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呪われたもの  作者: ありま氷炎
第六章 親子
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ソウくん!」

 放たれた気を少年はぎりぎりでかわす。

 やはり三人相手では荷が重いようで、少年の動きが徐々に鈍り始めているのをランは感じた。

「!」

 振り下ろされた刀を藍は受け止める。

 眼下には力が失い倒れている明の姿がある。先輩呪術師を倒し、残りは東の呪術師1人となった。


「どうしても私を倒したいみたいですね。賢さん!」

 正気ではないとわかっていたが、手ごわい東の呪術師に藍は焦り始めていた。


 このままじゃ草くんの援護に回れないかもしれない。



「どうした?終わりか?」

 典は地面から体をゆっくりと起こす。口の中が切れたようで、血の味がした。頭上には不敵な笑みを浮かべる紺の姿が見える。

「いやあ、久しぶりに怪我をしてしまいました。強いですね」

「その調子ではまだ戦えそうだな」

 坊主頭のいかつい呪術司は美しき宮の呪術司の言葉に顔を歪める。

「まだまだ戦いはこれからです。新呪術司殿」

 典はそう言うと手に気を込め、頭上の紺に向かって放つ。しかし、気が男に当たることはなかった。

「!」

 ふいに背後に気配を感じ、反射的に身をよじる。するとシャリと音がして金髪の髪が宙を舞った。

「惜しかったな」

 再び振り下ろされた刀を避けるため、宙に飛び上がる。

「!」

 しかし背後に男の気配を再度感じた。典は咄嗟に刀を背後に向け、男の刃を防ぐ。

「さすが、呪術司だな」

「今は違いますけどね」

 典は刀を相手のものにぶつけると、その反動を利用して飛ぶ。そして距離を置き紺に対峙した。


 呪術司になって10年になるが、自分より上手の者に会ったのは初めてだった。

 恐怖とは違う感情が湧きおこり、血をたぎらせた。


 忘れていた戦いの楽しさを思い出し、典はぞくぞくするのを感じた。




「うげっ」

 地面で伏せているホウの上に、ケイの体が激突する。

 氷の呪術師は乱れた息を整えながら、体を起こそうとする桂を見下ろす。

「頭にくるねぇ。まったくさあ」 

 桂は気を失った呆を一瞥して髪をかきあげる。

「あたいの顔、傷つけたら空が怒るよ。なんせ今や、空の慰め役は、このあたいなんだからねぇ」

 女は下品な笑みを浮かべる。それは凜の神経を逆なでし、女はすぐに後悔することになった。



「少年。息が上がってるよ」

「俺達を甘く見過ぎなんだよ」

 三人の呪術師はソウを囲み、刀をくるくると玩ぶ。

 一人であれば草だけで倒すことができた相手だった。しかし三人かかりでは歯が立たず、少年は苦戦していた。

(キン)。そろそろ終わらせるぜ。藍があの東の呪術師を倒したら面倒なことになる」

「倒せるのか?」

「あいつなら倒せるはず」

「しっかし、元の姿に戻って残念だったな。前の方が色気があってよかったのに」

「前?俺は前の前の金髪の方がよかったなあ」

「なんで戻ったんだろうな」

 草は自分を囲み、くだらないことを言い始めた呪術師達をじっと見つめる。息を整え機会を窺っていた。

「あーでも、俺は今のも純朴でかわ…」

「くらえ!」

 呪術師達が話に夢中になっている間に、草は三人の上空に飛び上がっていた。そして両手いっぱいに気を込め放つ。

「やったか!」

 気が当たる音、男の悲鳴が聞こえ、草は歓声を上げる。 

 しかし、喜びは束の間、ひやりと首筋に刀が当たる。

 視界が回復した眼下には二人の男の体が力なく横たわっているのが見えた。

「少年、残念だったな。うっつ!」

 余裕たっぷりだった男の唸り声が聞こえ、冷たい感触が首筋から消える。そして、男は急降下し、地面に激突した。

「草。油断は禁物だぞ」

「凜様!」

 男を倒したのは師匠の南の呪術師だった。先ほど戦っていたはずの呆と桂はボロ雑巾のようにずたぼろになり、地面に転がっている。




 よかった……

 

 南の呪術師が弟子の窮地を助けたのを確認して、ランは胸をなでおろした。

 そして、これで東の呪術師と心おきなく戦えると刀を構え直す。


 たしか、典様が私は5番目って言ってたっけ。

 4番目は賢さん……

 これで賢さんを倒せば4番手に格上げよね。


「よーし、頑張ろう!」

 実は戦闘的なのか、藍は新たな目的をそう決めると賢に向かって飛んだ。


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