目覚め
秋山直人は正直な人間だ。
嘘を言えない。
いや、言わない。
その嘘は本当になってしまうから......
--その力が与えられてしまったのはつい先日だ。
「飯食おうぜ、直人」
昼休みを告げる鐘とともに友達の夏目誠が駆け寄ってくる
「ああ」
「直人、昨日のニュース見たか?」
「ああ、隣町の学校で殺人事件だろ」
ただの殺人ではないことはニュースの報道でも言っていた
なんせ全校生徒の3割が遺体で見つかり、残りの生徒も全員、半狂乱状態だったそうだ
「ただごとじゃねえよな、100人以上死んだんだぜ」
「そうだな、普通じゃない」
「でも、誠お前こういう事件好きだろ? よく本で読んでるだろ」
「ま、まあ。 正直、わくわくしてる自分もいるけど...」
「けど?」
「身近で起きるとやっぱこえーわ」
まあそうだろう。
誠は猟奇的な事件を調べるのが好きで、家にも過去の事件の資料が
山積みになっているほどの変態だが、今回の事件は狂いすぎている...
そんな話をしているうちに昼休み終了の鐘が鳴る...と思ったら違った。
ピンポンパンポーンと僕らがしていた話とは対照的に明るい鐘が鳴る。
この鐘の音は授業や昼休みの鐘の音と違い、連絡などがあるときに鳴る鐘だ。
「なんだろうな」
最近、この音を聞いてなかった僕はつぶやく
聞いたこともない女性の声が教室中に響く。
「--皆さんには能力が与えられました。 直ちに確認してください。」