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勇者、未だ立たず?  作者: ああああ
冒険の書1/旅立・・・ち?
3/7

2

「…それで?」


一時限目が始める前のHRは、いつもより、少しばかり長かった。


すぐ前の席に座る男子生徒が、

椅子をこちらに傾けながら、半笑いで問いかけてきた。

一村仁(いちむらひとし)。友人のひとりだ。

どの学校にもいるような、明るく元気で、アタマの悪い学生。

同じ中学の出身だったらしいが、その時にはほとんど面識は無かった。

彼とよく喋るようになったのは、二年生になってからだ。


「つまりさ。なんか話さなかったのか?」


…真面目なのか不真面目なのか、よく分からない男だ。


「あんな美少女なのに?普通、なんか聞くだろ。

趣味とか、前の学校の事とか。お近づきになるチャンスだろ?

お前それでも男かよ。」


などと、何だか横暴なことをつぶやきながら、

一村は教壇のほうを目で示す。

まあ、要するに。こいつは転校生の、それも女の子の情報が欲しいだけらしい。

この男はそういう、ものごとに足を突っ込みたがる人間だ。


「…手ぇ出さないほうがいいぞ」

「ん?何で?」

「…たぶん。なんとなく」


彼女(・・)は、あいかわらずの真面目な顔で、自己紹介の最中である。

熱意があるのかないのかはいまいちよく分からないが、随分と饒舌に語っていた。

教師は、その隣で微妙な顔をしている。何が言いたいのだろうか。


「まあ、ちょっと変わってるよな…雰囲気とか。

なんか、ミステリアスっつーか?違うな。浮世離れ、みたいな…」

一村が、変な顔をして言う。


彼女の印象については、自分でもよく分からなかった。

ただ、その事を考えるほど、

朝方の出来事が、どうも頭から離れなかった。

どう考えても“ワザとやった”としか思えない衝突事故。

だが、それにはどういう意図があったのか?

それは、その理由は、自分と何かしらの関係があるのだろうか?


…まあいいか。考えすぎても仕方ないだろう。

通学中、転校生と衝突事故を起こしたことも、その子と同じクラスになったことも。

ただの偶然さ。


「席は…っと。お、道野の後ろが開いてるな。

さ、座りなさい」


そいつが丁度、自分のとなりの席に着くであろうことも。

全部、ただの偶然だ。そうに決まっているじゃないか。


「お、お前の隣だってよ!でも、日乃木のヤツ、どうしちまったんだろーな」


日乃木伸夫(ひのき のぶお)。本来なら自分の左隣、

窓際に座っていた理系の男子だ。

それなりに喋りもしたし、ノートの融通をした事もあったのだが。


先生曰く、「諸事情により」。

急な親の転勤が原因かもしれないし、夜逃げかもしれない。

いや、一家そろって宇宙人に誘拐されて、UFOの中で頭をいじり回されてるとか。



「…橘、勇未(イサミ)



そーだったら、ちょっとは面白かったかもな。

せめて、そのぐらいの荒唐無稽さは欲しかったところだ。



16年の人生の中で幾度と無く聞いた、

目指した、憧れた、

「勇者」「ヒーロー」とかいうものも。

何年ともたない、泡沫の夢だったんだから。

もっとぶっ飛んでなきゃ。


―面白く、ないよな。




「勇者様」



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