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シュガー・シュガー・シュガー(!)  作者: 助供珠樹
大学一年:4~7月まで(エピソード1)
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7/90

ティー・ブレイクⅠ『シュガー・シュガー・シュガー(!)』

 それからのことは、それほど多く語るべくもない。


 悟司、千佐都、春日、月子からなる四人組音楽ユニット「シュガー・シュガー・シュガー(!)」の初動画(実際には二度目なのだが、名称変更に伴い、あらためてナンバリングをつけることになった)は千佐都の持っている動画共有サイトのアカウントから無事アップロードされ、現在も少しずつではあるが再生数を伸ばしている。


 コメントの内容も決して辛辣なコメントがなくなったわけではないが、少なくとも以前に比べればずっと好意的なものであり、少なくとも月子のいう『ちゃかぽこ』状態でなかったのは確かである。


 さて、最後にあの日千佐都が突如言い出したこのユニット名、


「シュガー・シュガー・シュガー」


 突如このユニット名を聞いて、千佐都以外の全員が目を白黒させたのは前述の章で既にご覧の通りであろう。

 これについては本人とその他を交えて、以下の会話をお楽しみいただきたい。



  ※ ※ ※



「――なぁ、いい加減教えろ。一体なんなんだそのふざけたネーミングは。僕のあの素晴らしきユニット名、『ガストロンジャーズ』はどうした?」


 動画投稿日当日、春日が千佐都にそう詰め寄った。


「えー理由はむっちゃ単純だよ? 悟司、千佐都、鷲里。……ほらね?」


 千佐都の説明に全員が首をかしげる。


「あーもう。なんでわっかんないかなー。『さとし』『ちさと』『わしざと』。はい、これでもうわかったでしょ?」

「おいちょっと待て。どうして僕の名前が――」

「あ、わかりましたー!」


 春日の声をかき消すように月子がはいはいっと大きくのびをしながら手を上げる。


「名前に『さと』か『ざと』がつくんですね。さと、さと……さとー。砂糖!」

「はい、つっきー大正解」

「やりましたっ!」


 嬉しそうにガッツポーズする月子の横で、ギターを弾いていた悟司が顔を上げる。


「それで『シュガー・シュガー・シュガー』ねぇ……。なんかいかにも千佐都が考えそうな名前だけど。でもさ、正直ちょっと長すぎないか?」

「いいのよ、仏の顔も三度までって言うでしょ? 視聴者の人もきっと同じ言葉三回までくらいなら許してくれるよ」


 そんな無理矢理なことをどや顔で言われても。

 悟司は得意げになっている千佐都を見て思わず苦笑いする。


「ええい! 千佐都。いいから僕の話を聞け! なんで僕の名前をそこに加えないんだ!? おかしいだろ! リーダーであるはずの僕の名前が――」

「あんたもう、リーダーじゃないよ?」

「……なんだと?」


 眉をひそめる春日に千佐都は右手で水平に空を切る。


「だって解散したんでしょ? あの『がすとろ』なんとかは」

「ぐぅ……っ!」

「てことで、今回のユニットはあたしがリーダー。どう? 悟司。構わないでしょ?」

「……なぜそれを俺に聞くんだ」

「まぁ一応。実際、今回のユニットって悟司が発起人じゃん?」


 そこまで言ったところで、悟司の背後から春日のうらめしそうなオーラを感じた。

 これはさすがに……。ちょっとフォローをいれるか。


「俺は別にユニット名なんかなんだって構わないけど……でも先輩の名前がないのはちょっと頂けないな。そのままでGOサインを出すわけにはいかない」

「えぇー、だってだってかすがって、名前の中に『さと』がないよ?」


 ならそれ以外で代案考えろよと言いたくなったが、どうやら千佐都は今のネーミングが相当お気に入りのようである。


「……かしゅが」


 その時、悟司の背後でぼそりと、そんな声がした。


「え?」


 その言葉が春日だとわかった瞬間、悟司の背筋がぞくりとした。 


「……ぼくは……かしゅが……マイ・ネーム・イズ・カシュガ……。カシュガェ……」


 そ、そんなに自分の名前を入れて欲しいのか……。

 悟司は春日が本気で可哀想に思えた。


「あ、あの千佐都さん? 春日先輩もこう言っておられますけど――」

「はぁ? 四つもシュガー入れたら長いでしょ。ダメ。ボツ」


 鬼だ。


 キャラ崩壊寸前の訴えもむなしく、春日の願いは千佐都によってすっぱり却下された。

 もはや、悟司は春日の顔を振り返って見れない。彼は一体今、どんな絶望的な表情をしているのやら。


「んー。まぁでもさすがに、何もつけないのはちょっと可哀想か」


 そう言って千佐都は動画投稿画面の動画説明文にある、「はじめまして! 作詞・作曲・編曲・イラストからなる計四人組ユニット、『シュガー・シュガー・シュガー』です」という部分の名前を書き直し始めた。


「……はいこれで文句ないでしょ、スクリーマーさん? じゃーいい加減そろそろいくわよ。はい、動画――投稿っ!」


 千佐都がかちりと音を響かせてマウスを左クリックした。



  ※ ※ ※



「動画説明文

 はじめまして!

 作詞・作曲・編曲・イラストからなる計四人組ユニット、

『シュガー・シュガー・シュガー(!)』です。

 これからちゃかぽこ精力的に活動していきたいと思いますので、

 なにとぞご声援よろしくお願いします。


 デビュー曲の名前は『翼道』

 これ、実は仮タイトルを「ういろう」とかいう名前にしてたんですが(作曲担当であるシュガ男の案)作詞担当の私、シュガ美が強制的に却下しましたw

 あ、でもこの曲のことを別に「ういろう」って呼んでくれても構いません。

 それはそれで、きっとシュガ男が喜ぶと思うのでw


 以上です。出来るだけ早く、次の作品を作ります。

 最後に、この動画を見ていただき誠にありがとうございます!!


 作詞:シュガ美

 作曲:シュガ男

 イラスト:シュガ子

 編曲やらその他雑用:(!)←スクリーマーさんって呼んであげてくださいw」



  ※ ※ ※



 ――投稿されたばかりの曲をあらためて四人で聴きながら、早くも話題は次回の曲の話で持ちきりだった。



 季節は夏。

 暦の上では、間もなく八月になろうとしていた。








――To be continued……

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