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翌日

 ひょんなことからティオとパーティーを組むことになったその日、俺は冒険者になるための装備を買ったり、鼻血で汚れてしまった服の代わりを買ったりした後ティオと同じ宿で泊まる事になった。買い物の時や宿での受付の時にじろじろと見られたが、ティオがいたおかげか変に声を掛けられることは無くとても快適な買い物でした。


「ふわぁ……おはようティオ」


「っ!!??」


 森から始まった異世界生活の初日からベッドで眠ることが出来たのはとても嬉しかった。野宿を覚悟していたがふかふかのベッドで寝て体の疲れをある程度取る事が出来た。


 ただ異世界転生という非現実的なことが起こったせいかまだ体の疲れを完全に取りきれたわけではない。まだ眠気が残っているが今日は冒険者の登録をしに行かないといけないため軽く身支度を整え、宿屋の1階に併設されているレストランへとやってきた。


 眠気をあくびで発散しながら先にテーブルに座っていたティオの下へ向かい挨拶をする。のだがティオは俺の姿を見てまるで女性の裸でも見たと言わんばかりに驚いた表情を浮かべ顔を背ける。



 ……ね、寝起きのふにゃふにゃしたノアがわいいいいいい!!今すぐベッドに連れてきたいいいいい!!


 はい、お察しの通りティオはノアの可愛さにやられているだけである。男性経験が皆無のティオにとっては寝起きの少しふわふわしたノアの姿はとても可愛く、今すぐにでも襲い掛かってしまいたいほど脳がチカチカとし始めている。


「……ティオ?」


 はっ!いけない、あまりの可愛さに持っていかれるところだった。流石に今この場で本性を現すとノアは猫の様にどこかへ行ってしまう。た、耐えろ……私の理性!


「んんっ!!お、おはようノア。良く寝れたか?」


「うん、おかげでぐっすり寝れたよ」


 ティオはその後何とか理性を手放すことなくノアと朝食を食べ、冒険者ギルドへ向かった。これからどのくらいティオの理性が持つのかは疑問である。






「おい、また赤い悪魔があの黒髪を連れてきてるぜ?」

「あれ絶対寝た奴だよな?」

「はぁ……どうせずっこんばっこんしてきたんだよ」

「羨ましい……」


 冒険者ギルドに入ると昨日同様ほぼ全員からの視線を浴びることになる。しかも今日は昨日と違って元気だし冷静さを保つことが出来ている。そのため冒険者たちのヒソヒソ話も多少聞き取ることが出来た。うん、ティオと寝てないからね?昨日は全然一人で熟睡してたからね?


「じゃあまずは冒険者の登録から始めよう」


「うん、受付に行けばいいんだよね?」


「そうだ。ああそれとこれを受付嬢に渡してくれ。冒険者の登録にはお金がかかるからな」


 ティオから銀貨2枚を貰った俺は日との並んでいない受付カウンターの所へと向かう。ちなみにこの世界の貨幣についてなのだが銅貨1枚が100円、銀貨一枚が1000円、金貨1枚が1万円と同等の価値があるらしい。他にも白金貨という中々お目にかかれない硬貨もあるらしいがなんとそのお値段は1枚100万円。白金貨が一枚あれば生涯食い扶持には困らないんだとか。


「すみません、冒険者の登録をお願いします」


 とまぁお金の話は一旦置いておいて今は冒険者の登録だ。これで晴れて俺も冒険者になれる、早く一人でお金を稼げるようにならないといけないからね。


「わぁかわいい……じゃなくて冒険者の登録ですね、少々お待ちください」


「あ、はい」


 カウンターに立っていた男性は口に手を当て心の声を漏らす。貞操観念が逆転しているからしょうがないのだがこの人の動きや喋り方の違和感がすごい。男が女の子っぽい動きをするのが普通なんだろうけど……な、慣れないなぁ。 


「ノアさんは読み書き出来ますか?」


「多分できると思います」


「かしこまりました。それではこちらの注意事項等を読んだら下の空欄にお名前をご記入ください」


 昨日の買い物の段階で俺はこの世界の文字を読めることが判明したため、おそらく書くこともできると思う。異世界転生した特典なのかよく分からないが読み書きが出来るのはとてもありがたい。


 俺は良くある注意事項を呼んだ後に自分の名前を書く。注意事項の内容は冒険者は基本自己責任だよ、冒険者同士で喧嘩は良くないよ、クエスト失敗したら違約金払ってねというよくある内容だった。他にも細々としたことが書かれていたがこの三つを覚えていれば何とかなるだろう。


「書きました」


「はい、ありがとうございます。自己紹介が遅れましたが僕はフィユと言います。何か困ったことがあったらすぐに相談してください、男の子同士仲良くしましょう」


「よろしくお願いしますフィユさん」


「それではギルドのシステムを軽く説明した後にギルドカードの作成に映りましょう」


 フィユさんは分かりやすく冒険者やギルドについての話をしてくれた。内容はよくあるもので冒険者ランクについてと冒険者ギルドが行っているサービスについてが主な内容だ。分かったことはティオが相当の実力者であることだ。本当にティオって強かったんだな……。


「それとノア君はティオさんとパーティーを組む予定なんですよね?」


「そうです」


「その場合ですとFランクであってもAランクの二個下、つまりCランクのクエストを受けることも可能です。」


「あ、そうなんですね」


「はい、ですがその分危険も伴いますのでその点を考慮したうえで受注してくださいね」


 初心者がいきなり中ボスと戦ったらいくら上級者が居ても怪我をする可能性は高い。そもそも俺は魔物と戦うどころか剣を持ったことが無いど素人なため、このシステムを利用する日はおそらく来ないだろう。


「以上で説明は終わりです。質問が無ければギルドカードの作成に移りますが大丈夫ですか?」


「はい、フィユさんの説明とても分かりやすかったです」


「ふふ、ありがとうございます。それでは少々お待ちください」


 嬉しそうに笑みを浮かべたフィユさんは奥の方へと行き、何も書かれていない名刺ほどの大きさのカードと針、そして手のひらサイズの小さなツボを持ってくる。


「ギルドカードの作成には登録者の血が必要になります。なので少し痛いと思いますがこちらの針を指に当て頂くことになります」


「うっ……そうなんですね」


 先端恐怖症……というわけではないが俺は針が怖い。注射されるときの事を思い出して鋭い針を見るとどうしても体が固まってしまう。


「大丈夫です、しっかり傷薬は持ってきていますので」


「で、ですよね……」


「もしよかったら僕がやりましょうか?」


「あ、それじゃあお願いしても──────」


「いや、ここは私がやろう」


 いきなり後ろから声がしたため、体をびくりと揺らしながら振り向くとそこにはティオが立っていた。


「ティオ?まだ冒険者登録は終わってないよ?」


「見たら分かる。ノアが針を指に刺すのを怖がっている事も」


 な、何この人……普通にストーカー見たいで怖いんですけど……。


 後ろで待っているかと思いきや俺とフィユさんさんのやり取りをしっかりと見聞きしていたことが分かり俺はティオのことを少し気持ち悪いと思ってしまった。掲示板を見るとか他の冒険者と雑談するとかで暇つぶしすればよかったのに……。


「駄目ですよティオさん、ティオさんがやったらノア君の指が大変なことになっちゃうじゃないですか」


「そんなことは絶対にしない!私が優しく、それはもうトラップを解除する時みたいに慎重にやる!」


「ええと……?」


「ティオさんはギルドカードを登録する時この針を指に思いきり刺してすごい量の血を出したんですよ。1滴2滴で良いのにギルドカードを真っ赤に染め上げましたからね」


「いや!あれは昔の話であって今の私は──────」


「フィユさんお願いしても良いですか?」


「はい!もちろんです!私ならちょっと痛いくらいで済ませますから!」


「ぐぬぬぬぬぬぬ」


 フィユさんの話を聞いてティオに頼むのは馬鹿かドMかのどちらかだろう。こっちは針が怖いって言ってるのちゃんと聞いてたのかなぁ?




「わぁ…ノア君の手すべすべですね!それにすごく綺麗だし……羨ましいです」


「く、くすぐったいですよフィユさん」



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