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異世界家族  作者: コタツ
家族と異世界へ
6/8

靴屋のおっちゃん

 妹の恵がレミの肩の上で寝て少しの時間がたったが、俺はあることに気づく。いや本当ならもっと前に気づくべきだった。自分がどれだけ焦っていて冷静さを欠いていたのがわかった。その気づいたこととは。


「なんで、親父達靴を履いているんだ?」


 あんまり下を見ないため親父達が靴を履いていたのに気付かなかったんだ。気づいたのは妹が肩車された時。靴を履いているのが見えたのだ。

 親父達はいつもの表情でこういった


「そりゃあ、お前があのテレビに吸い込まれたから、母さんと恵で相談して色々準備して靴履いてからテレビにダイブしたんだ。他にも色々と持ってきたはずなんだが・・・」


「どうやらあの渦に全部流されてしまったらしいの。この世界に着いた時にはもうなくなっていたのよ」


 なるほど、そんなことが・・・ やっぱり俺を助けるためにこの世界に来ちまったのか・・・

 また迷惑かけてしまった。そう思うと胸が苦しくなる。


「ごめんな親父、母さん。俺のせいで・・・」


 そう謝罪の言葉を述べた時、俺の親は腕組みして笑ってこう返してきた。


「何言ってんだ龍也!悪いのはあの黒い渦であってお前は悪くない!それに息子一人で行かせるわけにはいかねーよ!」


「そうよ!龍也は私たちの息子だもの。守る義務が親にはあるのよ」


「でも、俺いつも迷惑かけて!・・・」


「迷惑をかけるのが子供の仕事だ。俺だってじいちゃんはたくさんの迷惑をかけてきたさ、それに、俺たちはお前を17年間育てたんだぞ!これぐらいの迷惑、へのへのかっぱだ!」


 そのあとに俺の親父と母さんが俺の頭を撫でてきた。


「ちょ!?親父!?母さん!?何を!?」


「やっぱり身長伸びたなー龍也。俺と同じくらいか?」


「私は少し手を伸ばさないと届かないわね。お母さんの頭一つ分大きくなっちゃって」


「ちょっと恥ずかしいからやめてほしいんだけど・・・」


 頭を撫でられるなんて何年ぶりだろうか。確か公立の受験落ちて私立に行くことになって、親に高い金払わす罪悪感があってそん時も、大丈夫だよって撫でてくれてたっけ。あー恥ずかしいけどやっぱ落ち着く・・・

 

 1分くらい頭がしわくちゃにされた後、レミが話してきた。


「ふふっ、本当に仲のいい家族ですね。さて靴屋に向かいましょう。確かこの路地裏を出て右に曲がればすぐに見えてくると思います」


「そうか。じゃあ早速いこーぜ!」


  俺たちはレミについていく。路地裏から出た後は右に曲がりそのままついていく。

 しかし俺はここであるもう一つの疑問が思い浮かんだ。そこで俺はレミを呼び止める。


「なあレミ、なんで騎士団ちょ、うぐっ!!」


 急に口を華奢な手が塞いでくる。

 レミの顔を見てみるとなぜかパニックに陥ってるような顔をしていて、そのあとに顔を俺の耳に近づけて囁いてきた。


「龍也!あなた何を言うつもりだったんですか!?・・・私の姿を知ってるものは城の近くに住んでいる人だけなのですよ!?」


「あ、そうなのか。ワリィ。どうりで知ってる人がいないわけだ、けれどどうしてバラしてないんだ?レミみたいな美人が騎士団長やっていたら衛兵になる人も多そうだけどな」


「そんな理由でなってもらっては困ります!・・・それに私が騎士団長とバレたら、普段の住人の顔を見ることができないじゃないですか・・・・・・」


 どうやらレミは自分の正体が知れたら人々が改まってしまうから、ありのままの姿を見ることができないという。


「対等でありたいのか?」


「はい。私だって人間ですから。妙にかしこまった言い方をされても嬉しくありません。だから街の中で私の素性を言うのはもうやめてほしい・・・」


「わかった。すまん!・・・よし!じゃあもうっさっさといこーぜ、レミ!」


「わかりました!・・・でももう着きましたよ。ほら」


 レミが指差したところには靴屋の看板が、薄い赤色のレンガで造られた店の中には靴がたくさん。中には装飾品がついている邪魔そうな靴もあったが・・・問題はその看板だ。何かの文字が書かれている。書かれてはいるんだが・・・記号かこれ?  

 俺と一緒に首を傾ける親。やっぱり親も読めないらしい。それを見て察したのだろうかレミが少し呆れたように言葉を口にした。


「もしかして文字も読めないのですか?」


 と首をかしげて行ってくるレミ。どうやら俺の親父と母さんにも聞いているが答えはひとつ・・・


「ああ読めねえ!」


「父さんも読めんなぁ・・・」


「私も・・・」


 それを聞いてさすがに少し呆れたようにレミが行ってくる。


「文字も読めないとは・・・あなたたち一体どっから来たんですか?」


「すげー遠いところから魔術によって飛ばされたんだよ」


 と俺は嘘をついてみる。いや嘘ではないな。ほとんどそんな感じだったもんな。


「そうですか・・・でも言葉は使えるのですね不思議です」


「そこは親父と母さんが教えてくれたからな!」


 俺はなんとかごまかしてみる。レミは不思議だと思っているのだろうが俺だって不思議なことが一つ。

 日本語で話していることだ。英語でもなく聞いたことのない異世界後でもなく、日本語なのだ。

 もしかしたら、あの黒い渦に巻き込まれた時にほんにゃくこんにゃくでも食わされたのだろうか。無意識に異世界後を話してるっていう可能性もなくはないが・・・文字が読めねえから違うのか?

 

 俺がそんなことを考えていると靴屋の奥の方から足音が聞こえてきた。

 靴屋の店主が出てきたのだろうか。その靴屋の店主は筋肉もりもりの焦げた肌を持っており、しといヒゲが生えてて・・・タンクトップって!!


「ああ!!おっちゃん!?あんたが靴屋の店主だったのか!?」


 出てきたのは俺の第一住人の親切なおっちゃんだった。おっちゃんもそれに気づいたのか、にこやかに声を荒げて言ってきた。


「ん?おお!!あんちゃん!!来てくれたのか嬉しいぜ!!」


「おっちゃん、靴屋の店主なら先に言ってくれればよかったじゃねえかよ!」


「知り合いなのですか?」


「まあ、このおっちゃんがお金くれたんだよ」


「そうだったのですか」


 そう言ってレミは納得する。


「しかしあんちゃん!この短時間で人が増えたじゃねえか。黒髪の三人は、たぶん家族だろ。で後のこの水色の髪をしたべっぴんさんは何者なんだ?」


 そうおっちゃん言ってきた。 

 レミの正体は知られてはならない。友達と答えるか?いやそれも怪しいな。案の定レミも困っているようだった。

 だが親父がうまく返してくれた。


「うちのいとこなんですよ。ウチは初めてここにきたので今いとこが街を案内させてる途中なんですよ」


「へえ!そうだったのか!嬢ちゃん名前は?」


「え、はい、レミと申します」


「レミちゃんか!いい名前だな!おっとそういやあんちゃんの名前を聞いてなかったぜ。あんちゃん、名前は?」


 おっちゃんが俺の方に振り向いてくる。そういやまだ名前言ってなかったな。


「龍也だ」


「そうか龍也か!ちょっと待ってろ、今靴を取り出すからな」


 そう言うとおっちゃんは奥の方へ行ってしまった。

 

「いい人ですね。心から暖かさを感じます」


「そうだな、マジでいい人だわ」


この世界について初めて会えた人が本当におっちゃんでよかったと思う。


「・・・龍也ちょっといいですか?」


「ん、なんだ?」


レミは申し訳なさそうにこう言ってきた。


「ご両親方もすいません、ちょっと席を外してもいいですか?すぐに戻って来るので」


「ん?別に構わねーよ、何するのかわかんねーけど」


「俺も息子と同じ考えだ」


「私もよ、むしろずっといて大変だったでしょう。恵は私が預かっておきましょうか?」


「いえ、大丈夫です。では少しだけ行ってきます!」


そう言い、レミは人と人の間をするりするりと抜けていく。

何をしに行くんだろうと思ったが、多分ショッピングだろうと俺は思う。レミだって女子だし何か買いたいものがあったに違いない。いや違法商品があって咎めに行ったのかもしれない。レミの性格なら充分にありえる事だ。

まあともかく、俺の目的はもうすぐ達成される。やっと靴下から卒業できるのだ!


「待たせたなあんちゃん!ほら持ってきたぜ!」


おっちゃんが靴を持ってきてやってきた。その靴は見た事のない緑色の素材でできていた。皮を使ってるのか、天然繊維を使っているのか、それすらもわからない。


「なあおっちゃん。その靴なんの素材でできているんだ?皮でもなさそうだけど」


「お!!よく気づいたな!これは風鉱石でつくった靴だぜ!」


「石!?重くねえのか?履き心地めっちゃ悪そうだな!?」


「まあそういうな!ちょっと履いてみろ!」


俺は100の疑いを持ちその靴を履いてみる。

するとどうだろうか。足にフィットし、履き心地もよく何よりも軽い。


「おっちゃん!?これ本当に石でできてんのか!」


「ああ!すごいだろ!加工するのに時間はかかるけどな!」


「なんでそんなものを俺に?」


「まあ縁というやつだ。前の靴より履き心地いいだろ?」


「そりゃ断然に」


そう答えたと同時におっちゃんは悪そうなそれでいて楽しそうな顔を浮かべこう言ってきた。


「でもよあんちゃん、そいつは高いぜ」


「なん・・・だと・・・いくらだ?」


「そうだな。この風鉱石はなかなか手に入らない品物で、しかも加工にすごく手間がかかる。そう考えてこいつの値段はな・・・」


「ゴクリ」


「あんちゃんの全財産っつーところか!さあ買うかい?」


なんてノリのいいおっちゃんなんだ!答えはもちろん決まってる。

俺はポケットに入ってる全てのお金を出しおっちゃんに言ってやった。


「買うぜ!」


「ふん!毎度!今度は盗まれん用気をつける事だな!はっはっはっはっ!」


「ああ!わかったぜ!ありがとな!!」


「またのご来店待ってるぜー!!」


「ああ!また来るよ!」


そう元気にかえした後、ちょうどレミが帰ってきた。


「お持たせしました!龍也、買い物は終わったのですか?」


「ああバッチリだ!」


俺は今履いている靴をレミに見せた。


「ん・・・?この靴は・・・」


レミは不思議そうに靴を見てくる。

なんの素材で作られたのかわからないのか、

俺はなんの素材でできているかを説明した。


「風鉱石っつーもので作られたものらしいぞ。知らないのか?」


「風鉱石!?それを靴に?」


突然形相を変えて詰め寄ってくるレミ


「これリスクとかあるのか?」


「いえ、そういうわけでは、ただ滅多に手に入らない品物ですので」


「それだったら、どうしておっちゃんは俺にこれを?縁という奴だけじゃなさそうだな」


「はいその可能性は高いです。でも本当に縁だけっていう可能性もありますよ」


本当にそうだったらいいと思う。でも縁だけじゃなくてもあのおっちゃんが、いい奴っていう事には変わりない。


「そういえば、さっきは何してたんだ?買い物?」


「はい、そうですよ。でも何を買ったかは秘密です」


なるほど、確かに女子はあんまり買ったものを男子にみせないっていうからな。仕方ない。


「さあ、目的を果たしたのでそろそろ城に行くとしましょう。準備はいいですか?」


「「「おー!」」」


俺たち家族が全員手を挙げていった。そう全員だ。


「・・・おー・・・」


妹が寝言で言っていたのだ。これにはさすがのレミも笑ってしまう。


「ふふっ、可愛いですね。」


「俺の妹で、親父と母さんの娘だからな!」


そう自信満々に言い切った。

妹が寝てから20分以上は経っていると思うが未だ妹はレミの肩の上だ。


王城につくまでに起きるかどうか親でかけていたのは内緒の話だ


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