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蛇の壺(中編)

「こんマニアー。大岡マニアだぞー。今日は探索者協会の地下倉庫から配信してるぞー。そして、今回はゲストが一緒だー」


・こんマニアー

・ゲスト?

・トワ様? マリー様?

・気になるねぇ!

・こんまにあー


「ふっふっふ。では早速、今日のゲストに登場してもらうぞ。それでは、どうぞー」


 大岡の言葉に合わせて二人のメイドが画面に映った。どうか配信が上手くいきますように。そう大岡は願う。


「こんにちは! ナガヒメでーす!」

「こんにちは。サクヤです」


・おー

・ナガヒメちゃんとサクヤちゃん!

・コノハナ姉妹だー!

・可愛いゲストさんたちですね

・マリー様のところのメイドさんたちか


「今日はコノハナ姉妹と呪物の鑑定をやっていくぞ。というわけで、二人ともアシスタントをよろしく」

「まっかせてー!」

「お任せください」


 大岡は、配信の前に、二人が呪物に対してどの程度の知識を持っているか確認している。二人は一級探索者ということで、呪物への深い知識を持っているようだ。配信のアシスタントとしては頼もしい。


「それでは早速、今日の依頼品を見ていくぞー。サクヤちゃん、こっちに依頼品を持ってきてくれ」

「はい、こちらが依頼品となります」


 そうして、画面に映ったのは、黒っぽい土器。ここに来た時に、施設の職員に見せてもらった品だ。大岡はこの土器からは不吉なものを感じていた。


「こいつは……蛇のような装飾がされた壺だ。職員さんから話を聞いたところ、こいつが探索者協会に運ばれてから、ここの景気は良いらしいぜ。羨ましい話だな」


 探索者協会に批判的な記事を書いていたライターに不幸があったという話は伏せておく。それは、直接的に話すべきことではないだろう。


・金運が良くなる壺かー

・それは確かに羨ましい

・なんか黒っぽいな

・蛇の装飾が気になるね

・今日の解説にも期待


「蛇ってのは恐ろしい生き物だと思われる一方で、縁起物でもある。蛇革の財布を持っていると金運が上がるなんて言ってな。うちのお婆ちゃんは蛇革の財布を持っていたぞー」

「なるほど」


 サクヤが相槌を打ってくれて話しやすい。大岡は指で宙に『巳』の文字を書く。


「蛇って生物は『巳』とも書けてな。これは『み』と読んだりもできるな。この文字は穀物が実る様子を連想させる。つまり、財を成すことを連想させるって訳だ。他には、蛇は弁財天の使いだなんて言われることもあって……」


 大岡が話をする中、二人のメイドは大岡が話しやすいように相槌を打ったりしてくれる。マリーは普段、この二人とどのような話をしているのだろう、なんて考えて……今は鑑定の途中だと、大岡は気持ちを改めた。


「……とまあ、蛇は金運を運んでくる縁起物として、ありがたがられたり、するわけだ。そんな蛇だから、神格化されることもある。この壺には、そういう神格化された蛇の力が宿っているんだろうな」


 とはいえ、これは呪物だ。メリットと同時に、デメリットが存在する。ありがたいだけのものではない。大岡はこの壺を見た時からずっと、不吉なものを感じている。今もだ。


「ここで、施設の職員さんから聞いた話を、ナガヒメちゃんから発表してもらうぞー」

「はい! 任せておいてー!」


 ナガヒメは大型犬みたいに元気いっぱいだなあ、なんて思いながら、大岡は彼女の発表を待つ。ここの職員から配信前に聞いた話の一部を、大岡は紙のメモにまとめている。


「まず、カサカサとした音を施設内で聞くことが増えた。らしいねっ!」

「ふむ、続けてくれ」

「うん、それからっ! チッチってネズミが鳴くみたいな音がしたんだってね。ところで、マニアちゃん。蛇って鳴くの?」

「いや、蛇は鳴かない。けれど、これらの情報や、この壺の見た目から、この呪物の正体は予想ができるぜ」

「もう呪物の正体に見当がついてるの!? 流石だね! 天才じゃん!」


 ナガヒメの褒め方はやや大袈裟な気がするが、褒められることは嬉しいものだ。大岡は予想した名を発表する。


「この呪物の正体は、トウビョウだぜ」

「トウビョウ……あーね!」

「トウビョウ……」


 ナガヒメはその名を聞いてピンと来た様子だ。対して、サクヤの反応は小さい。サクヤは大岡が、その名を口にする前から、この呪物の正体には見当がついていたのかもしれない。もしかすると妹の方がより呪物に詳しいのかもしれないな。この二人がマリーと一緒にダンジョンへと行ってくれるなら、大岡の不安も少しは薄れる。


・トウビョウってなーに?

・三人だけ分かってる感じでずるいですぞ

・詳しい説明よろしく

・教えてマニアちゃん先生!

・俺たちも知りたいぞー


「……トウビョウってのは西日本の一部で信仰される神様だ。以前、マリーとのコラボ配信で紹介をしたオシラサマに近いものかな」


・なるほど?

・あっちは馬の神様でこっちは蛇の神様?

・こちらも信仰し続けないといけない系?

・厄介な匂いがするわね

・景気が良くなったって話をさっきしてたよね


「コメントにもあった通り、この呪物は信仰を続けなければいけないタイプのものだ。それで厄介なことに、この呪物はすでに、この施設に金運を運んで来ている。すでに、こことトウビョウとは切っても切れない関係になっているってことだぜ」

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