マスターの帰宅後は
「ただいま〜」
玄関からマスターの声が聞こえ、すぐにマスターの元に駆けつける。
「マスター!お帰りなさい!」
「ただいま、ツグミ。出迎えありがとう」
そう言って、マスターは私の頭を撫でてくれました。
マスターに頭を撫でられていると、何だか心がポカポカしてきます。
あぁ…至福の時です…もっと撫でてほしいです。
(なんかツグミが、めちゃくちゃ気持ち良さそうにしてる…もうちょっと撫でて上げた方が良いんだろうか?)
「……はっ!すみません!マスター!あまりに心地よいものですから…」
「いや、大丈夫だよ。ツグミが喜んでくれているなら、僕も嬉しいし」
「ご迷惑でなければ、たまにこうして頂けると…嬉しいです」
「わかった。じゃあそうするよ」
「はい!ありがとうございます!」
「それじゃあ、荷物とか置いてくるね」
「わかりました」
マスターはそうして自分の部屋へと荷物を置きに向かいました。
私は仄かに残っている、頭を撫でられた感触を噛み締めながらマスターが部屋から戻ってくるのを待つのでした。
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「ツグミ、実はちょっと相談したいことがあってさ」
「相談したいことですか?」
部屋から戻って来るなり、マスターはそんなことを口にしました。
もしや、好きな人が出来たということでは!?マスターもお年頃ですし、そういう人が居てもおかしくはありませんし。
もし、そうなら…少し嫌ですね……マスターの幸せを願うなら祝福すべきなのでしょうが、マスターを幸せにするのは私でありたいというか、なんというか…ともかくそれは嫌ですね。
我ながら、ちょっと重い気もしますが、この気持ちに嘘はありません。
「新しいカードを手に入れたんだけど、デッキ編成に悩んでてさ」
「へっ?」
まったく予想と違う答えを口にしながら、マスターはカードを見せました。
そのカードは私が掃除中に見つけたカードで、マスターは持ってきた他のカードの束を広げながらどのカードを入れるべきかを私に聞いてきました。
「えっと、そうですね…単純に強いカードだとするとこれですが、マスターが使うのであればこのカードが良いと思います」
マスターの相談事が私の思っていたものとは違っていたことに安堵しつつ、未だに混乱したままマスターにアドバイスをしていきます。
「なるほどね…ありがとう!というか、あんまりびっくりしてないね…一応、サプライズ的な感じで新しいカードについては隠してたんだけど…もしかして、掃除中に見つけちゃったパターン?」
「……すみません、掃除をしていたらマスターのカードを見つけてしまいまして…はぁ、驚く練習を何回もしていたのに結局上手くいきませんでした」
「良いよ良いよ、謝ることじゃないって。というか、驚く練習とかしてたんだ……あっ、そのカード取ってもらって良い?」
「はい、どうぞ」
「ありがと。なんかいつもツグミに助けてもらってるね……いつもありがとう。ツグミのおかげで色々と助かってる」
「いえいえ!私はマスターのNEXとして当然のことをしているだけです!」
「その当然のこと、当たり前のことが嬉しいんだよ」
「今日はいつも以上に褒めてくれますね……とても嬉しいですが、何かあったんですか?」
「特に何かあったわけじゃないんだけど、ツグミにいつも助けられてるなって、ふと思ってさ」
「マスター……ふふっ!私も、いつもマスターに助けられていますよ。あなたが居なければ今の私はありませんから」
「あはは、そう言われると照れるなぁ……さ、さて!デッキも出来たし、テストプレイに付き合ってくれよ!ツグミ!」
「はい!もちろんです!」
顔を赤くしながら、慌てた様子でそう口にするマスターを愛おしく思いながら、私は自分のデッキを手に取るのでした。