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干からびた願望機(前編)

「こんばんはー。新人配信者の大岡マニアだぞー。上手く配信できてるかな?」


 配信画面に映るのは目の下にクマを持つ歯並びの悪い女子。それでも顔立ちは整っていると言えて、一般的に見て美人に分類されるのだろう。彼女は今、初めての配信に緊張していた。


・こんばんは

・こんばんはー

・初めまして

・友達の紹介で来たよー

・こんばんは。部屋綺麗ですね


「ひゅひひっ! 部屋が綺麗。そうだろー。初めての配信ってことで片付けてみたんだ。気合い入れて、配信していくね」


 大岡の部屋は片付いている。ように見える。だがその実態はベッドの下に多くの物を押し込んだだけ。それでも、彼女にしてみれば片付けを頑張った方。彼女は配信を始めた時から、そのことを褒めてもらいたくて、たまらなかった。


「えっと、そうだな。初配信ってことで、まずは皆に自己紹介だな。私、大岡マニアだ。マニアちゃんって呼んでほしいぞー。これでも特級呪物鑑定士の資格を持ってるんだ」


・マニアちゃん

・大岡マニアちゃんね

・特級鑑定士って凄いの?

・応援するよ! よろしくねー

・特級……なんか凄そう


 大岡は、リスナーたちに特級呪物鑑定士の凄さをいっぱい説明したい。けれど人間関係には謙虚さが必要だ。大岡はそこに気をつけて、鑑定士について話す。


「呪物鑑定士ってのは、その名の通りの仕事なんだ。三年前東京に発生したダンジョンは皆知ってると思う。多摩に発生した大穴。そこでは時に、特殊なアイテムが見つかる。人々はそれを呪物と名付けた。私はそれを鑑定するってわけ。特級は最高ランクの鑑定士なんだぞー」


・へー。そうなのね!

・呪物は知ってる。高値で売れるんですよね

・鑑定士にランクがあることは初耳

・俺もそのうちダンジョンで呪物を見つけたいっす

・ダンジョンの話だと探索者ばっかりが話題になるからねー


「うん、どうしてもダンジョンの華は探索者だからな。でも、鑑定士も重要な役割だぞ! 探索者たちが使う呪物を預かって、それに、どんなメリットとデメリットが存在するかを調べる。やりがいはあるぜー」


・呪物の調査ってことかー

・裏方仕事だね

・マニアちゃんはその裏方のトップ層ってわけだ!

・けど呪物に触れるって危険じゃない? 実入りが良いの?

・マニアちゃんって凄い人?


「ひゅひひ。凄い人って言われると、照れちゃう。確かに危険な仕事だよ。部屋で仕事してるとはいえ扱ってるのは呪物だからなー。それでも、まだまだダンジョンから呪物は見つかるし、実入りも良い。私は呪物鑑定士をやめるつもりはないぞ」


・はえー、なんかスッゴい世界

・実入り良いんだ? 良いなー

・鑑定士、ちょっと興味あるかも

・呪物のメリットとデメリットが分かってれば探索者さんたちも助かるよね

・強力な呪物があればダンジョンの魔物との戦いでも有利になるからな。鑑定士も重要な仕事だよ


「……それじゃ、今夜もそろそろ鑑定の仕事を始めていこうと思うよー。ただ、お仕事の前に、応援メッセージが届いているから、見てみよーぜ!」


・応援メッセージ?

・誰からのものだろう?

・ワクワク

・意外な大物だったりして

・どんなメッセージかな?


 大岡は机の上のパソコンを操作する。画面に別のウインドウが出た。そこに映るのは髪を後ろに束ねて、ほがらかに笑うの女子の姿。彼女を見ると大岡は嬉しい気持ちになる。


・特級探索者のトワ様じゃん!

・王子様系美人探索者!

・えっ! マニアちゃん。トワ様と繋がりあるの

・トワっていったら特級探索者の中でもトップだよ!

・マニアちゃんの交友関係凄そう


「トワは私の友人だぞ。メッセージ動画再生するね」


 大岡がメッセージ動画を再生すると、画面の中の女子が動き出す。動く彼女の姿を見ると大岡もウキウキしてくる。


『……やあ! マニアちゃん。トワです。元気してる? それと、今度遊びに行っても良いかい? と、前置きはこれくらいにしといて、配信を始めるそうだね。おめでとう。そういうわけで、私から、第一回の配信に贈り物をさせてもらった。おそらく危険な品だけど、マニアちゃんならいつものように、上手く鑑定してくれるって信じてる。それじゃあ、また』


・うおーマジのトワ様だー!

・トワ様最高

・贈り物ってなんだろう?

・トワさまー

・贈り物気になるね


「以上、トワからのメッセージでしたー。それと、贈り物のこと気になるよな。こちらは、まじにトワから貰ったもので、鑑定が終わったら、売るなり使うなり、自由にして良いってさ」


 大岡は語りながら、机の下に隠していたそれを取り出した。紙の包みで梱包されたそれは、四十センチほどの長さだ。大岡は呪物の鑑定を始める時はいつもドキドキする。下手に扱えば、破滅する可能性もあるからだ。


 包みが解かれる。そこには、干からびた木の枝のようなものがあった。一方の先は三又になっている。今回も呪物の正体を探り、当てる。それは爆発物を扱うかのように緊張する時間だ。


「ふむ。匂いは……木質……香辛料……甘味? 不思議な香りだね。なんとなく、これがなんであるか見えてきたかも」


・もう!?

・全く分からん

・杖かな?

・棒状ということしか分からん

・呪物鑑定士のお仕事始めて見ます!


「さて、鑑定を続けますか! この呪物について、調べていこー!」

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