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1.5人里発見?いいえ、ただの廃村です。

ようやくアップ……

 こんにちは、神座木眞緒です。

 未だに、ここが何処だかサッパリ分かりません。

 これがゲームなら、まずはチュートリアル的な情報収集があったりしますよね。


 しかし、それもこれも荒野に一人ではどうにもなりません。


 いい加減、寂しくなって来ます……



ーーーーーーーーーー



 とりあえずの目的地を決めて、移動を開始する。

 別に急ぐ事もないのだが、マップの縮尺を考えると歩きでは何日掛かるか分からない。

 昨日取得した「手加減」スキルを信じて、思いっきり走ってみる。

 ……が、直ぐに後悔して立ち止まる事になる。


 ズバン!


 走り出した直後に、壁にぶち当たって顔を押さえてうずくまる。

 前方には何も無いっていうか、空気が有るよね。

 うん、つまりは音速の壁にぶち当たったと……

 って言うか、早過ぎ!


 流石に、力の入れ過ぎで地面を踏み抜いたりぶっ飛んだりはしなかったが、軽く数秒走っただけで一体どれだけ加速しているんだ?

 ただ走っただけで、空気抵抗が壁にぶつかるみたいに感じられるなんて思わなかった。

 振り返っても、既に昨日居た場所は遥か彼方、走った時に上がった土煙がすごい事になっている。


 とりあえず、無闇に全力を出すととんでもない事になるという事は分かった。

 これからは、もう少し注意しよう。


 気を取り直して、走り出す。

 今度は上手く走っていける。

 ……まぁ、軽く百メートル世界新が出せるスピードでマラソンするとか、冗談みたいな事をしている自覚はあるが、それはこの際無視することにした。


 順調に走り続ける。

 全く疲れも感じないから、このまま目的地まで走って行けそうだ。

 まぁ、それでも5時間くらいは走り続ける必要があるので、暇な時間でメニューをもう一度見返すことにする。


 今の自分のステータスは、こうだ。


メインメニュー

 名前:「    」

 レベル:666

 状態:通常

 プロフィール

 ステータス詳細


 相変わらず名前は無いし、ステータスは文字化け状態だ。

 プロフィールは、身長や体重、年齢、身分・職業といった項目が並ぶ。

 項目自体は極普通だが、年齢が15(53)歳、身分・職業は異邦人ストレンジャーだった。

 もうこの辺はコメントのしょうがない。

 身分・職業とかは意味不明だし、俺の歳は38歳のはずなのに……


 アビリティ一覧

 祝福(ー)

 不滅(極)

 保存領域ストレージ(極)

 高速再生(極)

 高速蘇生(極)

 体力回復(極)

 魔力回復(極)

 状態異常回復(極)

 真空耐性(極)

 苦痛耐性(極)

 混乱耐性(極)

 恐怖耐性(極)

 窒息耐性(極)

 氷属性耐性(極)

 風属性耐性(極)

 炎属性耐性(極)

 光属性耐性(極)

 雷属性耐性(極)

 土属性耐性(極)

 並列思考(極)

 高速思考(極)

 多重思考(極)

 地脈接続(極)


 スキル一覧

 能力鑑定ステータスチェック(極)

 手加減(極)

 休憩(極)

 道具箱アイテムボックス(極)

 設営(極)

 料理(極)


 スキルの種類は少ないものの、多数のアビリティが目を引く。

 どういう基準で入手しているのかは分からないが、とりあえずあって困る事は無いと思う。


 特技一覧

 魔法一覧


 何も無い。

 アビリティやスキルと比べると、いっそ潔いと言うくらいに何も無かった。

 まぁ、今後はどうなるか分からないし、何か条件が有るのだろう。


 称号一覧

 赦されし者

 星になった男

 龍神の庭の支配者

 憩いし者

 神殺し

 竜殺し

 竜人族殺し

 魔王殺し

 魔人殺し

 魔族殺し

 幻獣殺し

 妖獣殺し

 魔獣殺し

 魔物殺し

 竜族の天敵

 竜人族の天敵

 魔人の天敵

 魔族の天敵

 幻獣の天敵

 妖獣の天敵

 魔獣の天敵

 魔物の天敵


 昨日は避けていたが、やはり見ないわけにもいかないだろう。

 ざっくりとチェックしてみた結果、ほとんどの称号が「○○殺し」だったことはショックだった。

 「○○殺し」にはタブが付いていて、開くと下級や中級、上級、固有名といったものがずらりと並ぶ。

 一体、俺は何時の間にそんな大量殺戮をしたというのか……


 アイテム一覧


 とりあえず、昨日一日かけてざっくりと整理した。

 とにかく物量があるので、今後も継続してチェックしていこうと思う。


 オプション項目

 検索


 この二つはメニュー表示の機能らしい。

 とりあえず、設定変更で色々とカスタマイズしてみた。

 初めは視界を塞いでいたメニュー画面だが、おかげで今では直接視界には映らない様になっている。

 頭の中で別にイメージとして浮かんでいるのだけど、特に邪魔にはならない。

 メニューに意識を向けていても、普通に活動する分には全く邪魔にならない。

 おそらく並列思考のアビリティのおかげだと思うのだけど、中々便利だと思う。


 こうしてつらつらと考え事をしている内に、とりあえずの目的地が近づいてきた。


……

…………

………………



 六時間程走っただろうか?

 軽く二百キロくらい走破した所で、目的地の側までやって来た。

 途中、出発前に用意していた昼飯を食べたが、相変わらずのスピードで走りながらでも昼食には何の支障も無かった。


 さて、目の前には鬱蒼と茂る深い森が見える。

 この森を抜けて、その向こうにそびえる山を越えた所が目的地だ。

 速度を落とさず、そのまま森に突入していく。

 正面に生える木々を素早くステップを刻んで避けながら、森の奥へ奥へと入り込んでいった。

 次第に楽しくなってきて、前転、側転、気の幹を蹴って三角飛び等、アクロバティックな動きを試してみる。


「ヤッホゥ〜〜イ!……って、ウワァ?!」


 調子に乗って三角飛びで大跳躍したら、着地点で巨大な黒い影がガサリと動いた。

 着地の瞬間、牙をむいてこちらを見た獣の頭を咄嗟に蹴り付けた。


PEGYOU!?


 獣が潰れた様な悲鳴を上げる。

 蹴りの勢いを利用して距離を取る。

 ドスンと重々しい地響きを立てて倒れた獣は、暫くするとキラキラと光を放って消えていった。

 その光景に、あれは一体何だったのかと考えていると、


ピロリン!ピロリン!ピロリン!ピロリン!ピロリン!ピロリン!


 立て続けに通知音が聞こえたので、メニュー表示のログを見る。


「スキル『軽業アクロバット』を獲得した。

 スキル『歩法』を獲得した。

 特技『立体機動』を獲得した。

 変異ミュータント極旨デリシャス大猪ビッグボアを倒した。

 スキル『格闘』を獲得した。

 特技『奇襲攻撃サドンアタック』を獲得した。

 素材『変異ミュータント極旨デリシャス大猪ビッグボアの死体』を入手した。」


 また新しいスキルが手に入った。

 どうやら、さっきの巨大な影は猪であったらしい。

 アイテム一覧を確認すると、たった今目の前から消えた猪が入っていた。

 どうするか一瞬迷ったものの、ここでさっきの巨体を取り出しても扱いに困るのでスルーする事にする。

 機会をみて確かめ直そう。


 とりあえず、移動を再開することにする。

 マップによると、もう少しで森を抜けて山裾に出るようだ。

 当初の目的地は、その山を越えた所にある。


 今いる場所は「龍神の庭」と言う地名の盆地だが、目の前の山はその龍神の庭を囲む山の一つだ。

 急峻な山肌は植生も疎らで大きな岩があちこちに点在していた。


 岩肌を蹴って飛び越えながら、先程入手した特技を確認する。

 特技『立体機動』の効果は、壁や天井を利用した三次元的な動きが出来るというもの。

 とにかく複雑で立体的らしいが、説明が簡潔過ぎないだろうか。

 また、特技『奇襲攻撃』の効果は、不意打ちした時のダメージ上昇効果だった。

 ただし、効果はあくまでダメージ上昇のみであるらしい。

 この特技では不意打ちし易くなったり、攻撃が上手くなったりと言った効果は記載されてない。


 正直なところ微妙な説明ではあるが、これを機に特技の使い方なんかも学んでいく必要がありそうだ。

 とりあえず、ポイントは割り振っておく。

 スキルの使い方もいまいちよく分からない部分があるから、このあたりは今後の課題だろう。



……

…………

………………



 スキルや特技の確認をしながら一気に山肌を駆け上がっていく。

 山頂にたどり着いたら、中々の絶景だった。

 背後の裾野に広がる森と草原の緑、澄み渡る青空は何処までも高い。

 峠を越えて眼下に広がる山々と広大な森の向こうに、小さく街並みが見て取れる。

 ここからだと結構な距離がありそうだが、先程までのだだっ広い草原に比べたら、次の目的地の目星が付くのは素晴らしい事だと思う。


 ともあれ、ひとまずは当初の目的地である山裾の集落らしき場所を目指す事にしよう。



……

…………

………………



 先行きの見通しが立ったせいか、かなりテンションが上がってきた。

 目的地を見失わない様に、ピョンピョンと飛び跳ねながら移動する。

 明らかに人間離れした動きだが、誰が見ている訳でもないし気にすることもないだろう。

 何度かに一度は大きな跳躍をして、頂点に来る度にクルリと回って辺りを見渡していく。

 三度目の跳躍で通知音が聞こえてきた。


「特技『空中歩行』を獲得した。

 特技『立体機動』と『空中歩行』が統合され、特技『三次元機動』に進化した。

 スキル『探知術』を獲得した。」


 通知音を聞くのは、もう何度目だろうか。

 いい加減慣れてきたと思っていたが、また新しい事が起こっていた。

 『空中歩行』を獲得したと思ったら、自動で統合進化してしまったのだ。

 次々とスキルや特技を獲得していたが、これは予想していなかった。


 思わずその場に立ち止まる。

 って、自然と空中に立ち止まるのは、いかがなものかと思う。

 何と言うか今更といった感があるが、人間離れが甚だしい。



……

…………

………………



 太陽が傾き始めている事に気付き、気を取り直して移動を再開する。

 目的地はもう目と鼻の先だった。

 目的地近くで着地すると、周囲の様子を確認していく。

 いかにも自然のままといった感のある森、元は結構な幅があったであろうと思われるそれは荒れ果てて下草に覆われている。

 木々の間隙が一筋、森を切り分けるようにして伸びている事が辛うじてそれが道の名残りだという事を主張していた。


 獣道ですらない道の名残りを伝うようにして暫く歩けば、唐突に視界が開ていく。

 半日掛かりでようやくたどり着いた目的地を見やって……


「そんな気がしてたんだ。そうかなぁとは、思ってたけどね……」


 かつては立派に外敵の侵入を阻んでいたであろう石壁は風化して崩落し、分厚い門扉はボロボロに朽ち果て崩れ落ちていた。

 立ち並ぶ家屋の屋根は崩壊して抜け落ち、石積みの壁の名残りが在りし日の姿を感じさせる。

 住む人の絶えた集落は周囲の自然によって侵食され、かつての人の営みを呑み込んでいる。

 苔むす石壁と下草が道を塞ぎ、木々は高くそびえ立ち家を押し除けて大地にその根を食い込ませていた。


 中央広場だった辺りにやって来た。

 広場に隣接する様に盛り土の丘が連なり、頂上には風化してもなお原形を留める石造りの館が見える。

丘の麓の他の家屋より一回り大きな建物、屋根があったであろう位置から一際立派に枝を広げる木が見えた。

 風化してはいるが、他とは違い石壁には彫刻等の装飾が施されていた事が見て取れる。

 そこだけ周囲と違う雰囲気に、何とは無しに興味を惹かれてしまった。

 敷地の中に入ってみると、そこには大きなホールの様な空間が広がっていた。

 入口の左右から奥へと向かって朽ち果てた長椅子が列をなし、真正面奥の一段高い位置に一本の木が生えていた。

 木は大きな十字架を半ば呑み込む様な形で生えていて、その姿はまるで巨木が十字架を抱き抱えているかの様にも見えた。

 木漏れ日の降り注ぐ中、半ばまで木に呑まれるようにして高い位置に掲げられた十字架の姿は、どこか神秘的な雰囲気すら感じさせる。

 十字架を見上げる位置まで近づいた俺は、何となく神妙な気持ちになって胸に手を当てて黙祷を捧げていたのだった。


やっとたどり着いたけどね?

着いただけだった……

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