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頼りになる……? part1

 というわけで初クエストにいってみましょうい!!


「それじゃあ今日はこれとこれを受けよう」


 冒険者登録が済んだ俺はティオと一緒にどのクエストを受けるか、掲示板を眺めていた。そんな中ティオが選択したクエストは薬草の採取とスライムの討伐クエスト。難易度はどちらもFランクで如何にも初心者が最初に受けそうなラインナップである。


「最初の一週間くらいは雰囲気や、刃物の扱いに慣れるために比較的簡単なクエストを受けようと思うんだが、ノアはどうしたいとかあるか?」


「ううん、先輩冒険者のティオの考えに従うよ」

 

 意外とティオはしっかりとしていた。脳筋というイメージを抱いていたからてっきり「今日はこれだ。

大丈夫だノア、私が絶対に守るから」とか言ってCランクのクエストを持ってくるかと思ったが杞憂に過ぎなかったらしい。


「分かった、それじゃあ帰りが遅くならないように早速行こう」


「うん!」


 クエストを受注した俺とティオは早速街の外へと向かう。移動中はティオのおかげで誰からも声を掛けられることは無かったが、相も変わらず視線がとても痛かったです。早くコートを買った方が良さそうだなこれは……。






 ふっふっふ……ついにこの日が来た。これでようやく私の良いところをノアに見せることが出来るぞ!!


 この日ティオはいつにも増して張り切っていた。ノアと出会ってまだ1日しか経っていないというのにノアからの評価は右肩下がり、このままの状態が続くとノアが冒険者としてある程度稼げるようになったら見限られてしまう可能性が高い。


 人間性への評価は低くなる一方だがしかし、こと冒険者稼業となれば話は別。彼女はAランク冒険者であり、大抵の魔獣は彼女一人で対処できてしまうほどの強さがある。


 もしノアが困っていたとしても私が颯爽と助けてあげられるし、強い魔獣が突然現れたとしても私がしっかりと守ってあげられる。そうすればきっとノアの心を射止めることが出来るはずだ!!


 ティオは男性経験が限りなく0に近い。それ故に「男をピンチから救えば絶対に惚れられる」という考えが全てといっても過言ではないのである。


 もちろん窮地を救われれば、救ってくれた人に対して少なからず好意やそれに似た何かを向けられることが多いだろう。しかし、日頃の態度や接し方で関係値を大幅にマイナスしていたら窮地から救っても好意を向けられる可能性は低くなる。ティオはその事実を残念なことに知らない。何故なら男性経験が無いから!今まで男を作ったことが無い超面食いだから!!


 しかしそんなことが全く頭にないティオは颯爽とピンチから救い出し、ノアに好かれるという妄想を脳内で繰り広げながら、目的地へと足を動かしている。妄想でにやけていないのが救いである。


 さぁノア……どれだけ君が困っていても私が颯爽と助けてやるからな。まずは薬草集め、簡単そうに見えて実は初心者には難しいクエストの一つだ。似たような形の草がたくさんある中で、薬草を見つけださなければいけないという多少の知識と経験が無いとクリアできないクエストだ。おそらくきっと……


「ティオ、薬草見つけたよ!」


 と嬉しそうな笑顔を浮かべて薬草を取ってくるに違いない。


「ノア、それはヤクソウモドキだ。本物の薬草は……こっちだ」


 そこで私はふふっと笑い、ノアにくっつき、彼の手と体を導くように動かす。


「そ、そうなんだ……あ、ありがとうティオ……///」


 そうすればきっとノアは照れながら私のことを頼りになると考える!そして急なスキンシップにどぎまぎする!そしたらもう私のことを好きになる!!これを思いつく私を天才と呼ばずして何と呼ぶのだろうか……。自分が恐ろしく感じてしまう……。


「ここら辺かな?」


「ああ、ここら一帯に薬草がある。見分ける練習も兼ねて探して見ると良い」


「分かった、じゃあ行ってくるね!」


 ワクワクを抑えられないといった表情で薬草を探しに向かうノア。やばい、この顔を見られただけでも幸せ……。うちのパーティーメンバー……可愛すぎ!!


 ティオは腕を組み、とても凛々しい表情でノアを見つめているが内心はノアの可愛さに悶絶している。もはや器用なのか不器用なのかよく分からない。


 ここでノアには私のイメージを払拭してもらおう……私はやばい奴ではなく、とても頼りになる女であると!!





「ティオ、薬草集めてきたよ!」


「どれどれ……ノア、これはヤクソウモド──────」


 ……あれ?これ全部本物の薬草じゃないか?


 ぱっと見ただけだが経験則的にこれら全てはおそらく本物の薬草だ。よく間違われるヤクソウモドキは葉の裏に小さな黒い点があるのだが、ノアが取って来たものにはどれも黒い点が無い。


「……あれ?俺もしかして間違ってるの取って来た?」


 はっ…!ここでノアを不安にさせてはいけない。頼りになるところを見せないといけないのにどうして私がノアのことを不安がらせているんだ!


「い、いや、全て本物の薬草だ。ノアはすごいな、多くの人はヤクソウモドキと間違えるのだが」


「そうなんだ、でもきっと運が良かっただけだよ」


 すっごい謙虚……。可愛くて謙虚で黒髪で……何この理想の男の子、好きにならない方がおかしいだろこんなの。




 ノア……好きだ……じゃなくてノアにかっこいいところを見せないとだった。冷静になれ私、確かにノアは可愛いし、薬草を間違えなくてすごかった。が、次のスライム討伐はそうは行かない。ノアは刃物を持ったことが無いと言っていたし、ここで私が文字通り手取り足取り教えることで好感度を上げるのだ!




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