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魔法ってあるんだ

 新キャラの登場でございます。


 冒険者として初めてのクエストを達成してから数日が経った。フィユさんからお祝いとしてハンドクリームを貰ったり、ティオに大量のご飯を奢って貰ったりと嬉しいことが起こり、俺のモチベーションはとても高い状態にあった。


 これから少しずつ強くなってこの世界を一人でも生きていけるように頑張ろう。そのために簡単なクエストを毎日コツコツとこなしていこう、そう思い今日も俺はティオと共に森へと足を運んでいた……のだが──────


「キュー!キュー!!」


 可愛い……こんな可愛い生き物を倒さないといけないなんて……。


 今日はホーンラビットと呼ばれる小さな角の生えた兎を討伐するクエストを受注した。そこまで強い魔獣ではないがホーンラビットは警戒心が強く、中々見つけることが出来ないとティオは言っていたのだが森を探して10分も経たないうちに俺はホーンラビットと遭遇した。


 普通であれば逃げるのだろうが、何故かホーンラビットは俺の足元へぴょんぴょんと近づいてきて体を擦り付けてきたのである。そんな可愛い事をされて討伐をするなんてことが出来る人間がいるだろうか?いやいるはずがない、ということで俺は今動物園に来た子供の様にホーンラビットの体を優しく撫でていた。


 ホーンラビットはこちらに敵意が無い事を察したのかとても幸せそうに目を細める。やばい、この子可愛すぎる……連れ帰ってペットにしたい。


「まさかホーンラビットがここまで警戒心を解くなんて……ノアは魔獣使いの才能があるかもしれないな」


「魔獣使い!?もしかしてこの子を使い魔に出来るの!?」


 俺は魔獣使いという言葉に目を輝かせる。まさかこの世界にビーストテイマー的な職業があるとは思わなかった。もし魔獣使いになれたらモフモフと一緒に冒険することが出来るのか……。


「出来ないことは無いが、魔獣使いになるためには使役魔法の適性があるかどうかを調べた上で、魔法の練習が必要になる。ただまぁ適性がある人も少なく、魔獣を使役するのもとても難しいため魔獣使いはほとんどいないんだ」


「そうなんだ……というか魔法あったんだ……」


「何を言っているんだノア、私たちは日頃から魔法を使ってるだろ?」


 何を言っているのか分からないと言った様子で首を傾げるティオ。いやまぁファンタジーの世界なら魔法があって当然ではあるんだけども……な、なんて説明すればいいんだ?


「その……実は家族に魔法得意な人がいなくて使い方が分からないんだ」


「そうだったのか、てっきり身体強化していると思ったが……なるほどな」


 ティオは俺の言葉を聞き少し俯く。もしかして自分の出自に関して疑問を抱いてしまったのだろうか。だっておかしいもんね、魔法が苦手だからって言っても使えないなんてことほぼないだろうし……困ったなぁ。


「よし分かった、明日は冒険者の仕事はお休みして魔法の練習をしよう」


「え、いいの?」


「ああ、魔法が使えなくても体内にある魔力を操作できるようになるだけで大分違うからな」


「それじゃあお願いします、ティオ先生!」


「ぶふっ!?かわいい……じゃなくて任せてくれ。……それとそろそろそのホーンラビットを倒した方が良いぞ?」


「えっ……倒しちゃうの……?」


 俺はティオの言葉を聞いてピタリと体が固まる。こんなに可愛い生き物を殺すの?そんなの出来るはずがないじゃん……。


「確かに見た目は可愛いがホーンラビットも立派な魔物だ。それに倒さないとクエストに失敗してしまうんだぞ?」


「で、でも……」


「キュー?」


 こ、こんな可愛い生き物倒せるはずないじゃん!!!!


 つぶらな瞳で顔を覗き込んでくるホーンラビットを見てしまった俺は、この子を倒す気力が完全に失せてしまう。だって角が生えてるのを除いたらただの兎だよ?それを倒せって……無理無理無理!!俺にはそんなこと出来ないって!


「……もし無理だというのなら私がそいつを──────」


「駄目!この子は絶対に俺が守る!!」


 剣を抜こうとしたティオに対抗するように俺はホーンラビットを守るようにして抱きかかえる。


「ノア……これに失敗したら違約金を払うことになるんだぞ?」


「それでもいい!この子が守れるのなら!!」


「キュ……キュキュー……////」


 俺の言葉を分かっているのか知らないが、ホーンラビットは嬉しそうな声を上げ体をスリスリと擦り付けてくる。ハートマークが浮かんで見えてくるがおそらくこれは錯覚だろう。


「……はぁ、分かった。今回だけは見逃すから早くそのホーンラビットを離すんだ」


「離した途端に切りかかったりしないよね?」


「しない、私を一体何だと思ってるんだ」


 「変人です」と即答したくなったが、流石に可哀そうだったので俺は口を紡ぎそっとホーンラビットを離す。


「キュ?……キュキュキュー!」


 ホーンラビットは俺の身体にスリスリともふもふの毛を擦り付けてくるが、俺はこの甘い誘惑を断ち切らないといけない。


「ごめん、俺はもう行かないといけないんだ」


「キュ!キュキュー!」


 行かないでと言わんばかりに泣き声を上げるホーンラビット。俺は今すぐにでも抱きしめたい気持ちを抑え俺はホーンラビットに背中を向ける。


「行こうティオ」


 ティオに一言声を掛け、俺は早歩きでホーンラビットから離れる。


「キュキュ!キュー!!!!」


 またどこかで会ったら、もふもふさせてね……。俺は込み上げる悲しさを抑え、足早に森を抜け出した。






「私、ホーンラビットに負けてるのか……流石にちょっと傷つくな……」


 可愛いノアを見れたことはもちろん嬉しいが、流石にノアからの評価において魔獣に負けているのは来るものがあるらしい。ティオは帰り道を歩くとき前が見えなくなるほどに下を向いて帰ったのであった。








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