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再会の後

読もう!!!!!!!!!!

 勇者の剣から放出される一筋の光。

その頼りない光に導かれて森の中を進んでいく。

落ち葉を踏み締め、枝葉を掻き分け、だんだんと視界が明るくなっていく。

そして・・・・・・ついに森の外に踏み出した瞬間。


「お、おわっ・・・・・・!?」


 二人の娘がワタシに飛び込んできた。

身長差のせいで二人の体で視界が塞がり何も見えなくなってしまう。


「な、なんだ? なんなんだぁ!?」


 声を上げるが、二人の耳にはまるで届いていないようだった。

あまり体を強く押し付けられるものだから、思うように呼吸が出来ない。

けれどもそうしてもみくちゃにされるしかなかった。


 しかし幸い、それも数秒で終わる。

まるで示し合わせたかのようなタイミングで二人同時にワタシから離れた。

そして数秒間、感情を読み取りづらい表情でこちらを見つめてくる。


「な、なんなんだよ・・・・・・?」


 というかそもそもこの二人は誰なんだという困惑。

どうやらこの二人はワタシのことを知っている風だったが、記憶を失う前に関係があったのだろうか。


 勇者の剣のナビゲートは終了している。

つまりここ・・・・・・か、あるいはこの二人の内どちらかが剣の指し示していた“リベラ”ということになる。


 だから、ワタシ自身期待していいはずだ。

おそらく、ここでワタシについての何かが分かる。

しかし・・・・・・。

事態は思わぬ方向へ動く。


 ワタシから離れた二人は、声をそろえてこう言った。


「「・・・・・・誰!?」」


 しばしの沈黙が訪れる。

どうやら困惑の度合いはワタシも向こうも違わない様子だ。


 しかしそれでも年の差か、向こうの方が早く思考を取り戻す。

赤い髪の娘の方が、一回の瞬きを経て表情を変え口を開いた。


「リベラ、敵意は無さそうだけど警戒して。アタシは・・・・・・ごめん、ちょっと戦闘は無理そう」

「既に厳重警戒態勢です。いつでも攻撃に移れます。・・・・・・こういうこともあるのですから、休息は必要とあれほど・・・・・・」

「だからごめんって・・・・・・。にしても・・・・・・なんで魔族の子どもが勇者の装備を・・・・・・?」


 目の前で二人の少女が言葉を交わすが、ほとんどどういう状況なのか理解出来ない。

だが一つ確かなことが言えるとすれば・・・・・・どうにもあまり望ましくない状況のようだ。

ワタシにとっても、向こうにとっても。


「お、おい! キサマら! ワタシは、勇者・・・・・・なのか!?」


 それでも一か八か、ワタシ自身が何者なのかを確かめようとする。


「勇者・・・・・・って、あーた魔族なんだから、勇者なわけ・・・・・・」


 赤髪の視線がワタシの体の上を泳ぐ。


「???」


 ただひたすらに困惑していると、その視線の意味を金髪が言語化してくれた。


「勇者の装備は正常に機能しています。経緯は不明ですが・・・・・・この魔物を勇者と判断したようです」

「そんなこと・・・・・・いや、まさか魔族化したっていうの? あの勇者が!?」

「魔族化の前例は過去にもあります。アイン様と言えど、魔王にその類いの魔法を使われたら対処は難しいかもしれません・・・・・・」

「そ、それは分かってる。けど、過去の事例はどっちも魔族化を望んでいなければ成立しない魔法だったはず! 勇者がそれを望むなんて・・・・・・」


 何やら目の前の赤髪はヒートアップしてきているようだが、依然ワタシにはなんのことだかよく分からない。

ただこの目の前の二人が、ワタシが今身につけているチェストプレートと同じ結論に至った様であることはなんとなく汲み取れた。

赤髪の少女にとって、それが受け入れられるかは別のようだが。


「ああ、もう! なんで辻褄が合っちゃうかなぁ・・・・・・。あの馬鹿なら、やりかねないよ・・・・・・魔王を倒すためなら、魔物にだってなるよ、アイツは・・・・・・」

「ロジカ様、アイン様への侮辱行為は・・・・・・」

「それは今はいいでしょ!」


 赤髪の少女は疲れた様子で膝に手をついてため息をつく。

ワタシは口を半開きにしてただその様子を眺めていた。


 記憶が無い以上、正直この人の気持ちの動きとかよく分かんないし、だからボーっと眺めてる。


 赤髪の少女は膝に手をついたままワタシを見上げる。


「・・・・・・はぁ、とにかく・・・・・・勇者は生きてるっちゃ生きてる、と・・・・・・。リベラ、目の前のこの子の状態は?」

「・・・・・・勇者の装備から該当する情報を受信済みです。勇者の装備もロジカ様と同じように魔族化という結論に落ち着いています。過去に数件あった魔族化の魔力量及び身体機能の上昇幅と照らし合わせた結果、全てが完全に一致」

「偶然魔族化した勇者と同じ能力値の魔物がこの装備を身につける可能性はゼロに等しいってわけね」

「はい。そして・・・・・・そして、ここからが問題です。何らかの要因により、魔族化以前の記憶を失っていると推測されます」

「それは・・・・・・」


 ちらりと赤髪の少女の視線がワタシに向く。

髪の色より深い、炎を閉じ込めたような赤色の瞳だ。


「・・・・・・なるほどね。どうりで何も分かってなさそうな顔してるわけだわ」


 そう告げると、赤髪の少女はやっと膝から手を離して体を起こした。


「じゃあ、改めて。あんたは勇者で間違いないよ。何も覚えてないみたいだけど、ひとまずこうして合流できたから安心して。アタシらはあんたの仲間」

「お、おう・・・・・・!」


 それなりにややこしい状況に陥ってしまっているようでここでも少し危うかったが、これでやっと欲しい言葉が貰えた。

ワタシが何者かは、明らかになったのだ。

そうした不安が取り払われて、やっと自分が誰だか分からない恐怖というのが大きいものだったのだと理解した。


「それでは、再び自己紹介が必要ですね。わたしは・・・・・・」

「リベラ、だろ?」


 流石にそれくらいはもう検討がつくわ、と鼻を鳴らす。

それにリベラは目を丸くして、そして唇を小さく震わせた。


「お、覚えて・・・・・・いてくれたのですか・・・・・・?」


 そして感極まった風な細い声でそういった。


「あぁ、いやいやいや! 違う! キサマらの話を聞いていたから分かっただけだ! そっちの赤いちんまいのがロジカだろ?」


 なんだか勘違いさせてしまった様なので慌てて訂正する。

しかし、リベラの表情からさっき見てとれた喜びの色がふっと消えたので、もしかしたら否定しない方がよかったかもしれない。


「あーたの方がずっとちんまいでしょうが!」


 それに気づかないでロジカは文句を言いながら、多量の息を吐く。


 とにかく、難しいことはまだ分からないが、これはワタシたちの再会なのだ。

だから、ワタシもまた二人の前で薄い胸を叩いた。


「・・・・・・ワタシは勇者だ! 覚えていないが・・・・・・よろしく頼むぞ!」


 この瞬間、ワタシは勇者としてのワタシとも再会したのだった。


 リベラは読めない表情で、ロジカは呆れた風に、その言葉を受け入れる。

単純な感動の再会とはいかなかったが、しかし及第点だろう。

次回もよろしく!!!!!!!!!!

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