一生分の運(3)
みなみの母親は、自分の勘が当たったと思っている。やはり、最終日に当たり玉を入れる。これはギャンブルみたいなもの。私は信じた、会長をこの商店街を。信じる者は救われる、運がよければ当たりを引き当てられるはず。みなみの母親と宮田は、福引会場に向かった。
午前9時20分。福引会場が開く10分前、客は誰も来ていない。2人は、福引会場のテントの前に立ち、行きかう人たちは珍しいものを見る目で素通りして行く。2人には、そんな視線など気にもとめない。
すると、テントの奥から1人の男性が現れ、2人の前に行き。
「なんと、嘆かわしいですね? この日を狙って来たのは、たった2人ですか?」
福引ガラガラの前には、みなみの母親が1番目に立っている。
「もしかして、商店街の会長さんですか? この福引、ギャンブルだったんですよね?」
「いかにもそうだが、私は断じて詐欺師ではない。ちゃんと景品は用意している。ちょっと変わった余興ですよ。よって、2人には敬意を払いましょう」
商店街の会長は、福引ガラガラの中に、玉が入っていないことを2人に確認させると、2人は度肝を抜かれた。
商店街の会長の手には、全当たり玉が握られ、その全当たり玉を目の前にあるトレイの上に置き、2人に確認させ。その全当たり玉を福引ガラガラに入れるように、2人にお願いした。これで、出た玉は全て当たりということになる。但し、福引は1回のみで、何を当てたいか宣言する。1等が当たる確率は、10分の1となった。