。あいつ等がそうか?」
俺はキャラテが言った奴等を指さし聞く。
「はい。あの者達です。」
俺が指さし確認をした、
奴等の先頭に居た奴が馬から降りるとゆっくり近付いて来た。
大臣の護衛騎士が前に出ようとしたが、俺は手の動きで下がれと命じる。
「大臣閣下。王の命令とは…」
「うるさい…」
べチっ!!!
キャラテが最後まで言わせず不可視の尻尾攻撃で潰した。
聖銀龍の気配も隠すのを止めている。
俺はため息を吐き、潰した魔族に浄化火炎を放ち焼き尽くす。
辺り一面が静寂に包まれる。
と、魔族の一番後ろに居た三人が馬から飛び降り走り寄って来た。
そのままキャラテの前に行き跪いて言った。
「キュオー様!まさかこちらにいらっしゃるとは。」
どうやらキャラテの知り合いらしい。
そんな事ないお?
誤字ではありません|д゜)
次の予定は二十日前後です。
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