第五話「聖書」
「アダム」
「はい? 姫様」
「その本」
イブが僕の右手を指指す。
「そのアダムとイブというタイトルが付いてる本」
「ああ、これですか?」
僕は右手で持っている本を見る。ってか、手ぶらで出かけたつもりが、いつの間にかこの本を握っていて出たんだな。気づかなかった。
「まず、この本を開いてみてください」
僕は、”アダムとイブ”というタイトルの本を開いてみた。
「何も書かれてないですが……?」
「これからアダムにはこの本にもう一人のアダムの話を書いてもらいます」
「もう一人の俺の話?」
「そうです」
ちょっと今一理解出来ないので、俺は自分が思う疑問をイブにぶつける。
「イブは前に、俺達の話はもう一人の俺達が書いてくれるって言ったよな?」
「はい、そうです」
「それと逆のことを俺達もやるのか?」
「そうなりますね」
なるほど、だいたい意味は分かった。
「オーケー分かった」
「ただ、アダム」
「はい?」
「この本には基本的にどんな内容でも書いていいですが、バッドエンドにだけはしないで下さいね!」
そうだな。もし、俺が向こうの俺のバッドエンドでも書こうものなら、向こうの俺も同じように書くかもしれないからな。気を付けたほうがいいだろう。
とりあえず、要領は分かってきたので俺は本を閉じ、イブとの雑談に華を咲かせるのだった。