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呪われたもの  作者: ありま氷炎
第七章 隠された思い
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 内所ないどころ――シュンの用事とはソウの暗殺を依頼するものだった。

 クウがあの状態では今更、宮のことに加担する気はなかったが、(リン)が生きていることを聞いた。空が生きる気力を取り戻すには凜の存在が必要だった。

 空に凛を会わせるには宮での協力者が必要だった。

 筍は自分の願いを叶えることを条件に協力することに同意した。


「じゃ、計画通りに」

 宮から離れた隠れ家から飛び、宮近くの森の中でコンは筍を下ろした。

 そして空を見上げ、時間を計る。


 計画は半刻後に実行する予定だった。

  

 目を凝らして宮を見ると、筍が宮の大門に辿りつき中に入っていくのが見える。


 内所が帝と呪術司、将軍を足止めしている間に、紺が医部にいるリンソウを襲う計画だった。紺にとって脅威は呪術司のみで、その他の呪術師などに構う必要はなかった。




「うまい」

「よかった」

 部屋の外に机を出し、二人は御粥を食べていた。

(ラン)殿は料理ができるのだな」

「当たり前ですよ。そんなの」

 意外そうなキョウの言葉に藍はむっとして答える。

「すまない。呪術師は料理ができないと思っていた」


 確かに、(テン)様は問題外だし、(ミン)様なんて多分野菜も切ったことないだろうな。宮にいるとご飯は作ってもらえるし、料理なんて必要ないもんね。


「いいんです。確かに宮にいるとそうですもんね」

「……藍殿はどうして宮を出たいんだ?」

 御粥を食べ終わり、匙を殻になった小さな土鍋の中に入れ、強は藍をまっすぐ見つめる。

 その茶色の瞳を眩しいと思いながら、藍は見つめ返す。

「私は宮のどす暗いところが嫌いなんです。だから、凜さんが起きて、草くんの行き先が決まったら村に戻ります」

「……そうなのか」

 警備隊長はぼそっとつぶやくと視線を庭に向けた。 

 普段から表情があまり変わらない強が考えていることはわからなかった。


 『君がいなくなったら強が寂しがると思うけど』

 ふいに師の言葉が頭をよぎる。


 そんなわけないよね。

 だって、天下の警備隊長が私のことなんて。


「……強様。私が宮を出たら寂しいですか」


 藍は不意に自分の口から飛び出した言葉に自分自身で驚く。


 私の馬鹿!なんてことを。


 珍しく動揺した強の顔を見て、藍は自分の言葉を激しく後悔する。


 そんなわけないのに。

 なんて馬鹿な私!


 穴があったら入りたい!


 自己嫌悪でいっぱいの藍の目の前で、警備隊長の顔は驚きから別のものに変わる。


「……ああ。寂しいと思う」

 ぼそっとつぶやいた強の顔は真っ赤だった。それにつれて藍もなんだか照れてしまう。


 しかし、二人の穏やかな一時ひとときはすぐに破壊されることになる。





内所ないどころ殿、どうしたのだ?」

 シュンにより帝は始め、厨所くりやどころ衣所いどころ式所しきどころ財所ざいどころ書所しょどころ医所いどころ、将軍、呪術司が集まられた。各所司かくしょしが一同に集められることなど珍しいことだった。

 空の即位により一時的に崩れた体制も、海の復位により元に戻りつつある。したがって所司達は自分達がこうやって集められたことに疑問を持っていた。

「ご存知の方もいらっしゃると思いますが、帝の御子のことです」

 内所の言葉にざわめきが起こる。帝は眉間に皺を寄せ、呪術司と将軍は筍を見つめる。

「私は内所として、草という少年を帝の御子として宮に招くことに反対です」

 筍はためらいなくそう言い、一同を見渡す。通常内所と帝の意志は同じはずだった。しかし、帝の表情は険しく所司達はその言葉が帝の意志と反していることを悟る。

「内所。お前の意志はわかった。しかし、わしは草を我が子として宮に入れることを進めるつもりだ。皆の理解を求める」

「帝よ。我が国には掟があります。掟によれば黒族でない子供を御子として宮にいれることはできません。そうですね?式所?」

「……はい」

 ふいに話を振られ式所は戸惑いながらそう答える。

「掟は掟。ならば新しい掟を作ればよい」

「そのためには私達、所司全員の賛同が必要です。わかっておりますね。帝」

 内所の一歩も引かない声が部屋に響き渡る。

 

 こうして筍により強引に会議は始められ、典は不可解に思いながら呪術司としてその場に拘束されることになった。



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