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腹が減ってはなんとやら

 ティオとの遭遇、ティオがどんどん残念になっていく様子を書いていこうと思います。


「……あの!助けてくれてありがとうございます!!」


 ティオと呼ばれた女性を見た女冒険者達は蜘蛛の子を散らすようにどこかへ逃げていってしまった。3人がかりでも勝てないと判断するほど彼女は強い人なのだろうか?確かに背中に大剣背負ってるし……強そうではあるよね。


「気にすることは無い、冒険者たちの尻拭いをギルドマスターから任されているからな。これくらい当然のことだ」


「それでもです!ティオさんが助けてくれなかったらあのまま連れていかれてたので……」


「……そうか、素直に感謝を受け取っておこう」


 済ました顔で告げるティオだが、この時彼女の脳内は「名前呼ばれちゃった…ふひっ……」と言ったように気持ち悪い顔で笑顔を浮かべている。化けの皮が厚いとこういったときに良い事があるらしい。


「ところで天……じゃなくて君の名前はなんて言うんだ?」


「あ、自己紹介が遅れちゃってごめんなさい!僕は乃蒼って言います!」


「ノア……あぁなんていい名前なんだ……」


「えと……どうも?」


 まるで映画のワンシーンの様に俺の名前を賛美し始めるティオに俺はどう返したらいいか分からなくなる。俺の名前ってそこまで珍しくはないような気がするけど……異世界だから何とも言えないか。


「ノアは一人で何をしてたんだ?誰か家族を待っていたりしたのか?」


「じ、実は──────」


 俺の経歴について軽く説明する。もちろんこれは魔獣に襲われたと捏造したものであり、自分が異世界からやって来たという内容は話さない。この人は他の人よりも信用できそうではあるが、それでも異世界人だと言う事はまだ黙っていた方が得策だと思ったからだ。


「そうか……それは辛いことを聞いた、すまない」


 俺の話を聞き、ティオはまるで自分の事の様に悲しそうな表情を浮かべる。そんな顔をされると罪悪感がすごい……りょ、良心が痛いよ。


「いえ、こちらこそこんな話をしてしまいごめんなさい」


「聞いたのはこっちなんだ、謝らないでくれ。それで……その……」


 いきなり言葉に詰まった様子のティオに俺は首を傾げる。一体どうしたのかと彼女の瞳を見つめるとティオは見てはいけないものを見たと言わんばかりに素早く目を逸らす。え、本当にどうしたんだろ……。


 なおこの時ティオは上目遣いでこちらを見てくるノアが可愛すぎて気持ち悪い顔になっていただけである。他の女性が先ほどのノアを見たら、まるでサモエドの子犬を見た犬愛好家の様に連れて帰りたい衝動に駆られ即座に行動を起こしていただろう。だがティオは……耐えた!


「んんっ!すまない。それでノアはこれからどうするつもりなんだ?」


「そ、それは……」


 自分もどうしようか悩んでました!!


 そうなんですよ、助けてもらったはいい物のこの後どうすればいいか分からないんですよね。行く当ても無ければお金も無い。この先に待っているのはおそらく脱水症状による死であろう。


 さっきの反応から見るに俺が物乞いや体を売ってお金を欲すれば大量のお金を稼ぐことは出来る。が、絶対にそんなことはしたくない!俺は襲われるよりもゆっくりと信頼関係を築いて結婚を前提としたお付き合いをしてからお突き合いを始めたいのだ。


 じゃあ俺の貞操を守る選択をするとしたら俺は一体どうしたらいいのかという所に戻って来る。うん、そこで困ってるんだったわ。う、うーんまじでどうしたらいいんだろう。


「その……ノアさえ良ければなんだが──────」


 ぐ~ぎゅるるるる


 ティオが何かを言いかけたその瞬間、俺のお腹が我慢の限界と言わんばかりに大きな音を立てる。普段であれば何も恥ずかしいとは思わないのだが、タイミングがタイミングなため俺の頬が段々熱を帯びていくのを感じる。も、もうちょっとタイミング考えてよ……。


「すまない、お腹が空いていることに気が行き届いていなかった。まずは腹ごしらえからしようか」


「あ、でも僕お金が……」


「大丈夫だ、こう見えて私はかなりお金があるんだ。だから遠慮する必要はない」


 奢ってもらうのは申し訳なく感じるけど……でもお腹を満たすにはお金が必要、ここはティオに甘えさせてもらおう。


「それじゃあその……お世話になります」


「任せろ。ああ、それとその足で歩くのは疲れただろう。店に着くまで私が担いでいこう」


「いや、大丈夫で──────ってうわぁ!?」


 丁重にお断りしようと思ったが俺の身体はあっという間に宙へ持ちあげられ、そしてそのままティオの腕の中にすっぽりと治まってしまう。まさか女の子にお姫様抱っこをされる日が来るとは夢にも思っていませんでした。は、恥ずかしい……。


「それじゃあ行くか」


「お願いします……って鼻血出てますよ!?」


 ひとまず抱えていってくれることに感謝を伝えようとティオの顔を見ると、誰かに殴られたのではないかと思ってしまうほど彼女の鼻からはだらだらと真っ赤な血が零れていたのである。


「ん?あ!す、すまない!」


「いえ、僕は気にしてないですけど大丈夫ですか?」


「だ、大丈夫だ、このくらいすぐ治まる」


「そ、そうですか……」


 いやそんな鼻血を垂らしながら大丈夫って言われても信用できないんですけど……?

 

 



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