第四話「性の悪魔」
「アダム、気を付けてください! あの男性は性の悪魔に操られています」
「姫、どうしましょうか?」
「とりあえず無事に通り過ぎることを祈りましょう」
僕はハッキリと目の前の男性を見る。男性の視線はイブに釘付けだ。表情を見るに明らかに下心だ。無事に通り過ぎることを願うが、もしこの男性がイブに手を出そうものなら、僕は全力でイブを守る。
無事に通り過ぎることが出来るだろうか? 緊張の一瞬。
「良かったあ」
あの男性はイブに釘付けだったが、何のアクションも起こさず僕達の横を通り過ぎた。
「怖かったですね」「ああ」
僕達はしばらく沈黙しながら歩いていた。
少し経った後、僕からイブにこう話しかけた。
「なあ、イブ」
「はい?」
「これから先もあんな感じなことがあるの?」
「はい、そうですよ」
「そんな……」
僕はしばらく黙って俯いた。そんな僕にイブが話しかける。
「大丈夫です。確かにこれから先、怖いことが起きます。ですが私達、いや私達軍勢は必ずその恐怖に打ち勝ちます」
「私達軍勢?」
「そうですよ。戦ってるのは私達だけではありません」
戦ってるのは僕達だけではない。イブのその言葉に僕は幾何かの安心感を抱いた。
「ちなみにイブ、性の悪魔というのは?」
「何から説明したほうがいいのかな」
イブは自分が知ってる限りの情報を僕に説明してくれた。まず、この世界は悪魔(その長をサタンという)の軍勢が支配しているということ。性の悪魔はその一つとのことだ。
で、今僕達が戦わないといけないのはその性の悪魔なんだそうだ。
「とりあえずこの感じだと性の悪魔は何とかなりそうです」
そうなのだろうか? ただイブがそういうならそうなのかな? と僕は何となく思った。とりあえず性の悪魔だろうが何だろうが、僕が絶対にイブを守らないといけない。いや、絶対に守るんだ。僕は自分にその言葉を言い聞かせづつ、空を見上げた。