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呪われたもの  作者: ありま氷炎
第二章 東の呪術師
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いざ、東の緑森国へ

「飛んでいきますよ」

「飛ぶのか?」

「怖いんですか?」

「怖くなどない」

 顔を引きつらせてそう言うキョウに、ランは微笑みかけ手を差し出す。

 強が空を飛ぶことが苦手なのはわかっていた。しかし、一刻もはやく元の姿に戻りたい藍は馬より、空を飛んでいくとことを選んだ。

「強様?」

 なかなか手を握り返さない強に藍が首をかしげる。

 すると強の顔がすこし赤らんだ気がした。


 強様も男だもんね。


 藍は以前の姿であればけしてありえない状況に心の中でため息をつく。

 呪いにかかって数刻、絶世の美女になった藍への人々の態度は一気に変わった。男達はこぞって話しかけてきて、女性は遠巻きに藍を見ていた。

 以前であれば用事がないかぎり、男性が藍に話しかけてくるなどありえなかった。女性は藍が自分たちの敵ではないと安心しているのか敵意のある視線でみることもなく、普通に話しかけてきていた。


 まったく、たかが外見が変わっただけなのに。

 絶対に早く元にもどってやる!


「ほらほら、強。見とれてないで」

 藍がそう強い決心を固めていると、テンがニヤニヤと2人を見比べてそう声をかけた。

「見とれてなどいない」

 強は親友の言葉にむっとして答える。

「はは。ま、強。とりあえず、中身は藍だから。襲ったらだめだよ」

「中身って!?」

「襲うだと?!なんてことを!」

「はいはい。そう図星だからって怒らない。急ぐんだよね?」


 図星って、

 中身って、

 やっぱり典様は口が悪すぎだ。

 元の姿に戻ったら速攻、村に戻ってやる。


「そうです。急ぎますよ。強様行きますよ!」

 藍はぎろりと典を睨みつけると強の手を掴む。そして一気に空に飛び上がった。

「藍殿?!」

 強は突然、足場を失い、妙な浮遊感を感じて恐怖心で顔を歪める。思わず藍の腕を掴みたくなったが、それをどうにか男の沽券にかけて堪えた。

「強~。一応私の弟子だから、むらむらときても襲わないように」

「典!なんてことを言うんだ。お前は!」

「典様、言葉が過ぎますよ!」


 なんてことを言うんだ。まったく。


 二人は眼下に小さく見える典に鋭い視線を投げかける。

「はは。冗談だって。二人とも冗談通じないのかい?とりあえず気をつけていってらっしゃい」

「ああ」

「はい」

 色々言いたいことはあったが、二人はにこにこと笑顔を浮かべて手を振る典に、そう返事をするだけに留まった。

「じゃ、行きますよ!」

 藍は強にそう声をかけるとその手を強く握る。


 そして国一番の美女になった藍は強を連れ、東の呪術師・ケンのいる緑森国に向かって飛んだ。

 


 「強様、大丈夫ですか?」

 緑森国りょくしんこくに着き、地面に降り立つと強の顔は真っ青になっていた。

 無敵の戦士といわれる強のそんな弱点をみて、藍はなんだか楽しくなるのがわかった。


 やっぱり人間、苦手なものがあるもんね。

 あ、でも典様にはなさそうだけど…


「大丈夫だ。ケンの家に向かおう」

 青ざめた顔のまま、そう答える強に同情しながらも藍はうなずく。

 一刻もこの美女の姿から解放されたかった。

 柔らかい肌、邪魔なくらい大きく胸、長い金髪の髪、普通であれば喜ぶ話なのだが、藍はこの美女姿が窮屈でたまらなかった。

 強もどうしても意識してしまうらしく、飛んでるときも妙に緊張しているのを感じだ。


 ま、襲われることはありえないと思うけど。


「藍殿。あの塔が賢の家だ」

 緑森国の森の中を歩きながら、強が遠くに見える塔を指差す。

「結構遠そうですね。飛んでいきますか」

「…歩いて半刻もかからない。歩いていこう」

 飛ぶという単語にぎょっとした強に藍は同情を覚え、東の呪術師賢の家には歩いて向かうことにした。


「強様、賢様とはどういうお知り合いなのですか」

 『あいつならなんとか賢に頼めるかもしれない』と典が言っていたので、藍は2人がどういう関係か気になっていた。

「お知り合い…、賢は俺の兄だ。母親が違うがな」

「あ、兄?!」

 意外な答えに藍の声が上ずる。


 でも兄なら、確実に元に戻してくれそうだ。


 藍は早くも元に戻れる可能性が高いことに気付き、嬉しくなって微笑む。

「強様、先を急ぎましょう」

「そうだな」

 嬉しそうな藍に強は少しだけ複雑な顔になったが、軽い足取りで前を歩く藍の後を追った。


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