第七話「両足粉砕骨折」
「なあイブ」
「はい? アダム」
「俺のこの両足粉砕骨折の内容は向こうの俺達(けんたともう一人のイブ)が書いた内容なのか?」
「はい、そうですよ」「まじかよ」
向こうの俺達もやりやがるなあ。今度はお前の番だぞ健太。覚悟しろよ(笑)。
「まさかバッドエンドを書くつもりなのですか?」
「いあ、バッドエンドを書くつもりはない。けど」
「けど?」「きつい内容は書くつもりではいるよ」
とりあえず、俺も経験しているこの内容を書いてみる。健太。お前も俺だ。なら、これくらい耐えて見せろよ。
――――。
「な、なんだ!?」
「どうしたのですか!? アダム(けんた)!?」
俺の脳内で映像が流れた。何だろう。俺が何か悪事を働いているかのような。俺が誰かをレイプしている映像。俺が守るべき姫を殺している映像。どれも見たくないものばかりだ。
「やめろ! こんな映像……俺に、俺に見せるんじゃねえええ!!」
数時間経った頃。
「ハア、ハア、ハア」
「落ち着きましたか?」
俺は目を覚ましていた。あの映像を見せられた後、気を失っていたようだ。目の前にはイブの顔がある。心配している様子だ。イブは俺が気絶している間、ずっと俺に膝枕をしてくれていたみたいだ。
「何かあったのですか?」
「ああ」
俺はイブに数時間前に見たものを告げた。
「それは辛かったですね」「ああ」「それでですね」「ん?」
イブが説明してくれた。あの破滅的な映像は俺達が向こうの俺に両足粉砕骨折の内容を書いた俺に対しての仕返しで書いた内容とのこと。
「クソッ、ようこうめ」
「アダム、別に彼らは悪気があってこの内容を書いたのではないのですよ」
「だがなあ」
「それにあの破滅的な映像は向こうのアダムも既に経験している内容みたいですよ」
なるほど。つまりは、俺に一方的にあの映像(これからはこれを破滅思考と呼ぶ)を見せただけではなくて、その破滅思考は向こうの俺も経験済み。そこに向こうの俺の愛を感じた。そもそもの話、こちらが向こうの俺の両足粉砕骨折の内容を書いたのが先だ。そういう意味では俺も悪いと言える。
「とりあえずアダム」
「ん?」
「調子が戻り次第、動きましょう。私達のやるべきことは向こうの話を書くだけではなく、この世界で戦うことでもありますから」
そうだな。とりあえず、破滅思考が治まっている今のうちに活動したほうがいいだろう。とりあえず、もう一人の俺。今回の破滅思考のお返しに、両足粉砕骨折よりもっときつい内容も書くからな!
覚悟しろよ(笑)