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追憶 その3

????年??月??日






時空転移学総合研究所、その地下で2人は話していた。


「以上が、あいつの見ている”悪夢”だ」

「お前には、過去に行って、あいつを止めてほしい」


無精ひげを、なでながら、その男性は淡々と話した。



「大丈夫、僕が必ず何とかするから」

「僕が、守るんだ」


もう一人は、小さな子供だった。

まだ10歳くらいだろうか?

しかし、その目には確かな決意が感じられた。


「これは、お前にしか出来ないことだ」

「準備はいいか?」


「うん!!」


少年は、ゲートの前に立った。男性は、タイムマシンに数値を入力していく。

大きな揺れと共に、転送ゲートが光を放つ。


少年は、迷いなく光の中へ飛び込んだ。







2014年11月24日(過去)





少年が、降り立ったのは大雪の降る道路だった。

5メートル先が見えない、よこなぐりの風。


あまりの寒さに、少年はその場に座り込んだ。

その場にはあまりにも無謀な、薄着で来てしまった事を少年は後悔した。



「どうやって、こんな中で探せばいいのさ!!」


少年は、不満を吐き散らした。

それも仕方のない事だった。


この世界で、少年は頼れる人が一人もいないのだ。

しかし、諦めるわけにはいかない。


少年は、少しずつ前に歩き出した。

雪の積もっている住宅街は、少年にとって迷路と同じだった。


あてもなく、道を進んで行く。



”ズボッ”


踏みしめた右足が、急に地面を失い、少年は腰まで雪に沈んだ。

用水路に片足がはまってしまい、少年は足を強くひねった。


「いたっ!!」

「うぇええぇええええええん!!」



そのあまりの痛みに、少年はその場で泣き出した。


雪の冷たさが、痛みに拍車をかける。


やっとの思いで、雪から抜け出し、泣きながら探索を再開した。


少年は、泣き虫だった。

しかし、強い心を持っていた。

やらなければならない使命が、少年を突き動かした。




その時、少年は自分の体から淡く光が出ていることに気付いた。

光は雪に反射して、七色のプリズムに輝き

幻想的な光を放っていた。


「そんな、もう時間切れ?」



少年は、アタフタして体を触ってみたが、その姿はどんどん透明になっていく。

少年は気付いていなかった。


その30メートル先に、未来ツクルと未来アオイが立っていたことに。


そして、未来ツクルだけが、少年の存在に気付いたことに。





伝えたい想いを伝えられないまま、少年の初めてのタイムトラベルは終了した。





数分後、少年は研究室に戻ってきていた。


男が、少年に声をかける。


「大丈夫か?」

「雪が・・・・そうか、あの日は雪が降っていたんだったな」

「ツクルとは会えたのか?」


少年は、首を横に振る。


「そうか・・・・」


「僕は、諦めないよ!!」

「もう一度、過去に行かせて!!」


少年の勢いに、男は圧倒されてた。

この少年には、未来ツクルと同じく、断固たる決意があったのだ。



「エネルギーが、充電でき次第、再チャレンジしよう」



男の提案に、少年は、元気よく答えた。






「ありがとう、朝日おじさん!!!」







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