5、女官様
最近、更新をしておらずすみません。
すごく不定期更新です。また、時間をあけるかもしれません。
麗芳への挨拶を済ました芽衣は、芽衣がこれから生活する部屋へと案内された。
案内されたのはきれいに整えられた寝台付きの一人部屋で、大きな部屋で大人数で雑魚寝をすると思っていた芽衣は驚いた。
「あの、本当にこの部屋を私一人が使っていいんですか?」
「はい。麗芳様には、あなたにこちらの部屋を使っていただくように申し付かっております」
異様に頭が低い女官に気まずさを覚えた芽衣は、少し悩んだ後、口を開いた。
「...あの、私はただの下働きなので。えっと、その、あんまり畏まらないでいただきたいというか...立場は女官様の方が上なわけですし」
そう、おずおずと申し出ると女官は目を見開いた。
「え?下働き?今、あなた、下働きと言ったの?」
「はっ、はい。そうですが、なにか」
「...」
女官は呆然とした後、もと来た道を戻り始めた。
「えっと、あのどうかなさいましたか?」
「あなたはそこで待っていて!少し確認してくるから!!」
「はっ、はいぃ!」
女官の剣幕に押されながら芽衣は返事をした。
♢♢♢♢♢
「申し訳ないわ。こちらの方で少し、情報の齟齬があったようで」
戻ってきた女官は、開口一番にそう告げた。
「まあ、どちらにせよあなたは今日からこの部屋で生活することになるわ。荷物をほどいて、何か足りないものがあったら言ってちょうだい」
「はい、女官様」
本来の対応に一安心した芽衣は、さっそく荷物を部屋に運び込もうとした。
ふと、視線を感じそちらを見ると、先ほどの女官がもの言いたげにこちらの様子をうかがっていた。
「あの、まだ何か?」
「えっ、あ、あぁ。そういえば、あなたすごい綺麗な顔しているのね。っじゃなくて!あなたさっきから、私のこと女官様って呼んでいたでしょう?他の女官と紛らわしいから、私のことは訪夢呼びなさい」
「訪夢様、ですか?」
「!ええ、ぜひそう呼んで頂戴。準備ができたら言って。案内するわ。ええと、芽衣だったかしら?」
「はい。わかりました」
そうしてお辞儀をするなか、芽衣は、何故彼女が家名を名乗らなかったのかを考えていた。
けれど、荷解きをするうち、その疑問をすっかり忘れていた。
ただ、唯一記憶に残っていたのは、訪夢様、そう呼んだ時の彼女の嬉しそうな笑顔だけだった。
誤字、脱字などあれば、教えてください。