きっかけ
蜩の鳴き声が所々から聞こえる。
まだ夏の暑さの残る今は秋。そしてここは日本。
残暑に腹を立てているのは主人公、桜井遊梨。東京都の某所に住んでいるどこにでもいる中学三年生。
今オレ達は三日目のテストを終えて、三人の友達と帰っているところだ。
「この後どうするよ?」
この声は松岡翔。こいつは友達の一人でオレの幼少の時からの友達、というか親友だ。
「とりあえずそこら辺にあるファミレス入って落ち着かない?」
もう一人の友達、水上零奈が疲れきった顔と声で提案する。
この友達も翔と同じ幼なじみだ。
親友だとオレは思っているが、零奈はどう思っているのかわからない。
「オレはいいけど、二人は?」
オレはそう返事を返し他の二人に聞く。
「こっちも問題なし」
「僕もいいよ」
翔ともう一人の友達、守夜椿から返事が返ってくる。
椿は小学三年生からの付き合いだ。
こいつの家は相当な金持ちでこの前タヒチ島に別荘を構えたらしい。
恐らくこいつも親友である。
椿はどう思っているかわかんないけど。
「それじゃ決まりだな」
「そうね、どこら辺にする?」
「そういえば駅前に最近出来た店があったよな、そこに行こうぜ」
遊梨がパッと思い出した店に行こうと声をかけると翔は少し不満そうに言った。
「よし、なら多数決だ」
多数決をした結果三対一でここから歩いて五分の駅前の店へ行くことになった。言わずもがな一は翔である。
皆が楽しそうに話しているなかで、唯一反対していた翔はあまり機嫌が良さそうじゃなかった。
きっと翔はこの後に起こる出来事が心の何処かでわかっていたのだろう。