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干からびた願望機(中編)

「ひとまず、この謎の物体を仮に……物体Aと名付けるぞ」


・ひとまずね

・それにしてもこれなんだろう?

・なんらかの呪物ではあるんだよね?

・マニアちゃんの鑑定に期待

・ドキドキ


 大岡はリスナーたちのコメントから期待を感じていた。今、彼女もワクワクしている。これから彼女は不明な呪物に挑む。物体Aの正体を明らかにすることに使命感を覚えていた。


「改めて注目するのは、物体Aの長さだね。これ棒状で、見たところ四十センチってところだ。んで、四十センチっていうと、思いつくものがない?」


・四十センチで?

・思いつくもの?

・なんだろう?

・わからん

・A4用紙よりちょっと大きいくらいか?


「そうだね。A4用紙は縦幅約三十センチだから、それに十センチ足した長さだよ。で、四十センチなんだけど……これはおおよそ……私の肘から指先くらいの長さだねー」


・分かるかっ

・肘から先とか分かんないよー

・難問で草

・マニアちゃんそりゃないよ。腕の長さなんて人によって違うもの

・初めての配信で配信者の肘から先の長さなんて当てられるわけないんだよなー


「ひひひ、難問だったかな? んじゃー、ここで雑な学と書いて雑学! 人間の肘から指先までの長さは、だいたい身長の四分の一くらいなんだぞー」


 当たり前の話ではあるが、腕の長さは人によって差が出る。けれど、人体の縮尺は大体同じ。これで大岡は、ピンと来た。彼女はこの直感に自信を持っている。


・へえ! 肘から先の長さって身長の四分の一なんね

・そうなの!?

・あー昔学校の先生が言ってたかもしれん

・てことはマニアちゃんの背丈は百六十センチくらいなんか

・百六十を四分割して四十センチってわけね


「ひひひっ! そそそう! だから私はこう思った。これって肘から先のミイラなんじゃないかって! そう思うと先についてる三又は指のようにも見えるぞー!」


 大岡は自身が興奮しすぎているのを感じていた。どうも早口になっている。気を付けなければと、一旦深呼吸。


・急に深呼吸しだして草

・だ、大丈夫!?

・いきなり深呼吸しだす女

・さては残念美人か?

・てかミイラ!? それミイラなの!?


「……うん、大丈夫。話を続けるね。そそ、私はこの物体Aをミイラだと思った。ミイラってね。独特な香りがするんだぞー。」


・なんでミイラの臭いを知ってるんだ……?

・ミイラの臭いを知る女

・さっき匂いについて話してたね

・どんな匂いと言ってたかな?

・三本指のミイラか。なんかやだなー


 ミイラと予想があってからリスナーたちの反応が良くないことを大岡は気にしていた。それに、ミイラの匂いを知っているのって変だとか言われたことも気になる。彼女にとってそれはちょっとショックだけれど、鑑定を続けていく。


「え、えっとな。ミイラ……特に古代エジプトのものは独特の匂いがして、高級スパの匂いとでも言えば良いのかな……木質で甘く刺激のある香りなんだぞ。これは古代エジプトのミイラが作られる際に、樹脂などで防腐処理がおこなわれていたから……だとか」 


・なるほどー

・ということは古代エジプトに由来する呪物?

・ファラオの腕とかそんな感じか?

・俺には全く分かんないぜ

・でも、ちょっとずつ正体が見えてきたわね


「そう、ちょっとずつ正体が見えてきた気がする! でも、正体を見間違うと、大変なことにもなりかねないから気を付けないとだ。んで、呪物について、ちょっと説明だぞー」


 配信を見てる者たちが皆、呪物について詳しい訳ではない。だから必要な説明はしておくべきと大岡は考える。でないと相手の分からないことをベラベラと喋ることになりかねない。大岡が白熱しすぎて、相手がついてこられない。なんてことは過去にたくさんあった。彼女が特に気を付けるべきことだ。


「呪物ってのは大抵が元になるストーリーを持っている。ついでに言うとダンジョンに現れる魔物にも元となるストーリーがある。ゴブリンやコボルトなんかも、そうなんだ。それで、この物体Aもその例にもれず、元の物語を持っているはずなんだぞ」


・元となる物語

・ミイラの腕が出てくる話?

・俺、エジプトの話は詳しくないんだ

・なんだろう?

・三本指のミイラが出てくる話?


「おそらくだけど、これは古代エジプトとは関係が無い。人のミイラですらない。特徴的な三本の指……そこから考えて、こいつの正体は……」


・正体は!?

・今、明らかに!?

・知っているのかマニアちゃん

・いよいよ

・わくわく


「こいつの正体は……猿の手……だと思うっ」


 言わずと知れた怪奇小説の名作に由来する願望機だと、大岡は思っている。だからここは盛り上がりどころだと、彼女はそう考えていたのだが。


・猿の手?

・なーんかどこかで聞いたことがあるような?

・思ったより凄くはなさそう?

・猿の手のミイラ……凄いのか?

・マニアちゃん解説頼む!


「ありゃ? 思ったより皆の反応が薄い。ならば、説明してしんぜよう。すっごく端的に語ると、これは願望機だよ。三人の願いを、それぞれ三つまで叶えてくれる」


・は? 願望機まじ?

・つまり、魔法のランプってこと!?

・めちゃくちゃ凄いアイテムじゃん!

・お金を頼んだらお金が出てくるってこと!?

・呪物だから、なんらかのデメリットもついてくるんでしょ? けど願望機か。マジだったらスゲエ!


 大岡が欲しかったのはこういう反応だ。それと、大事なことを話しておく必要がある。呪物を扱うのは危険な行為だ。その鑑定や紹介にも責任がともなう。それを、大岡は理解しているから。


「コメントにもあったけど、これは呪物。願望機だからといって、考え無しに使うと大変なことになるんだ。あらゆる呪物にはデメリットがつきまとう。要注意だぞ!」

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