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第3章 裏切り(2026年11月23日)

2026年11月23日(未来)



朝日と別れた後、ツクルは研究所の「ある一室」に来ていた。

研究所の地下にあるその部屋は、薄暗く、中央に大きな装置が置いてある。

「物質時空間転送機」・・・タイムマシンだ。



それは、乗り物ではなかった。

高さ3メートルほどの大きなゲート。


その先には20メートル四方の空間がある。

ツクルはゲートにふれてみた。



半導体の無機質なざらっとした手触りが手に残った。




10年をかけてツクルはタイムマシンを創り上げた。



神に祈り、もう一度、アオイにあえるなら何千回でも

何万回でも祈ろう。


だが、そんなことをしても無駄だと悟っていた。

ツクルは神に祈るというくだらない行為に時間を使うより

自分の力で、もう一度アオイに会おうとしたのだ。



ここまで、10年かかった。

そういえば、アオイが亡くなって気付いたことがあった。


神様なんて存在しない、という事だ。



存在したら、私からアオイを奪うはずがない。

あんなに一生懸命に生きていた彼女が、無慈悲に殺されるはずがない。



机に腰かけ、ポケットに入っている時計を取り出す。

アオイの誕生日に私が送った時計だ。


彼女はいつも、それを大事に身に着けていた。


時計の盤面は割れて、彼女の血がついていた。

時間は22時18分で止まっている。


この時間に・・・・・


この時間に彼女は・・・!!


どうして、あの日、もっと早く帰ってこなかったのだ。

私が、帰っていれば・・・!!




机の上に、朝日に用意してもらった拳銃を置き

シリンダーに弾を込めていく。

銃はリボルバータイプで、ずっしりとした重さがある。

この目では照星は役には立たないだろう。

相当近寄らないといけないな・・・



そんな事を考えていた、その時だ・・・。




目の前に恐ろしい怪物が現れた。




充血した真っ赤な目


鋭い牙


長い爪


醜い肌・・・ぐしゃぐしゃの髪・・・


しかし、その怪物はとても、とても悲しそうだった。



ハッとして、ツクルは、我に返った。


それは鏡に写った、自分自身だったからだ。




PCの電源を入れて、タイムマシンを起動していく。

画面はほぼ見えないというのに驚くほど、スムーズだ。

キーボードのブラインドタッチのように指が自然に動いていく。


いや、違う。

不思議な力に、導かれているのだ。



アオイが私を、待っている。



そういう事なのだろうか?


エンターキーを押すと、ゴウゴウという大きな音とともに

タイムマシンが振動し、部屋に明かりが灯る。

ツクルは転送先の時間と位置情報を入力していく。


「2014年、11月24日・・・」


忘れもしない悪夢の日・・・


「よし、次に時間だ・・・」



ガチャ!!



「誰だ!?」


ふいに物音がして、音の方に振り返る。

部屋の鍵は閉めたはずなのだが・・。


「誰だ?は、こっちのセリフだよ」

「そんなところで、何をしているんだい?」


「天童博士・・」


「・・・・!!」

「装置を起動させて、何をするつもりだね」


天童博士の言葉には、明確に疑念と敵意が感じられた。

私は、抑えていた気持ちを彼に話した。


「天童博士・・・お願いです」

「私にタイムマシンを使わせてください」

「アオイを・・助けに行かせてください!!」


天童は眉間にしわをよせ、ふう、とため息をはいた。


「ばかもんが・・・!」

「自分が何を言っているかわかっているのかね?」

「ここまで来るのに何年かかったと思っている?」

「世界初の時間転移だぞ?」

「これが、どれだけの金を生むか!!」

「それを、すべて無駄にする気かね?」

「そんな、くだらない事の為に、使えるわけがないだろう!!」



「くだらない・・・だと?」


天童の言葉はツクルの10年間を否定するものだった。


「今日付けで、君はクビだ。さっさとここから出ていきたまえ」


天童の言葉にツクルの目から、涙がこぼれた。

驚いた。


アオイがいなくなって・・・泣いて。



泣いて。



泣いて。



泣いて。



もう涙なんて、枯れたとばかり思っていたから。


私は天童に向かって銃を構えた。





「先生・・・お世話になりました」


「・・・なっ!!」


そして、迷いなく引き金を引いた。


挿絵(By みてみん)


パァン!!


天童はその場に崩れ落ちた。

乾いた音が、部屋中に響いた。

音を聞いて、すぐに警備員が駆け付けて来るだろう。


「・・・馬鹿が・・・」

「エネルギーが足りないぞ・・・」

「片道分あるかないかだ・・!!」


苦しそうに、天童が言葉を絞り出す。


ツクルは、それに見向きもせずに

タイムマシンに残りの情報を入力していく。


「時間は、22時18分・・・」

「誤差も加味するとこれくらいか・・・」


最後のボタンを押すと、転送ゲートが青く光を放つ。


ここを通れば、ツクルの体は原子レベルで分解され

過去の時間で再構築される。

過去に留まれる時間は少ないだろう・・・。





やるうべきことを、やるだけだ。





私は、あの日に戻って君を守る。

















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