第20話【本当の力】
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赤竜が黒竜になった。今までのダメージすらも回復された。俺の魔力ももう2000万もない。状況は最悪だ。
「ハァハァ、キツイな」
「ガアアアア!!」
ブラックドラゴンは咆哮を上げる、今までの強化より更に数段上の強化値だ。怒りで正気を失ってるのかもしれない。そして凄まじい速度でこちらに駆け出した。
俺はその速度に反応ができなかった。こちらに近づいてきたブラックドラゴンはその右爪でこちらに薙ぎ払いをしてきた。
咄嗟に二挺拳銃を盾にし俺は吹き飛んだ。
『マスター!しっかりして下さい!【リカバリー】【リジェネレーション】【リインフォース】!!」
「・・・・なにが・・・・あった?」
俺はヴァレイグの城壁に叩きつけられていたようだ。身体がまるで動かない。全身の激しい痛みで意識が飛びそうだ。しかももう魔力がほとんど残っちゃいない。
『あのドラゴンの一撃に反応がまるでできなかったんです。魔力不足で強化が足りませんでした。ギリギリで残りの魔力で最大強化して重症ですが生きています!』
ああ、なるほど俺はどうやら想像以上に消耗してたわけだ。戦力比を見誤ってこの様か。っくそが…どうする?
「…癒せ…るか?」
『あと3分もあれば戦闘は可能です』
3分かこりゃ詰んだかな。本当になんで戦ってるのかもわかりゃしないぞ。まぁ頑張ったほうだよな。畜生、あんなトカゲに負けるのか。
『諦めないでください!まだ全力出してないじゃないですか!傷さえなくなればあんなのなんとでもなります!』
アーシャの声が頭に響く、わかってるさ。わかってる…まだまだだ。そうだ俺は全力なんざだしちゃいない。今までそんなに試してないから躊躇して死に掛けて。さっさと覚悟決めてかかればよかったよ。
「グラアアアアアアア!!」
ブラックドラゴンの叫び声が聞こえる。凄まじい轟音がこちらに向かって来ている。ああ、身体が動かない。少しでも時間を稼げれば何とかしてやる。誰かいないのか!?
「来たぞ!ブラックドラゴンだ!!」
「遠距離戦技は効かない!大砲や大弓だ応戦しろ!時間さえ稼げばローレイン家の魔法使いがやってくれる!」
「魔法師部隊!土属性魔法使いは地面操作系魔法で応戦しろ!他の魔法使いは騎士や傭兵共に片っ端から付加魔法で底上げするんだ!」
「ギルド各員は城壁強化!隙を見て接近戦に持ち込むぞ!全員覚悟を決めろ!!」
『マスター聞こえますか?どうやら街の戦力がこの西門に結集しているようですよ。マスターの戦いは無駄じゃありませんでした』
ハハ…どうやら俺の奮戦も無駄じゃなかったのか。あと3分だけ耐えてくれ。全部終わらせてやるからさ。
少しずつ身体の痛みが引いていく。それでも全く動かない身体に俺はどれだけ重症を負っていたのかと思った。
「ローレイン家、セフィリア様付き護衛執事クラレンス・ヴェクシス。参ります」
聞きなれた執事の声が聞こえる、どうやらクラレンスも参戦しているようだ。おいおいセフィーの護衛はどうした?まさか放置したとか言わないよな?
「おい!そこの城壁に叩きつけられてるヤツって…シオンじゃねーか!!お前生きてるかよ!!」
馬鹿ランドルフの声も聞こえる。うるさいってんだこっちは重症なんだぞ。声が響くわ。
誰かに城壁から引っ張りだされて抱えられる感覚がある、俺はうっすらと目を開けるとやはりランドルフだった。
「シオン!てめぇ1人で戦ってたってのかよ!無茶しやがってよお、くそお!身体ぐちゃぐちゃじゃねーか!【リカバリー】!」
ランドルフの魔力を感じる。お前にしては気が利くじゃねーか。てかなんだよお前魔法使えたのか?
「・・・・ま・・・ほう?」
「生きてたか!こりゃ命属性の魔具に決まってんだろうが。この俺があんなチマチマした術式を編めるかよ!」
そりゃそうか。こいつが実は魔法使いだったなんて驚愕の事実があったらビビるね。ランドルフにも回復支援を受けながら戦局を眺める。
どうやら片っ端から大砲や大弓を持ってきてたようだ。炸裂音などで戦場がうるさくなっている。
だがそれでもブラックドラゴンはまるで怯まずブレスのチャージをしているようだ。やばい500万ほどの魔力を感じ取れる。このブレスは城壁なんかじゃ防ぎきれない。
「にげ・・・ろ、ブレスが・・くる」
「どこ逃げたって一緒だろうが!だがよお大丈夫だぜ?ローレイン家のお嬢がきてるからな!今まで全く知らなかったぜ、すげぇ魔力の光だった!」
なんだと?やはりセフィーも来ているのか?それにしても凄い魔力だって?なに言ってるんだ200万程度であの化け物になにができるっていうんだ。
俺は焦りながら周りの魔力を感知しだした。そこで城壁の上に馴染みのある魔力波長を感知できた。だが今まで感じてきた魔力とはまるで違う。
これは魔力値が1億ほどか?500倍ってどうなってやがるんだ。
地面に横たわりながら感知したセフィーのいる城壁を見上げると、直径10メートルはある大魔法陣が形成されていく。
属性的にあれは雷属性のようだった。でもドラゴンには聞くはずない固有魔法で分解されるのがオチだ。一体なにをやってる?ブレスがくるんだぞ!?
セフィー逃げろおお!
「ガアアア!!」
「【ヴォルティックサンダーボルト】!!!!!!」
多数の雷が渦を巻いて巨大な閃光となりドラゴンに向かっていく、ブレスを吹こうとしていたドラゴンはそれを完全に無視して無防備にその一撃を受けた。
「グルアアアアア!??」
その雷は分解されることはなくブラックドラゴンを貫き更にブレスの制御ができなくなり口内で大爆発した。
固有魔法が効いていない?いや…そんな感じじゃなかった。なんか分解に抗って無理やり有効にした印象だ。
『分解されるところを強引に収束して形を保ちましたね。どんな手品なんですか』
「すげぇ…な、セフィー舐めてたよ」
『ですね、マスター御身体は大丈夫ですか?』
「ああ、全快には程遠いけどとりあえず動けるまで癒えた。ランドルフもありがとな」
「あ、ああ。今の声はどこから聞こえたんだ?」
「聞き流せ」
その問いに答えずブラックドラゴンを見据える。セフィーの魔法で怯んだ隙にクラレンスや騎士、傭兵達が強化と【疾駆】で駆け抜け剣や槍で攻撃しているが戦技の武器強化が意味をなさずダメージは全然入っていない。
やはり固有魔法は機能している。やはりセフィーがなにかをやっていたようだった。
うっとおしく感じたのかブラックドラゴンは尻尾を振り回し弾き飛ばした。そのまま力強く羽ばたくと空に飛翔してしまった。
「今度は空でブレス溜める気か!っくそ身体は…跳ぶ位はできるか!?」
あの魔法をどうやったか聞くために俺は急いでセフィーの所に跳躍した。いつもより力がでないが【天駆】で空を踏み駆け抜けた。
セフィーは西門の上の開けた場所に1人で儀式魔法の再展開の準備をしていた。
「セフィー!」
「シオンさん!?なんでこんな所にいるんですか!ここは危険です逃げてください!」
「なに言ってんだ、セフィーもいるじゃないか、俺が逃げれるわけないだろう!それよりもさっきの魔法はいったいどうやったんだ!」
そこでセフィーの様子に気がついた。瞳が蒼く輝き全身も蒼色の魔力に覆われている。これは魔眼か!?魔力も跳ね上がる魔眼なんて聞いたことありゃしないぞ。
まさかこの魔眼の効果がさっきの固有魔法を貫いた種か!?そりゃ真似しようがないぞ。
「さっきの儀式魔法ですか?あれはドラゴンの固有魔法の術式に合わせた対抗術式でして、私ぐらいしかできないかと」
「やっぱりか!っくそ」
ブラックドラゴンはこれで終わらせるつもりなのか先ほどの倍以上の力を溜めている。それにあの漏れ出していた黒炎の効果がわからない。もしかしたら固有魔法の効果もある炎かもしれない。
『マスターこちらもすべてを賭けましょう。ドラゴンの固有魔法には弱点があるのは既に理解されているでしょう?』
「アーシャちゃん?ペンダントからアーシャちゃんの声がする?」
「・・・・アーシャ、ああ!やつの無効化には魔力を必要としている。1に対して10くらいの効率の良さだが確かに無効化するたびに消耗してる!」
それは最初に戦ってる最中に分かっていた、でもやつの防御を貫くには10倍の魔力が必要でどうしようのなかったんだ。
『はい、ですが既にあのドラゴンは消耗しています。限界突破だってそんな持つわけじゃありませんがドラゴンもこの一撃にすべてを賭けてくるでしょう。捨て身の攻撃は生半可なものでは勝てません。やるしかありません。マスター!』
上空でドラゴンが直径10メートルの大黒炎球を準備している。あの上空じゃ大砲も大弓も届かない。魔法もセフィーしか意味をなさない。今セフィーも再度儀式展開しているが待ちあわないだろう。
ああ覚悟は既に終わっている。
ならやれるのは俺しかいない。
「アーシャ」
『イエス、マスター』
「リミットリリース!」
『リミットリリース」
俺の身体から紅い魔力の光が漏れ出てくる。抑えきれないほどの魔力が制御もできず暴れだす!
「ドライブ・ワン!!!!!」
『イグニッション』
真紅の光が当たりを照らし輝いた。
俺は100億の魔力を持っている、転生直後に無意識で封印していた力だ。魔力操作を訓練している内に一度だけ解放したことがあった。だが100億の魔力は想像以上に制御が難しく、自分の身体も耐え切れるものではなかった。なので再度封印する時俺は10段階に封印しなおした。
段階的に解放できるようにし、訓練で制御可能にするつもりだった。日常が楽しくて訓練をしなかったのは失敗だったが。
一段階目で1割、つまり俺は10億まで魔力を解放した。セフィーも驚いたのか儀式を中断していた。
「シオンさん?その魔力は」
「俺にも実は秘密があるんだ」
「アーシャちゃんも?」
「そう」
「うん、そっか。実は私も」
「だろうね」
「勝てるの?」
「勝つさ」
「そっか、私じゃどうにも超越種には届かないみたい」
「俺が勝つさ、それで今まで通り」
「そっか・・・・今回は力になれると思ったんだけどな」
セフィーは自嘲するかのように溜息をつきながら下を向いてしまった。
「なに言ってるんだ、セフィーがいなきゃ負けていた。俺とアーシャじゃ勝てなかったさ」
「え?」
「あの雷魔法で時間を稼いでくれた、値千金の時間だった」
「そうなの?」
「ああ!」
そうさ、あの時間がなければすべてが終わっていたかもしれない。俺だけがなんとかできるなんて自惚れかもしれないけど。でも犠牲者が今のところ出ていないのはセフィーや騎士団、ギルド員のおかげだ。だからここで終わらせる。
「オオオオオオオ!!!!」
空に【リベリオン】と【ヴェンデッタ】を向ける。照準は勿論ブラックドラゴン!
奴の最強の一撃があの大黒炎球ならこちらも今出せる最強の魔法を叩き込んでやる。
多数の術式を周囲に展開していく。更に足元に共鳴術式を展開し二挺を共鳴させていく。セフィーがこの多重積層型魔法陣に驚愕しながらこちらを凝視している。
ブラックドラゴンも上空で今までの比じゃない咆哮でこちらを威嚇している、でも負ける気がしない。そしてブラックドラゴンはブレスを放ってきた。
「ああ、やっぱお前は凄いよ」
『でも私達のほうが凄いですよ』
「『これで本当に終いだぁああ【バニシングレイ・レゾナンス】!!!!!!』」
真紅の極大の閃光が銃より発射された。2つの極光は互いに共鳴し合い増幅され1つの光となりブレスと衝突した。
互いの最強がぶつかり合う、俺の極光はブレスに当たると分解しながら燃やされているのがわかった。
「っく、やっぱり固有魔法の付加ブレスだったか!!!」
『マスター!」
「オオオオオォォォ!アーシャァ、リミットリリース!ドライブ・ツゥ!!!!」
『ドライブ・ツゥ・リリース・イグニッション』
更に20億まで跳ね上がった魔力を砲撃に注ぎ込む、力強さが増した極光は勢いを強めブレスを力ずくで押し返していく。
「俺は!俺の力はそもそも最強の魔力だあああ!エネルギー量で負ける訳あるか!!ドライブ・スリィ・リリース!!!」
更に30億まで解放、身体が魔力に耐え切れず嫌な音をたてる。だがそこにセフィーがこちらに抱きつきながら支え命属性回復魔法【リインフォース】を使用してくれた。
「シオンさん、負けないで。勝って!!!」
応よ!まだだ…こんなもんじゃないはずだ!
「アアァアァァ!!貫けええェェェ!!!!!」
更に光量が増した極光がブレスを消し飛ばしブラックドラゴンに突き刺さった。
だがブラックドラゴンは【バニシングレイ・レゾナンス】の極光に固有魔法で受け止めていた。
「すげぇなぁ!流石ドラゴンだ!だけどもう限界は超えてるだろう!俺達の勝ちだぁぁぁぁぁアアア!!!!」
そして極光はそのまま首元周辺を一気に貫きそのまま空に消えていった。
首元が消滅し頭部と胴体のみになりそのまま落下、地面に勢い良くぶつかり轟音をたてた。
まわりが理解できず沈黙する。残った音は俺の激しい息切れの音だけだった。
「…―~!!勝ったぁ!」『やっぱりマスターが最強です!」
やっとのことで騎士団やギルド員も理解したのだろう大歓声が城壁に響き渡った。




