第六話「ようこうとけんた」
「けんた」
「貴方は?」
「ようこうだ」
ようこう? 誰だ?
「もう一人のお前と言ったら分かるか?」
ああ!
「ってことは貴方もアダムですか?」
「そうなる。で、お前に話しておきたいことがある」
「何でしょう?」
「まずこれだけは絶対に守れ」
「はい、何でしょう?」
「イブ姫だけは絶対に守り切れ」
「言われなくてもそのつもりですよ」
「予想通りいい返事だ」
ようこうと呼ばれるアダムは続けて。
「これから先、必要なら俺はお前の夢に現れる形でお前に必要なことを話そう」
「それは分かりました。それで、あの」
「何か聞きたそうだな。何だ?」
「私と一緒にいるイブ姫が言ってたんですけど、貴方にもイブ姫がいるのですよね?」
「ああ、そうだが?」
「貴方もそのイブ姫と一緒に戦ってるのですか?」
「それはそうだが、お前たちとは事情が違う」
「といいますと?」
「例えばお前はイブ姫が見えるんだよな?」
「はい」
「俺にはイブ姫は見えていない」
「そうなんですね」
「ただ一緒に戦っていると言う点ではお前たちと一緒だ」
「なるほど」
「まあそれはそうとして、これもお前に話しておきたい」
「何でしょう?」
「俺はお前のバッドエンドは書かんが、きつい内容は書くと思う」
「それはつまり……」
「お前のこれからの戦いは苦しいものとなる」
「そんな……」
「安心しろ、俺もお前が書く苦しい展開を受け入れるつもりだ」
しばらく沈黙の後、ようこうと呼ばれるアダムはこう言った。
「俺達の戦いはとても苦しい。だが、最後にはちゃんとハッピーエンドになることになっている。だからそこら辺は安心して欲しい」
「……分かりました!」
「言いたいことはここまでだ。じゃあ、頑張れよ!」
そういうと声の主は消えた。
――――。
「アダム、起きてくださいアダム!」
「あっ」
「もう寝坊助さんですね」
「おはようイブ」
「おはようございます」
あれは夢……なんだよな?
「何か考え事ですか?」
イブが俺の表情を見て、察したのかそう尋ねる。
「いあ、夢を見たんだが」
「夢?」
「ああ、ただ覚えてない」
「何じゃそりゃ」
とりあえず、これからの事を考えないとな。