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リベラの憂鬱

お久しぶりです。

 一つの問題は解消された。

いや、それも完全にというわけではないけれど。


 勇者様の生存は確定した。

それはわたしの胸部に格納されている勇者人形も示している上、こうして目の前に姿を現している。

勇者人形に表れる表情は泣き顔、それは魔族化故。

わたしの前に帰って来た勇者は、ほとんど別人と言う他なかった。


 今は遺跡の硬い床でツヴァイ様とロジカ様は身を寄せて眠っている。

わたしは一時的に警戒態勢を解き、その二人の元に歩み寄った。


 夜間モードに切り替わったわたしの視界は明かりなど無くても明瞭だ。

その視界に穏やかに眠っている二人の横顔が映し出される。

そのツヴァイ様の横顔を認識すると、微細ながら視界にノイズが走るようだった。


 知らない姿、知らない性格、知らない人。

この人物は、一体誰でしょうか?


 思考は自分が生まれたときに巻き戻される。


 人類の最終兵器として生まれた勇者、その保護者権補佐役としてわたしは製造された。

まだ幼い勇者様は、その小さな手でわたしの手を握った。


 わたしを見上げるその表情を今でも鮮明に思い出せる。

そこから始まる二人の旅も、全て余すことなくメモリに記録されている。


 その宝物のような記憶が、今はわたしの思考を掻き乱す。


 わたしは勇者様のために生存された。

言うなれば勇者様、いやアイン様こそがわたしのレゾンデートル。

しかしこうなってしまったら・・・・・・。


「わたしは・・・・・・どうしたらいいのでしょうか?」


 答えが返ってくるのは期待しない。

誰の耳にも届かぬように、わたし自身の心にさえ響かぬように尋ねる。


「ツヴァイ様・・・・・・あなたは、あなたはアイン様ですか・・・・・・?」


 静かな夜に、静かな声で。

この闇から浮かび上がらぬように、ひっそりと。


 ロジカ様は既にこの現状を受け入れた。

ただわたしのみが、この冷たい胸中に重たいものを沈ませている。


 夜は答えない。

しかし全てを曖昧にしてくれるわけでもない。


 本来疲れを感じないはずの体なのに、瞼が重く感じる。

それに抗わず、目を瞑る。

静かな夜に、ただ二人の穏やかな寝息が独特のリズムを刻んでいた。

お久しぶりでした。

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