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ミズキ・アガノと魔法の摂理(後半)

芥見下々さんの設定が如何に凄いかを痛感しました。

能力の設定ムズすぎぃ!

2回戦、クリフvsアガノ


 スピードタイプということは、速度が上がる魔法でも持っているのか。つまり勝つためには、スピードを低下させるかカウンターで仕留めるかの2択になる。

 まだ天理魔法の使い方が完全でない以上、今はカウンター狙い前提でいくのが最善だろう。


「うっし、そんしゃあ行くぜ!」

「はーい、気張ってこうねー」

「緊張感なさすぎでしょ・・・」


 相手は木製のダガーを逆手に構えて身を低くしているのに対し、阿賀野は半身を取りながら手をだらりと下げただけ。

 おまけに手には何の得物も持っていない。完全な無手(むて)だ。


「おい、いいのか?武器とか持たなくて」

「大丈夫だ。武器ならもう持ってらあ」

「そうか。・・・それなら遠慮なく!」


 クリフがそう言った瞬間、体が瞬時にブレたような気がした。

 いや、消えたわけではなく、移動した後に残る残像は認識できる。しかし、本人そのものが追えているわけでは無い。

「さあどうする?天理魔法とやらで俺にどう勝つ!?」

「まあ、策がないわけではねーよ」


 俺を中心に右に左に動き回り、隙を(うかが)っているようだった。

 しかしまだだ、まだ。今のうちに天理魔法の解釈を広げるべきだ。天理とは、文字通り天の理。天然(てんねん)自然(しぜん)道理(どうり)を指す言葉だ。つまり、上手く使えばこの魔法は異世界で最も輝くし、最も異世界を殺せる魔法になる!


「来ないならこっちから行くぜ!」

 凄まじい速度で周りを移動していたクリフが、急カーブしてこっちに迫る。右の視界で、足のブレーキによる砂埃が少し舞った。あの速さなら今にも俺に近づいて、俺の体に一撃入れられることだろう。




本来なら、な


『そのスピードでその砂埃(すなぼこり)はおかしいな。スピードは4分の1にしろ』

「・・・・・・は?」


俺の知略は、すでに完成した


パシッ









「え?」




 気がつけば、クリフは訓練場の天井を見上げていた。正直訳がわからなかった。たった一言アガノが呟いた後に、背中を地面に叩きつけられたのだ。


「一本。俺の勝ちってことで」







「「「「「「「ええええええええええええええええええええええええ!?!?!?」」」」」」」






 賭け試合と化した能力把握のための模擬試合を観ていた、冒険者や一部のギルド職員も理解できなかった。

「どーゆーことだ!?俺は確かに全速力のスピードで・・・!」

「そうですよ瑞樹さん!一体何をしたんですか?」

「ワタシたちから見れば、クリフのスピードが急に落ちたように見えたんだけど・・・・・・」

「何?」


 観客の視点だと、クラブのスピードが俺に斬りかかる直前に急失速したように見えたらしい。だが、その見方は錯覚では無い。

 なぜなら、実際に失速したのだから。


「お前の魔法による高速移動は、俺が物理法則に則って遅くした」

「はぁ?」


『物理法則に則って遅くした?』

言語化しても意味がわからないことだろう。だが、これが天理魔法の本質だ。


「お前突っ込んでくる前に急カーブしてきたろ。あの時の砂埃の量や範囲が明らかにスピードに見合っていなかった。

衝撃=スピードの2乗って公式があるのにも関わらずだ。

そこで俺は分かった。お前は超スピードはスピードでも、『テレビの早送り』みたいに自分の動作のみを速めたんだ。だから天理に反する現象が起きた。それに俺が定理に従って異議を唱え是正(ぜせい)すれば、お前のスピードは自然法則によってあの砂埃に合った速さに強制的に落とされる。それを俺に攻撃する直前にやれば、カウンターでお前の体勢を崩して下から顎を持ち上げ叩きつければいい。


合気道「入り身投げ」


俺がやったのはたったそれだけさ」


 そう、俺の天理魔法は魔法でありながら対魔法特化の能力だったのだ。

 「自然や法則に反した現象を魔力を使って起こす」ことが魔法なら、俺は「それを強制的に自然の法則に落とし込んで実質無力化させる」。

 しかしこの魔法のデメリットは、物理攻撃100%の相手自体には通用しないってこと。

 そして、俺がその自然の法則を把握していなければならないこと。つまり、天理に反していることを正確に反証しなければならない。いわば一種の言霊(ことだま)に近いだろう。

 一番のメリットは、魔法での天理の基準が異世界ではなく俺の世界だったこと。でなければあの程度の反論で発動するわけがない。ここは魔法で何でもありの世界なんだから。


「この魔法は、俺の知識と技術があって初めて真価を発揮するってことが分かったぜ。しかしなんつー魔術殺しな力だ。

皮肉ってレベルじゃねーぞ」


「・・・・・あーくそ負けた!天理ってのはこんなにもつえーのかぁ。じゃあ魔法なしでやりゃ勝算はあったのか・・・。いやどのみち別方面に魔法使ったりアイキドー?とかでいなされてた、か」


「いいじゃん。俺は魔法を把握したし、外野の一部は儲かってウッハウハ。後でファイトマネー貰っとこーっと」

「良い性格してるわねアンタ」


 アンネにツッコまれたがこれが俺なんだから仕方ない。この後クエスト受けて金稼ぐより、今ファイトマネーをせしめた方が合理的だ。

だから仕方ない。


仕方ないのだ(2度目)





 というわけでギルドを後にし、ついでにファイトマネーの小金貨8枚ずつゲットだぜっ!

 これだけあれば異世界の本でもそこそこの数が買える!

 金貨を見ながらニヤニヤしてると、アンネから小言が入った。

「言っとくけど、定期的に依頼をこなさないとカード失効になるからね」

「めんどくせぇ」

「まあまあ。で、次はどこ行きます?」

 これで第一目標の身分証は入手した。ついでに軍資金も手に入れた。異世界だろうと時間は有限。ならここは効率的に目的別に分かれるべきだと提案した。


「俺は本屋か図書館でしっかりとこの国と法律が知りたい。その後は教会だな」

 阿賀野はこの国の地理と政治、そして法律が知りたかった。特に法律に関しては、揉め事の時に有用となると踏んだからだ。宗教に興味はないが、異世界での宗教イメージは中世フランス並みに強大だったら絶対にトラブルになる。ならば先にこの国での神と信仰の形を知っておいて損はない。


「私は美容とか日用品関係が見たいんですけど、どうしますか?二手に分かれます?」

 彩綾は雑貨店を見て回りたいようだ。図書館の場所さえ教えてくれれば俺1人で行けるから、アンネは彩綾に付いていてもらおう。

「じゃあ解散!お互い用が済んだら教会前に集合なー」

「はーい!瑞樹さんトラブル起こさないでくださいね!」

「失敬な!俺は健全な日本男児だぞ!前科もなければ逮捕歴もないんだからな!」

「いや人として当たり前でしょ」

「冷静に突っ込むのやめて?」


 こうして俺は図書館へ、彩綾たちは商店街へ向かうこととなった。

 果たしてこの世界の図書館にはどんな知識が待っているのか。俺の異世界革命の役に立つものがあれば良いのだが。


 それと、この国での書房の展開も考えなきゃいけないしな。

はい、次回からはアガノルートとサーヤルートでそれぞれの話を交互に出す予定です。

アガノはともかくサーヤの方をどう盛り上げようかな?

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