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神話術師と童男殺し  作者: 綾高 礼
一日目 六月八日

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0-2 人間になりたがった神の童β


 目が覚めた時には知らないベッドの上だった。

 私の隣には、メイドさんがいた。

 心配そうな表情から一変、眼を覚ました私を見てすぐさま部屋を出て行った。

 部屋。そこは私の知らない大きくて広い部屋。

 余計な物がないから広く感じるのか、元々部屋が広いのか、それとも私が小さいだけなのか。


 あの女の人がやって来た。

 キリッとした女の人の顔が実は少しだけ怖かった。けど私の頭を撫でてくれた時の優しい表情は安心出来た。

 涙が溢れ出る。

 なんでだろう。おとうさんとおかあさんが居ないから。知らない場所だから。

 女の人に優しくされたから。なんでだろう。


「君の名を教えて欲しい」


 見た目通りの綺麗な声だった。


「……月歌。九歳……月歌……九さ」


 女の人は何故か私を抱きしめてくれた。


「……月歌……綺麗な名前だ」

「ん……」


 女の人の腰に手を回そうとして、やめた。

 だって本当のおとうさんとおかあさんの顔が浮かんだから。


「月歌、よく聞いて。ここはあなたの知らない場所。分からないことだらけで不安だと思う。だけど私がいる。それにこの人は宮田さん。使用人……いや、メイドさんだ。凄いだろ、思い存分頼りにしていい」

「……ん……」


 宮田と呼ばれたメイドさんは一礼した。


「よし、一緒に食堂に行こう」

「……食どう……?」

「え、ああ。ご飯を食べる場所があるんだ。そうか、後で一緒に館内の探検をしよう。結構内の家は広いんだ」


 女の人は不器用に笑っていた。でもその影にはどこか儚さを感じる笑顔だった。


 ***


 十一歳になった。

 私は女魔術師(見習い)をしている。

 私は雪がよく降り積もる北国で生まれた。

 両親共々、一般者であり、表世界の住人として私を育ててくれた。

 幼稚園に、小学校に通い、人としての幸せを生を全うに歩んでいくも、悲劇は起こったのでは無く、突如として仕掛けられた。


 都市部を中心に起きた震度九.一の大震災。

 その被害者は、死者・行方不明者含め凡そ二万五千人。

 プレートが起こす自然の揺れとは違い、地震対策を考慮された建築物は、簡単に崩れ落ちた。

 マンションの七階で眠っていた私を庇うように両親は、瓦礫に押しつぶされて亡くなった。

 この一件以来、私は魔術師の家系である皇家の養子として引き取られた。


 あれから二年。

 私の人生は百八十度以上変わってしまった。


 赤の他人でしかなかった人が家族になり、その家は凄い豪邸で何人もの使用人さん達も出入りする。

 そして私には、義理の弟が産まれた。名は響希ひびき。凄く小さくて可愛い男の子。

 何よりも私の人生を変えたのが――『魔術』というものだった。


 テレビなんかで魔法少女がよく使う魔法というフィクションの代物が、ノンフィクションになってしまった。

 これには最初素直に驚いてしまったが……もう慣れた。

 もちろん、魔法少女みたいに華やかな代物でもなく魔術はもっと地味だ。私はその魔術の適正があるとかで、日々稽古を積んでいる。


 特にそれが嫌でもなかった。何より昔の事を考えないようにするには魔術や体術、剣術の稽古は丁度良かった。

 そんな稽古の休憩時、叔母の恵子とはよく話した。

 世間話から魔術世界の話しまで色々と。


 私はじっと黙って、その話しを聞いているのも嫌いではなかった。

 母と父と叔母は、魔術機関という場所に勤めているらしい。

 三人とも多忙な人達で、よく家を空けることが多かった。だから使用人の人達と一緒に、響希の面倒を見ることも多かった。


 私には宮田さんという専属の使用人さんがいる。几帳面で真面目な人だが、養子である私にもとても親切にしてくれた。

 少し過保護すぎる所もあるが、それを含めても素直に嬉しかった。


 だが同時に、私だけこんな平凡に生きていていいのだろうか?

 そう思う事が日に日に強くなっていった。


 おとうさん、おかあさん。

 私はどうすればいいの。

 どうやって生きていけばいいの。

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