表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
22/50

国生みの矛(中編)

 大岡の言葉を聞いたトワは「なるほどね」と言って口許を緩めた。彼女のワクワクした感情が伝わってきて、大岡も気分が上がってくる。


「今回の呪物の正体、私にも分かったかもしれないね」

「そいつは良い。トワの予想が当たっているかを、今からやる実験で確かめるぞ」


・実験!

・実験だ!

・ドキドキ

・どんな結果になるのかな?

・いよいよ実験だね


「トワ、ちょっと実験を手伝ってもらっても良いかい?」

「もちろん。マニアの頼みなら喜んで」

「助かるぞ。トワにはその矛でプールの塩水をかき混ぜてほしいんだぞ」

「了解。任せて」


 大岡はトワと共にプールの縁へ向かう。そうして、トワが持っていた矛の先を水中へ下ろした。ゆっくりと矛を使ってプールの塩水をかき混ぜていく。


 かき混ぜられた水が渦を作る。塩の香りが昇ってくるように感じた。それから、すぐには、何も起こらない。矛で水をかき混ぜていき一分ほど経った頃、大岡は頷く。そろそろ良い頃合いだろう。そう考えて大岡は言う。


「トワ、矛を水中からあげてみてくれ」

「了解、これ結構重いね」


 トワがプールから矛を上げ、矛先から雫が垂れた。その時、水面に変化が起こる。水面に触れた雫が石のようになり、また雫が垂れると岩のようになった。雫が垂れるほどに、それは大きくなっていく。それを見た大岡は慌てて、トワに「矛をプールから離してくれ」と指示を出す。


「なるほどね。ただ、プールから離す前に塩水を払った方が良いだろう」

「トワ、何をする気なんだいっ?」

「まあ、見てて」


 大岡の見ている前で、トワが矛先を素早く降った。いくつもの雫が少し離れた位置に飛んでいき、水面に触れた場所から、石や岩が発生する。それらは水面に浮かび、見ようによっては小さな島のようにも見えた。


「……塩水の雫によって石や岩を発生させる矛か。いや、これはきっと一国ほどの土地を作ることもできるんだろうね」


 トワは雫の飛んでいった矛を持ち、プールから離れた。大岡は彼女についていきながら、先程の巧みな矛さばきに感心していた。やはり、トワの技量は素晴らしい!


・これはいったい!?

・陸地を作る能力!?

・ははーん? なるほど、そういうことか

・なるほどね

・日本由来の陸地を作る矛といったら、あれしかないわな


「……コメントを見る感じ、今回の呪物の正体に、ピンと来たリスナーさんも多そうだぞ。と、いうわけで、今回の呪物の正体を発表だ!」


 あまり、もったいつけるものでもないだろう。大岡は呪物の正体を発表する。


「今回の依頼品は……アメノヌボコ……日本神話に登場する国生みの矛だぜ」


・アメノヌボコ?

・アメノヌボコかー

・やっぱり日本神話由来だよな

・イザナギとイザナミだね

・ぬ? アマノサカホコじゃないの?


「コメントを拾うぞ。そう、イザナギとイザナミの神話に由来する矛がこれだ。で、これとアマノサカホコとの関係はまた後で解説していくぞ」

「と、なると先に解説することがあるんだね?」


 トワに聞かれて大岡は頷いた。色々と話したいことはあるけれど、それら全てを同時に話すことはできない。歯がゆい気持ちもあるが、一つ一つ話を進めていこう。


「まず、アメノヌボコは日本神話に登場する矛だ。呪物というよりも神聖な物としてのイメージを持つ人も多いだろうな」

「呪物ではないの?」

「そこは、私なりの解釈で話をさせてほしいんだ。呪物、というものは何かを害するというよりも、まじないや、呪術的な力を持つ道具、としても考えられる」

「なら、この呪物はデメリットを持たない?」

「いいや、トワ。呪物である以上は、メリットとデメリットが同時に存在するはず。その辺のことは後で、アマノサカホコの話と一緒に、語らせてもらうぞー」


 大岡にとってトワとの会話は楽しい。もっと、呪物についての話をいっぱいしたい。話をすればするほど、話が終わりに向かっていくのが感じられて、それが寂しい。それでも、今は配信を見てくれている人々のためにも、大岡は鑑定士として離すべきことを語っていく。


「さて、話を進めるぞー。イザナギとイザナミの国土創生の物語についてだ。古い時代、まだ日本列島も無かった頃だ。前述した二柱の神はアメノヌボコを使って海の水をかき混ぜたんだ」

「つまり、プールを塩水で満たしたのは海の再現だったのかな?」

「そうだぞ! トワ、流石だぞ」


 トワの察しの良さには助けられる。ありがたいと思いながら、大岡は話を続ける。


「矛で塩水をかき混ぜて、矛から滴り落ちて島となる。これは……センシティブな行為のメタファーだろう。ちょっと配信サイトの運営さんから怒られるかもしれないから、この辺を詳しく話すことはできないんだ。すまない……気になった人は各自調べてくれ」

「あー、うん……察した。そういうメタファーね」


 大岡が言葉を濁した意図をトワは察してくれた。とりあえず、次の話に移るべきだろう。気持ちを切り替えて、大岡は、後に回していた話に触れる。


「そういうわけで、凄く簡単に日本の創生神話とアメノヌボコについて話したぞ。で、これから話すのはアマノサカホコについて。この呪物のデメリットについて、触れていくぞー」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ