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トワとマリーとファミレスで

 大岡は自宅近くのファミレスへやって来ていた。トワから「たまには一緒に食事でも」と誘われて、二つ返事で了承したのだ。大岡が返事をした直後に「マリーも一緒だけど良いよね」と言われたのには驚いてしまった。


 大岡たち三人が、皆で同じ場に集まるのは大学の卒業式以来になる。大岡がトワかマリーのどちらかと会う機会はあったのだが、なぜか三人で会うことが無くなっていたのだ。で、あるからこそ、大岡はこの機会が凄く嬉しい。


 ファミレスで席を取って、待つこと数分。トワとマリーもやって来て三人が揃う。ひとまずドリンクを用意してから話が始まった。最初は互いの近況を話し合うところから始まり、そのうちに、話題は最近発見された、ダンジョンの新ルートのことになる。二人が実力の確かな探索者だと知っていても、大岡には不安があった。


「えっと……深淵の新ルートにはやっぱり二人も向かうのか?」


 大岡の問いに対して返ってきたのは肯定の返事。トワとマリーの二人が、より危険かもしれない場所へと向かう。そう考えると、大岡は二人を止めたい気持ちもある。けれど大岡には、その権利は無い。二人が決めたことなら、大岡には止められない。


「私は……二人のことを応援しているぞ。私にできることは鑑定くらいだけど、それでも手伝えることがあったら、なんでも言ってくれよー」

「ああ、ありがとう」

「いつも助かってますわ」


 トワとマリーから鑑定士としての力を認められていることは、凄く嬉しい。けれども、大岡にはダンジョンで戦う力は無い。だから彼女はトワとマリーの冒険についていくことができないのだ。それは寂しくて、同時に悔しい。


 やがて注文した料理が運ばれてくる。三人で食事をしながら話をするのだが、ダンジョンについての話題もそのうち大岡が知るものばかりになってきた。大岡が話題に困ってきていることを察したのか、マリーが「配信は楽しくやれていますか?」と聞いてきた。大岡にとっては、その言葉が助かる。


「配信、楽しいぞー。これからもやっていけそうだ。この前の配信ではありがとうな。マリー」

「ええ、どういたしまして」

「トワもな。初回配信の時、ありがとう」

「マニアが楽しく配信できてるなら良かったよ」


 大岡は、確かに配信活動を楽しく感じている。最初はトワやマリーたちに置いていかれたくなくて、始めた配信活動。それが今では新たな楽しみになっているのだから、人生は分からないものだ。


 配信活動を始めて、少しは二人に近づいた感覚がある。けど、それは本当に? 二人との距離が近くなったと感じるのは、錯覚かもしれない。そう思って不安は大きくなる。


「……マニア。私たちは近いうちに、またダンジョンの深層まで潜るけどさ」


 トワが話し始めて、大岡は「うん」と頷く。トワはリラックスした調子で、話す。それは大岡が不安を募らせないように、気を遣ってのことかもしれない。そう思うと心が暖かくなるけれど、実際がどうかは大岡には確かめようがない。だからこそ大岡は心に良いものを信じたいのだ。


「マニアの配信、楽しみにしてる。ダンジョンに潜っていたら、その時は配信を見られないけど、アーカイブは観るよ」

「私も楽しみにしていますわよ。マニアさんの配信を」


 トワとマリーが配信を楽しみにしてくれている。そんな二人の友人のために大岡がやるべきことは明らかだった。彼女たちが無事に帰ってくることを信じる。そして、彼女たちが帰ってきた後のために、楽しい配信をするのだ。やることが決まれば、大岡に力が沸いてくる。使命感……とまではいかないが、確かなやる気が沸いてくるのを、大岡は感じていた。


「任せてくれ。きっと、二人も楽しめるような配信をやっていくからさ!」

「そのいきだよ。何度も言うけど、応援してるからね」

「頑張ってください。マニアさん。良ければ差し入れとか、しましてよ」


 二人の応援を嬉しく思いながら、大岡は配信活動のコツなどを訪ねてみる。ダンジョン探索と呪物の鑑定で分野は違うが、配信者としては、トワたちの方が先輩だ。教えをこうことができるのなら、積極的にそうしたいと、大岡はスマホのメモアプリを起動した。


「……お! 勉強熱心だね。そしたら、私たちで教えられる範囲のことは教えようか」

「それでも、何かマニアさんの役に立つことは伝えられるかもしれませんわね。そうと決まれば勉強会ですわ」


 新たにドリンクとサラダを準備して、大岡たちは話し合う。こうして三人で勉強会を開くのは、本当に久しぶり。学生時代に戻ったような気分になる。大岡にとっては間違いなく有意義な時間だった。


 大岡は二人に、配信活動のコツを聞いたり、企画したアイデアを相談したりする。そうこうしているうちに時間が経ち、やがてお開きの時間になった。大岡は、いつまでも三人で一緒に居たかったけど、そういうわけにはいかない。三人がそれぞれにやることがある。


 大岡の配信者としての気持ちが、より確かになる一日だった。

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