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呪われたもの  作者: ありま氷炎
最終章 呪われたもの
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「ははは。今日はあたい達の勝ちだね~」

 ケイはおかしくてしょうがないと笑いだす。

 ケンミンと戦ったダメージがまだ回復していないらしく、動きと力はいつもの半分だった。それに加え、時折背中にひきつるような痛みが走り、リンを邪魔した。

「ほらよ!」 

 呆が左手に気を込めると放つ。右手を失いながらも、呆は桂に加勢をしており、凛は苦戦していた。

「くうう」 

 南の呪術師は苦痛に顔をゆがめるとそれを弾き飛ばす。間髪いれず桂の小刀が凛を襲い、ぎりぎりで体をそらす。しかし小刀が背中の古傷をえぐる。

「………っつ」

 凛の背中から血が染み出る。

「惜しかったね~。次は外さないよ!」

 背中を押えて、うずくまる凛に桂が勝利の笑みを浮かべる。止めを刺そうと小刀をかまえた時、何かが上空を通った。

「?!」 

 見上げるとそれは自分たちで、桂と呆はぎょっと目を見開く。

「いいところで会ったね!」

 自分の姿をしたものが微笑んでにそう言い、腕に抱えていたものを放り投げる。

「ひぃぃい!」

 それは首のない死体で、桂は体を縮こませる。

「あとは頼むな」

「!?」

 呆の元にも同じような首のない死体が投げつけられる。

「あんたたち、誰だ!なんで俺達の姿をしてるんだ?!」

 戸惑う二人を残し、もう二人は空をかける。

「待ちあがれ!」

「待ちな!」

 しかし二人を追いかけようとしたところに、兵士が現れる。

「死体をもって逃げると、なんて悪趣味な奴らだ!」

 兵士が二人を囲んで詰問する。

「だいたいお前たちは牢屋にいるはずだ!」

「うるさい!何、言ってるんだよ」

 兵士に向かってケイが苛立ち紛れに気を投げつける。しかし気が兵士たちを襲うことはなかった。

「呪術司様!」

 ふいに現れ自分たちを守ってくれた金髪の美しき宮の呪術師に、兵士たちは歓声を上げる。

「君たちにこの二人は荷が重い。私が代わりに捕まえましょう」

 典は艶やかな笑みを浮かべる。

 兵士たちは噂に違わぬ、その麗しさに息を呑んだ。

「ふん。やれるもんならやってみろ」

「なんだかよくわかんないけど、頭にくるよ」

 そうして、まんまと罠にかかったと知らない呆達は典と戦うことになった。



クウ様は無事か」

「ああ、まだ寝ているはずだ」

 コンは仕方なしに傷を負ったリンを連れ、空を駆けていた。

 

 術を解き、時間が動き出した。紙で作られた二人の体は切断された。そしてその瞬間を狙い、呆と桂に化けた二人はその遺体を奪い、処刑場から逃げ出した。首が飛んだのを帝を始め、将軍、所司達は見ていた。空と紺は死んだものを認識されたはずだった。

 遺体を抱え逃げる途中、本物の呆と桂と運よく、処刑場の外で会い、兵士の注意をそちらに向けた。元の姿に戻った典は兵士を助けるふりをして、呆達と対峙し紙で作った死体を同時に片付けるつもりだった。

 その間に、紺は凛を連れ、宮を脱出していた。


「これで空様は自由なんだな」

「ああ、もう宮に追われることない」

「よかった……」

 凛はその言葉を聞くと安堵し、同時に疲れに襲われる。

「凛!」 

 目を閉じ、力を失った凛に紺が驚いて呼びかける。

「大丈夫…だ。すこし無理をしすぎた」

「……死んでもらったら困るぞ。お前は空様の命を握る者なのだ。わかったな」

「……わかった」

 空を思う紺の言葉に凛は苦笑する。しかし、紺に認めてもらったようで少し嬉しかった。

 紺は偉大な呪術師だ。宮の呪術司でも敵わぬほどの。それほどの男が空を傍で空を守り続けていた。

 空は知らないだろうが、空は孤独ではない。

 私も、紺も空に生きていてほしいと思っている。


 宮で死を願っていたのを知っている。

 しかし、宮にいた空はもう死んだ。

 

 これからは黒族とではなく、普通の青年として私と共に生きてほしい。

 

 凛は紺に抱かれ、飛びながらそんな想いに駆られていた。



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