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私は俗に言う『いじめられっこ』だと思う。
学校に行けば、クラスメートとの会話なし。
グループ分けはいつも余り役。
椅子の裏にはガムがくっつき、ときどき後ろから石が飛んでくる。
話に聞く壮絶ないじめではなく、暇なときに遊ぶ程度の存在。
でもね、軽くても、重くても許せない!
ある日、クラスメートの一部が授業中におとなしい女教師をからかって遊んでいた。
言うことを聞かないし、授業の邪魔だし・・・授業に出ないで屋上やら空き教室で遊んでいてほしいよ。
「やまちゃん先生。いいじゃん!私らのことはほっといてよ!」
顔に厚化粧のクラスの主犯格の伊藤麻衣子・・・通称ケバ子がゲラゲラ笑いながら山本佳美先生こと、やまちゃん先生に言う。
若いうちからの化粧は、将来は肌がぼろぼろだね。
しかも『私はバカです。そして安い子です。』って自分からアピールしているみたいだし・・・良いことないと思うが、まあ、私に迷惑がかからなければどうしようと勝手だけどね。
「そんな訳いかないの!ほら、教科書出して、前を向く。」
先生、注意しても無理だから。
「うちらはいいから授業しなよ。気にしないでいいから。」
茶髪のナンパ気取り男、内浦正人が手をひらひらさせて言う。
他にも数名の男女がそいつらの周りの席ぶんどって、態度がでかく笑って見ている。
笑いすぎて下向いた拍子に、何かがポトリ。
先生、思わず拾ってます。何が落ちてんでしょうね?
「これは、ライター!?・・・もしかしてタバコ持ってるの?見せなさい!」
先生、ここで見せる子いないから。この人達に何言っても無駄だから。
「タバコなんて持ってるわけないじゃん!ライターはもらったの。」
落とした子は一瞬『まずい』って顔したけど、ケバ子のフォローで『そうそう』って言って笑ってるよ。
そのうち、ここでの授業でのことを他の先生とか、他では話さないって先生に約束させてるし。
約束守ったら、真面目になるみたいなこと言ってるが、無理っしょ。
そうこう言っているうちに、授業終了のチャイムが響く。
この後は部活だ。こいつらは、帰り支度はじめてるよ。
今日の部活は楽しみです。
私は華道部に属しています。しかも、顧問は学校一、力がある先生。
恰幅のよい、貫録が素敵です。
今日も、吹奏楽の音楽を聴きながら部活動。
活けるノリが今日の私は違うぜ!
「ともこ、今日はノってたね。」
お!気づきました?
「みっちゃん。今日は調子がいいみたい。」
道具を片づけをしながら、笑しながら返します。
そのまま、世間話突入。
先生も部活の終わりの良い雰囲気に、にこにこしながら少し離れたところで耳を傾けてます。
いい感じですね。
そのまま、話の流れをクラスの事とかに持っていき、自然な流れでケバ子達の今日の授業の出来事を軽く話します。
そして、違う話に流れを持っていきます。
会話の流れの世間話程度として、部活で使った物を片づけながら、帰りの支度しながらのみっちゃんとの会話ですよ。
私は先生に言いつけていません!
さりげなく、先生をチラリと見ると真面目な顔して考えています。
たまたま、先生が世間話を聞いちゃっただけです。
大事なので、もう一度言います。私は先生に言いつけていません。
現にみっちゃんは、先生が聞いているなんて思っていないだろうし、世間話の一つとして流して気にも留めていません。
・・・さて、明日が楽しみですね。