表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/40

第一話「道士と殺人鬼」1

 19世紀倫敦。

 ヴィクトリア朝の時代。

 かつてフランスとの間に起こった第2次百年戦争において優位をとなったイギリス帝国は、その後最盛期を迎える。

 いわゆるパクス・ブリタニカである。

 そして、18世紀半ばから19世紀にかけた起こった産業革命は、世界を変えた。

 イギリス帝国は世界の工場と呼ばれ、蒸気が街を包んだ。

 しかし、後の歴史書でも繰り返し描かれる通り、急速な発展は暗い影をも生み出す。

 拡大した貧富の差、都市部への人口の流入、河川の汚染、そして多発する凶悪犯罪……。

 19世紀の世界の中心と言える倫敦は、強い光と闇を併せ持つ、魔都であった。

 その倫敦中心部から、外れた位置にあるホワイトチャペル地区。

 夜は薄暗く、道の衛生状況も決して良くはない。

 住人達も裕福とは言えず、そんな場所の治安が良いはずもないのであるが、ここを一躍有名にしたのは、ある猟奇殺人事件であった。

 そこを一人の男が歩いている。

 やがて、その男は薄汚れた一角で足を止めた。

「ここがメアリー・ジェーン・ケリーの殺害現場か……」

 今は昼間であるが、なぜか男の周りは暗く見えた。

 それは、山高帽をはじめ、コートからズボン、革靴に至るまで全て黒で統一されているのみならず、髪や瞳が黒なのもあるが、一番はその男の持つ、一種の雰囲気であった。

 闇を引き連れて歩いているかのように、彼の居る場所が一段暗くなっているように錯覚するのだ。

 年齢としては20代前半なのは疑いないが、それでは到底醸し出せぬ年輪ある空気を纏っている。

 男は、懐から古びた板を取りだした。

 板の表面には、八卦と呼ばれる古代中国の占いに使用される図像が描かれていた。

 八卦の図像は、方位や色、季節など様々なものを示す。

 男は、今度は酒瓶を取り出し、中身を板にぶちまけた。

 そのしぶきが渦を巻き、幾何学的な文様を描きだす。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ