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お誘い

「ごちそうさまでした。ふぅ……お腹いっぱい」


「ノアは小食なんだな」


「うん、あんまり胃袋が大きくないんだ。ごめんねティオ……こんなに頼んでくれたのに」


「いやいい、手のついてない料理はそこら辺に居る奴にあげればいいさ」


 何と気前が良いんだ……お金があるって言ってたけど本当にお金持ちの人なんだなぁ……。


 冒険者という職業がどれほど稼げるかは分からないが、ティオはおそらく上位数%の稼ぎ頭なのだろう、この人に助けて貰ったのってかなり運が良かったんだな……。


「それでだ、ノアはこれからどうするつもりなんだ?」


「えっと……ど、どこか働ける場所を探すとか?」


 真剣な眼差しを向けられた俺はふんわりとした内容の言葉を発する。はっきり言ってしまうと俺はこれからどうするべきか、どうしたらいいのか想像できない。右も左も分からない場所に放り出されてすぐに行動を起こせるほどの決断力と行動力は持ち合わせていないのだ。


「確かにそれが一番安全だが、ノアはお金を持っていないし護身用の装備も無い。そんなノアが街を一人で歩いていると先ほどの様に絡まれ、最悪どこかに拉致される可能性だってある」


「それは……」


 無いとは言い切れない、何故ならここは日本の様に安全な国ではないからだ。刃物を持ち、戦うのが日常の世界で何も持たずに歩くのはただの自殺行為である。もしこれが地球の様に貞操観念が普通であればそのリスクは低かったかもしれないが、この世界は貞操観念が逆転している。


 女に飢えた男が無防備な女を襲うように男に飢えた女が俺みたいな男を襲う世界。さらに悪いことに防犯カメラというものは存在せず、路地裏で何かをされても誰かに助けてもらえない確率の方が高い。


「そこで提案だ。もしノアさえ良かったら私と一緒にパーティーを組まないか?」


「え、でも俺は戦ったことないし居ても迷惑を掛けちゃうだけだよ?」


「心配はいらない、こう見えて私はAランク冒険者だ。それにノアはいるだけで私の士気が上がる、それだけでも十分すぎるほど価値はある」


「そ、そうなの?」


「そうだ。頑張れって言って貰えるだけで元気は溢れるしご褒美をもらえるとさらにパワーアップするぞ」


 そんな子供みたいな……まぁでも可愛いマネージャーが居ればモチベーションが上がるって運動部の友達も言ってたし、それと似たようなものなのかな?


「私の強みは他にもある!お金は余るほどあるから他のパーティーよりも多く報酬をノアに渡すことが出来る。さらに福利厚生もバッチリしている。安全は私が保証するし、宿代だって私が払おう。日々の食事に関しても私がお金を出すし、装備品だって一から買い揃える!」


 と思ったら今度は会社の面接で自己アピールをする人みたいになってる!?話を聞くだけだとめちゃくちゃ好条件に聞こえるけど「アットホームな職場!」みたいな雰囲気を感じてしまう。


「そしてA級冒険者である私が冒険者としてのノウハウや魔獣の倒し方を丁寧に教えよう」


 あ、それはちょっと気になるかも。異世界に来たんだったら戦ってみたいし、怖いし痛い思いはするかもしれないけど、彼女はA級冒険者だ。Aランクの上にどのくらい上がいるかは分からないが漫画やラノベ的に見ればティオはかなり強いはずだ。


「どうだろう?私のパーティーに入らないか?」


 好条件……あまりにも好条件!だが本当に彼女を信頼して良いのかという一抹の不安が残る。甘い話には裏がある、もしこれでティオについていったら監禁されたとかどこかに売り飛ばされたとかになったら流石に笑い話では済まない。……でも今のところティオが一番まともに見えるし信用できそうなんだよねぇ……。むむむ、ここは思い切って頼ってみよう!頼らなかったらどうせろくな事にならないだろうし!


「その……お世話になってもいいです……か?」


「かっ……まわないぞ」


 ノアの上目遣いにティオは一瞬飛びかけたが会話を途切れさせないために何とか意識を繋ぎ止める。


「ありがとうございます!お世話になります!」


 この日以降、ティオは冒険者ギルド内で大きな注目を浴び続けることになる。あの赤い悪魔がついに男を……しかもこの世で一番と言っても過言ではない程可愛い男を手に入れたからだ。これからしばらくの間ノアは居心地の悪さを感じながら生活をすることになるのだが……これはまた別のお話。


「それじゃあ早速服と装備を買いに行くとしよう。他に欲しいものがあったら遠慮しないで言ってくれ、大抵のものは買えるからな」


「う、うん……ありがとティオ!」



 ぼ、冒険者頑張ってて良かったー!


 ノアとパーティーを組むことが出来たティオの脳内ではお祭りが開催されていた。ついに理想の男性と出会い、その男性をパーティーに誘うことが出来たのだから馬鹿みたいにテンションが上がっても無理はない。


 これからは一緒に冒険したり、買い物をしたり、遠出してみたり、そして……うへへへ。あぁ、人生って最っ高!これからの冒険者ライフはすごく色が溢れたものになりそうだなぁ……。


 

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