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神話術師と童男殺し  作者: 綾高 礼
その後……

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50/50

0-5 人間になりたがった神の童ε


 そこに希望の光は――無い。

  そこに在るのはただ――絶望だけ。


 黒雲が日中の空を埋め尽くす。

 燃える火種。昇華する火花。

 土と埃。血と涙。大声と悲鳴。

 驚愕、不安、恐怖。


 高層マンションが、瓦礫の山となって崩れる。

 崩れた先にいるのは、大きなわたし

 わたしは、その光景をただボーっと眺めていた。何を考えるでもなく。正確には、考えたくなくて。


 ***


 お父さん。お母さん。

 いつも私と響希を第一に考えてくれて、優しくて大切にしてくれた。

 私もそんな二人がとても大好きだった。

 少なくとも当時十九歳だった私は、そうやって『ジゴク』は、長く続いていくものだと思っていた。

 確信に近い希望的観測だったのかもしれない。

 今思えば何故そのように安易的に信じられたのだろうか。

 そんな『ジゴク』は、二人に、皆に受け入れてもらえる事で、簡単に無へと変えてしまう脆い時間だっただけなのに。


 ***


 ―――街が燃えていた。

 熱かった。暑かった。


 ―――人があちこちで倒れている。

 怖かった。悲しかった。


 ―――頭から生暖かい血が流れた。

 痛かった。気持ち悪かった。ボーっとした。


 ―――仲間たちは…………動かなかった。

 分からなかった感情が。


 ―――分からなかったからこの手で沢山の人を殺した。

 もう限界で私は倒れてしまった。


 ―――そこで残りの敵である術師が出てきた。

 私はそこで自分の中にある復讐心に初めて気付いた。


 ―――敵は「一体誰が、こんなこと……」と呟いていた。

 意味が分からかった。


 ―――敵のリーダー格であろう者が私に気付いた。

 血だらけの私を見て驚いていた。


 ―――敵は私をじっくりと観察する。

 痺れる手足がバチバチッと音を立てる。


 ―――やがて敵は私に手を伸ばしてくる。

 動くな、貴様は一体何者だと言っていた。


 ――――私は―――。



 ――――――『神話術師』と言った。


 黒雲が唸りを上げる。

  稲妻の轟音。

   紫電の閃光。

 天界の導きは、わたしの運命を――天秤に掛ける。



〈了〉

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