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第4章 泣き虫の少年(2026年11月23日)

2026年11月23日(未来)






タイムマシンのゲートをくぐったツクルは、白い光が

流星のように吹き荒れる広い空間にいた。


「・・あ!・・・あ!」


声を出して見るが、音が空間に飲み込まれ、少し遅れて聞こえてくる。

自分の体が、かすかに淡い光を帯びている。


(時空の狭間・・・か)

(どこかに出口があるはずだ)





ひたすら、何もない空間を歩く。

方角はもちろん、分からない。

全方向から光が流れている為、もしかしたら天地も逆なのかもしれない。


失敗したのか?

そんな思いが、頭の中によぎる。





そんな時だ。私の着けているゴーグルが物体の反応をとらえた。

温度も持っているようだ。ツクルはそれが生物であることに気付いた。

距離は約60メートル先だった。


(一体・・どういうことだ?)

(時空間に・・・”生物”だと?)



考えても、答えは出なかった。


そんな事が、あり得るはずはないからだ。



ツクルは、小走りでそこへ向かった。

科学者の好奇心もあったが、何よりツクルにとって、それが”救い”のように思えた。





「まさか・・・・」



そこには、あり得るはずのない光景が広がっていた。

薄く淡い、ランプのような優しい光の中で

小さな少年が、うずくまって泣いていたのだ。


「嘘だろ・・・なんで、こんなところに」


少年は、私に気付き駆け寄って来た。


挿絵(By みてみん)


「・・・!!・・・・!!」


何かを必死で、私に伝えようとしている。

しかし、その声は届かなかった。


「どうして、君はこんなところにいるんだい?」


少年がぴくっと反応する。

こちらの声は聞こえているのだろうか?


「・・・・!!・・・・!!!」


少年は、身振り手振りを交えて必死に会話しようとしていた。

しかし、その努力は私に届くことはなかった。


「ごめんね、君の力にはなれないよ・・・」






「・・・・・?」



その時、不思議な感覚にとらわれる。

この子を、どこかで見たことがある気がしたのだ。



どこだ?・・・思い出すんだ・・・・





私は、目を閉じて、記憶の扉を一つずつ開けていった。

アオイが亡くなってから、ほとんど他人とは接触していない。

つまり、アオイが生きている時に、この子を見ているのだ。




・・・・!!!




「思い出した!」

「10年前の、あの雪の日、私は君を見たんだ!!」


少年が、飛び跳ねて、うれしそうに笑顔を見せる。

あれは、やはり幻ではなかったのだ。



しかし、不可解な事がある。


この少年は、あれから10年経っているというのに

なぜ、全く見た目が変わっていないのだろう?





その時、ある仮説が頭の中に浮かんだ。

それは、にわかには信じがたいモノだった。



しかし、それならば10年前の不思議な出来事にも説明がつく。




私は、恐る恐る、少年に尋ねた。


「君は・・・・・・」








「君も、タイムマシンを使ったんだね?」







少年が、びっくりしたような表情を見せる。

信じがたいが、それが真実である事を物語っていた。


「君は、未来から私に何かを伝えるために来たんだね?」

「存在する時間軸が異なるから、声が届かないんだね?」


少年は、力いっぱいにうなずき、一生懸命に言葉を伝えようとする。


「・・・!!!・・・・・!!!!」


「ごめんね、わからないよ・・」


私は、そう少年に伝えると、彼の頭を優しくなでた。

すると少年の体が光を放ち、どんどん姿が透明になっていく。


「タイムマシンが、君の形を形成できなくなっている・・」


少年の目から、涙が溢れる。



「・・・・・・・・・パ・・・・・!!!」


「え・・?」


ほんの一瞬だが、少年の声が聞こえた気がした。

少年は噴水のように光を放ち、



そして、消えた。





目の前に、光の道が出来ていることに気付く。その先に光の扉。


出口だ。


私はゴーグルについている数値計をみて、驚く。


タイムマシンのエネルギーが、回復している。

あの少年が、何かをしたのか?




常に、論理的でなくてはいけない科学者の言葉としては陳腐だが


それは「奇跡」


としか、言い様がなかった。










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