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異世界家族  作者: コタツ
家族と異世界へ
7/8

王城へ

「おおっ、歩き心地がいい!すげーなこの石。今まで靴下だったせいもあるかもしれないが、これはやっぱいいものだ」


おっちゃんから買った?靴は数歩歩くだけで馴染んできた。普通靴っていうのは慣れるまで時間はかかるけどこの靴だとそんな事はなかった。


「よかったな!龍也!後で父ちゃんにも履かせてくれよ!」


「親父、この靴は一度履いたらマジでやみつきになるから、やめたほうがいい!それに足の臭いが移る!」


「酷くないか息子よ!?」


「それに関しては同感だわ」


「翼まで!?俺を裏切るのかー!?」


「そうじゃないわ!事実よ!」


「ぐはっ!!」


言葉の暴力が親父を襲う!なんで父親ってみんな足くさいなんて言われているのかわからない。俺もいつかああなると思うと、少し嫌になってくるが、そんな足のすねを俺はかじって育ってきたんだよなー


「息子よ俺の足はもう手遅れだ・・・せめてお前は足の管理をちゃんとしとけよ」


「ああ、ちゃんと洗ってるよ」


「なら安心した」


くだらない会話をしている間に俺たちは賑やかだった市を抜けた。

その後はレミについて行って街の中を歩いて行った。親父と母さんはいつも通り。結構な量歩いたはずなのに、疲れた素振りを一つも見せてこなかった。

俺に関しては靴がいい感じなせいか、調子が良くなっていた。

恵はうんうん言ってくる。そろそろ起きそうだ。

レミは、真剣な顔つきになっていた。


「止まってください」


腕を俺たちの前に伸ばして、いつもより低い声で言ってきた。


「どうしたんだ?」

「囲まれてます」


ただ簡潔にそう言われた。レミが言うのなら間違いないのだが、どこにいるのかがわからない。いやいても見つかるはずだ。なぜなら今俺たちがあるいているのが周りには家しかない一本道なのだから。

レミは周りを確認し、


「擬態魔法ですか。ずいぶん珍しい魔法を使いますね。でももうばれてますよ。姿を表したらどうですか?」


そういうと俺たちを囲んでいた奴が正体を現した。横から、後ろから、

相当な数が出現した。全員黒いターバンにマスク。服装は、半袖半ズボンにマントをつけている。動きやすい、ラフな格好だが腰にはナイフ。ポーチにも何か入っている。間違いない。おっちゃんが言ってた盗賊だ。

そして一人の男が前に出てきた。


「俺たちの擬態に気づくとは、お前ただの女じゃねえな」


「女の勘ですよ」


「そんなんでわかるわけないだろ!!」


この盗賊グループなのだろうか。物々しい声で男は言い返してきた。

だがやがてすぐに静かになると


「まあいい、今すぐ持っているものを全部出しな。擬態がばれてもこの数だ。もし出さなかったらどうなるかはわかるよなぁ?」


確かに男の言う通りこいつらの数は数十人もいる。しかも全員、武器持ち。

いくらレミでもこの数を武装なしで、妹をおぶりながら倒せないと思った。

だけどレミから焦りやそういったものは何にも感じなかった。


「おいてめぇ!何か言えよ。殺すぞ!!!」


「そうですか。わかりました。でも残念ながら殺す事は不可能でしょう。」


「ああ!!?」


男は激昂し剣を抜いてレミに!・・・

襲いかかる事はできなかった。


「馬鹿な!?これは!?」


男の足は凍っていた。動くことができない。

周りの奴らもざわめきだす。リーダーの足が凍ったせいか、どうやら違う。

部下の足も凍ってたのだ。

俺は驚きのあまりにレミに言った。


「レミ!?なんだよこれ!?お前どんだけ強いんだよ!」


「賞賛ありがとうございます」


こんな状況でも丁寧に返してくれた。


「ぐっ!!お前何者だぁ!?」


「応える義理はあなたたちにはないかしら」


そう、剣圧を秘めた声で盗賊たちに言い返した。

さすがにびびったのだろうか、リーダー格の男は少したじろいだように見えた。


「さて、あなたたちを連れて行きましょう、罪を祓いなさい」


突如盗賊たちの下に水色の光が放たれているサークルが出現する。光の輝きはだんだん強くなって、


「盗賊たちが消えた・・・?」


「転送魔方ですよ。彼らを城の中にある牢屋に転送しました。後は部下がやってくれるでしょう」


「本当に便利だな!?転送魔法!」


「いやそんなに便利じゃないですよ。なぜなら・・・おや?」


レミにおぶられた恵の体が動き出す。さっきの騒動で起きたのか?


「うーん・・・あれ?私寝ちゃってたの?」


妹は顔を拭いながら聞いてくる。その瞳はうつらうつらとしていてまだ眠そうだ。

ただおぶっていたのがレミだと知ったのか、妹の目が開いていく。


「あ・・・もう大丈夫ですよレミさん。降ろしてくれますか?」


「そうですね」


レミはおぶっていた妹をおろす。だが妹はレミに警戒心ばちばちだ。俺はなんとか妹を落ち着かせようと手を打ってみた。


「恵、レミはなお兄ちゃんたちを悪い盗賊から守ってくれたんだぞ。それもお前をおぶりながらだ、だからそんなに警戒しなくても」


「龍也、大丈夫です。一人でなんとかしてみます」


俺が話してる最中にレミが割りこんできた。その時のレミの顔はいたって真剣でちゃんと謝りたいという気持ちが伝わってきた。

レミは妹の方を振り向く。妹はそれに気づくとビクッと体を震わせる。


「あの・・・なんですか?」


恐る恐る聞いてくる恵。だが次のレミの行動により、妹の目が、丸くなる。

ある小包を渡したのだ。


「え、あれ?これって?」


「あのとき泣かせてしまったお詫びです。本当に申し訳ありませんでした。」


丁寧な動作で謝ってくるレミに対し恵もさすがに罰が悪くなったのか、困ったような顔をこちらに向けてきた。俺に向けてきてもな・・・


「まっとりあえず開けてみたらどうだ?」


「うん」


妹は小包に手をかける。

中に入っていたのは、赤みがかったシュシュみたいなものだった。


「レミさん!これってシュシュ!?」


「シュシュ?そちらの地方ではそう呼ぶのですか。私たちはスクラチと呼んでいますよ」


スクラチというものをもらって恵は喜んでいた。やっぱ女の子はこういうものが好きなのかと実感する。

恵はもらったシュシュを使い長い髪の毛を結びポニーテールにした。


「どう似合う?」


「ええ似合ってますよ。とても可愛らしいです」


お褒めの言葉を授かった俺の妹は顔を赤くしていた。さっきまで警戒心しかなかったのに今では心の中からレミを許している、いやあまりにも無防備に見えた。

プレゼントもらうだけでこうなるのか・・・誘拐とか簡単にされそうで怖いと思ったがそれも違うだろう。こう見えてもうちの妹は人を見る目はあるのだ。

レミの今の姿がわかったのだろう。そして騎士の顔も知っている。

それでああなっているならちゃんと和解できたってことだ。


「あっそうだ!」


妹は何かを取り出そうとスカートのポケットに手を突っ込む。それを不思議そうに見つめるレミ。


「よし!あった!」


ポケットの中から取り出されたのは妹のヘアゴムだった。

ただのヘアゴムではない。確か5年前、妹が手作りしたヘアゴムだった。

ヘアゴムに青色のビーズをつけた妹のお気に入りのヘアゴム。

それをレミに渡した。


「え?これを私にですか?」


「そうだよ!まあ私だって悪かったわけだし・・・それに鎧つけるときには髪の毛結んでるんでしょ?」


「結んでないですよ。氷で固めてますから」


「ダメだよ!髪の毛が傷んじゃう!」


そういうと、渡したヘアゴムでレミの長い髪を結ぼうとした。


「こらっ!なにをするのですか!」


「そんなに怒ったら恵また泣いちゃうよ」


「うっ・・・」


どうやら妹の方が一枚上手だ。

レミは困惑した表情で結び終わるのを待っている。

それに比べて妹は楽しそうにやっているな。


「あの恵まだですか?」


「うーんちょっと待ってねレミ姉さん。うーんやっぱ私と同じ方が似合うかな?」


妹の手が色々とレミの髪の毛をいじってくる。そして・・・


「よし終了!うんこれだね!」


妹と同じポニーテールになったレミの髪の毛はひらりひらりと揺れていた。背中まで伸びていた綺麗な青色の髪がまとめられ、さらに女らしさが増していったと俺は思ってしまった。

そしてやはりーー!うなじがたまに見えるのがいい!

グッジョブだ妹よ!

でも本人はまだ困惑したような顔をしている。

だったらちょっとからかってやろうと俺が企んでると親父たちが寄ってきた。

親父は笑いながらレミに聞こえない程度の声で囁いてきた。


「イッセーので感想言うぞ、いいか?」


どうやら俺と同じ考えらしい。母さんも苦笑はしているが賛成のようだ。妹に関してはは予想通り。


「じゃあいくぞ!いっせっのーで!」


レミがこちらの掛け声に気づいたのか、戸惑った目でこちらを見てきた。


「え!?なんですか!?」


俺たち家族は全員同じ感想を口にしていた。


「「「「似合ってるよ!!」」」」


それを聞いたレミはしばらく氷になってしまったのかと思うほど動かなかった。

ずっと顔を俯かせて動かない。

・・・アレ?怒らせちゃったか?

と俺たち家族は冷や汗をかいてしまった。これだけ動かないと罪悪感が生まれてくる。

だがその心配は杞憂であった。

レミは顔をあげるととびきりの笑顔で、


「ありがとうございます!」


と言ったから、俺たち家族も全員で笑った。俺に関してはその美貌のせいでしばらく見とれていたけど。


「さて!気を取り直して城に行きましょう。もうすぐなのでついてきてください」


「わかったぜ!」


「うん!」


「行こうか」


「そうね」


もうすぐかぁ・・・

こんときに俺は城に行ったあとの予定なんて全く考えず、ポニーテールの後ろ姿もう見れなくなっちゃうのかと全く、くだらないことを考えていた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「着きましたよ。皆さんお疲れ様です」


異世界転生して約5時間、俺たちは城にたどり着いた。



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