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第九話


城のユーイング老との待ち合わせ部屋(勝手に決めた)に転移して茶を貰う。

昨夜の宿の軽食を食べながら会議の時間を待ちつつ、

ユーイング老と今日の行動について色々意見を出し合う。


「西の国境沿いは騎士団に任し、

俺は東を探索して行くつもりだがユーイング老はどう思う?」


「おんしにはあまり動いて欲しくないんじゃが…」


「相手が強かった場合の援軍で、か?」


「そうじゃ。気付いておろう?この国の魔術師の質も数も少ない事に。」


「理由を聞いても?確かに戦士系に比べると明らかに少ないな。」


「おんしを呼び出すのに魔力を集めるじゃろ?

魔力を使い切って寝込んだ魔術師を、

一か所の仮設宿泊施設に泊まらせていたんじゃが、襲われて皆やられてしもうた…」


「…おいおい…老人がいて何でそんな事になるんだ?」


「わしと姫様は召喚の間でおんしの呼び出しで動けなかった。

まぁわしが知ったのは、おんしを呼び出した後じゃがの。

姫様は知らんので内緒に頼むの。」


「あ~…あいつなら責任感じるだろうな…」



話が一段落ついた時、ノックの音が響いた。


「誰じゃの?入って良いぞ。」


「ロセッティです。失礼します。」


ロセッティがおずおずと入って来た。

俺を見てほっとした顔を見せた後、顔を赤く染め顔を背けた。

くくくっ…昨日の別れ際のセリフでも思い出したか。


「おおっ姫様でしたか。なんぞありましたかの?」


「いえ…今日私がする事があるのかお聞きしたいと思いまして。」


「姫様には城でゆっくりしていて欲しいんじゃがの。」


ユーイング老は渋い顔をしてロセッティに諭す様に言う。


「しかし私だけが城で何もしないなんて。

魔術師の数が足りないみたいなので手伝います。」


「おんしからも言ってくれんかの…」


「俺に振るなよ老人。

さっきの話に戻るが俺は街中で召喚術師の痕跡を追うことにする。

それに付き合わせ監視しとく。これで良いか?」


「はい!」


ユーイング老に聞いたのにロセッティが元気よく返事した。


「おんしの側なら安全じゃの…」


ユーイング老は頭を振り仕方なしに呟いた。


そういったやり取りをしているとガシャガシャと鎧の音がこの部屋に近づいて来た。

ドンドンドンと扉を破壊するようなノックの後、


「ユーイング殿失礼する!」


と言って入ってきたのはザトペックだ。

部屋を見渡しロセッティがいるのを見つけて息を吐き出し、


「失礼した。」


と、脱力して言った。


「姫様。城の中でも余所者がいるときには、一人で出歩かないで下さい。」


俺を睨みながらロセッティに苦情を言う。

ロセッティが話すより先に俺が割込み言った。


「ザトペック殿。今日もロセッティは俺と一緒に行動する。

お前も着いてくる気なら鎧は脱いで動きやすい服装をしろ。

金属鎧は胸当てぐらいなら良い。無論、剣は佩いていてもいい。」


「貴様なんぞに指図を受ける謂れはないわ!!!」


「そうか。ならまた転移でお前を置いていくだけだ。」


俺はシレっと言い捨てた。

ザトペックは真っ赤になり「ぐぬぅ…」と呻いたきり俺を睨み付けている。


「さて、ロセッティ、今日は街中の探索だ。

最初に会った時着てた、猫耳フードの白ローブの服装でな。

あのローブ、そこそこの防御と対魔耐性があるだろ?」


「はい。あのローブは動き易さと防御に優れています。」


「ザトペック殿。俺は二度同じ事は言わん。付いてくる気なら着替えろ。

ロセッティも着替えて来い。今日は会議所には顔を出さないからな。

俺は何時までも待つ事はしない。時間が来たら一人でも行動する。」


「すぐ着替えてきます。」


「ああ、武器も忘れるなよ。長杖でも良いぞ。」


「はい!」


勢いのある返事と同時に部屋から飛び出した。

ザトペックはユーイング老に情けない顔を向けていた。

仕方ないので俺が声を掛ける。


「ザトペック殿、ロセッティにはああ言ったが、

ザトペック殿が着替えてここに来るまでは動かないで置く。

だから慌てずに着替えて着て良いぞ。」


「うむ…すぐ着替えてくる。ユーイング殿、失礼する。」


ガシャガシャと慌しく出て行った。


「苦労を掛けるの。」


「他人事みたいに言うな…それとこれを渡しておく。」


俺は無限収納からピンポン玉ぐらいの石を十数個取り出しユーイング老に差し出した。


「魔力石から作った念話石だ。用があればすぐに声を掛けてくれ。

回数は距離で変わるがこの国内なら十回前後は使えると思う。」


「おんし、色々と出来るんじゃのう。」


「長年の経験故にな。」



@@@@@@@



ロセッティがパタパタと走って戻って来た。


「用意できました。」


「まぁ、座って茶でも飲め。」


ロセッティに椅子に座るように言うと俺自ら茶を淹れてやった。


「…!?何ですかこれは?美味しい…」


ユーイング老と自分の分を入れながら答えた。


「俺の世界でも高級茶葉の一種だ。特別だぞ。」


「ほう…これは美味いのぅ。」


ユーイング老にも満足してもらえたようだ。


「数が無いので何度も飲めると思うなよ?」


そう言いながらクッキーを茶請けに出した。


まったりしているとザトペックも戻って来た。


「お前も飲め。」


ザトペックにも茶を振舞う。

渋い顔をして茶を受け取ったが、一口飲むと感心したのか、


「美味い!」


と、味わって大人しく堪能している。



@@@@@@@



ゆっくり茶を堪能していると兵士がユーイング老を呼びに来た。


「さて、俺達も出かけるか。ユーイング老、城の方は任せたぞ。」


「うむ。そちらも気を付けてな。」


俺達は一斉に立ち上がり部屋から出る。

ロセッティがおずおずと声を掛けてきた。


「今日は街中の探索と言ってましたが、何処に行くのでしょうか?」


「先ず召喚術師が泊まってた宿に行く。

そこで魔力や瘴気の質や残留濃度を調べて追跡する。」


歩きながら答えて城の正面の門から出て大通りの手前まで来た。

何かが来る?マップに映っていない?転移か!


「二人とも俺の背後に…」


言い終わらぬ内に、周辺に強い旋風が巻き起こり、

俺達の前に大型ダンプぐらいの物体が転移して現れた。



{きゅおおおぉ~~~~!!!}



辺りに可愛らしい咆哮が早朝の城下町に響き渡った。


「なななな…」「姫様、私の背後に!」


俺の後ろでロセッティが狼狽え、

ザトペックがロセッティを庇い前にでる。



{きゅお!きゅぐるあ!ぎゅるるぐお!きゅおお~ん}



俺に向かって威嚇する物体。あれこれって…?


「せ、聖銀龍…」


やっぱりか…俺の知ってる聖銀龍は幼龍だし、

この龍は子龍ぐらいの大きさはある。

俺に向かっていつまでも威嚇して唸ってる龍に言った。


「龍語で喚かれても判らん。この大陸の人間語で話せ。」


龍が嗤った気配がした。何か嫌な感じがするが間に合わなかった。

ポンっと軽い音がするとその場に美少女が一人立っていた。

足を肩幅に広げ両手を腰に当て顎をつんと上げ、

腰まである長い銀の髪を靡かせている十五歳ぐらいに見える美少女。

その誰でも目を引く美少女が全裸で俺の前に立っていた。





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