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夢に出てきた美少女の幼馴染みが転校してきた。  作者: 育難学
君の夢を見る
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2 吉岡と昼

「スプー、そんなのろけ話を聞かせくるなよ。メシがまずくなるだろ」


 食堂で昼飯を一緒に食べていた吉岡に朝のことを話すと、そう文句を言われた。


 こいつとは小さい頃に友達になり、それ以来なんとなく高校1年になる今まで付き合いが続いている。


 こいつも僕もコミュ障気味だったのでお互い以外に友達ができなくて、自然と友達関係が続いてきたというのはあるかもしれない。


 ちなみにスプーは僕のあだ名で名前の春を英語に変えてスプリング、それが短くなってスプーらしい。正直、こいつしか使ってない。


「のろけに聞こえるか。だけど、ゴジラのモノマネをしてくる幼馴染の話は本当にのろけと言えるのか」


「いいか、スプー。朝、幼なじみの女の子が冗談交じりに起こしてくれる話、こんなののろけ話以外の何者でもないだろ」


 その言い方は大分語弊があると思う。


「いや、空は姉みたいなもんだからな。つまり、ちょっと変わった姉に変な起こされ方をする話、こう聞くとのろけ話じゃなくて、悩み事だ。お前がいつも文句を言ってる姉ちゃんから受ける仕打ち、あれと一緒だな」


「姉というのはそんなに優しくないぞ、スプー」


 その発言にはやけに実感がこもっていた。


「お前は知らないと思うが、姉っていうのはなぁ、生まれながらの支配階級みたいなもんだ。弟を奴隷としか思ってない。毎朝、俺は寝相の悪い姉に蹴られながら起こしにいっている」


 そうして、しばらく自分が姉にどんな目にあわされているかをしみじみと語っていたのだが、しばらくすると自分で話題を変えた。


 いつものことである。自分の話したことで自分が落ち込んでくるらしい。


「まあいい。お前のようなやつがいかにリアルを充実させようが、所詮相手は三次元の女、二次元の至高の彼女に勝てはしない」


 吉岡はスマホを取り出し、こちらに向けてきた。


「俺の今季の最押しアニメ『ラノベなのか、ラノベでないのか、それが問題だ。』のヒロイン、冬空未来ちゃんだ。可愛かろう」


 画面では、白色の髪の幼い少女が優しげに微笑んでいるイラストがツイートされている。


 返信欄には、「待ってました、先生」や「これで生きていけます」といったコメント、海辺で馬が感謝の舞を踊っている動画なんかも送られてきていた。


 こいつはツイッターでイラストを投稿していて、ファンも少人数ながら確実に得られているというのを聞いた。


「俺は触れることすらできない女の子とのプラトニックで崇高な愛を育んでいるんだ。そんな俺にしょせん、三次元の幼馴染とのくだらないのろけ話なんかをしてくれるな。スプー」


 吉岡が更に二次元がいかに素晴らしく、三次元がいかに及ばないかを語ってくる。


 お前、季節ごとに彼女変わるから、崇高とは言えないだろとかいろいろ思うが、反論するのも面倒なのでいつも黙ることにしている。


 吉岡は自信たっぷりに持論を語る。頬杖をつきながら、それを聞くともなしに聞いていると、急に誰かが両手で僕の視界をふさいできた。


「だーれだ?」


 首筋に少し息がかかってくすぐったい。その声にはかなり聞き覚えがあった。


「空、お前の声がわからないわけ無いだろ。何年一緒にいると思ってんだ」

「へー、春ちゃんは私のことなら何でも知ってるんだね?」


 振り向くと、空は顔を赤らめながらそう言ってきた。


 お前のことでも何でもは知らないし、それ以外のことならむしろ何も知らないかもしれない。


 そこで空は僕の対面にいた吉岡に気づいたようで、ちょっと申し訳無さそうな顔をした。


「あっ吉岡くん、話の邪魔しちゃってごめんね」

「…」


 吉岡は無言のまま顔をそらした。お前、しょせんは三次元の女とか言ってただろ、会話くらいしろよ。


「空、それでなんか用か」


「今日、春ちゃん家のおばさんとおじさん、旅行に行ってていないんだってね」


「え、聞いてない、聞いてない」


 幼なじみが僕ん家の事情に僕より詳しい件について。これはラノベのタイトルにできるな。というか両親、息子も連れてけよ、旅行。


「おばさんに頼まれたから今日は春ちゃん家に行って、ご飯作ってあげようと思って」


「あっそうなのか。いつも悪いな」


 こいつはよく僕の家に来るのだが、それはだいたい朝僕を起こしに来るときと、休日の昼頃ふらっと遊びに来るときぐらいである。だから、こいつの手料理を食べるのは久しぶりだ。


 こいつの作るご飯は、前食べたときもかなりうまかったので、正直かなり楽しみである。


「うむ、存分に感謝したまえ。それでね、帰りに食材買いに行きたいから手伝ってくれないかなぁと思って」


「いいぞ。じゃあ今日、一緒に帰るか」


「うん」


 空と帰るのは久しぶりだと思う。いつもは家が近い吉岡と帰っているのだが、それが空に変わると思うと、少しだけワクワクしてしまう。


 僕はもしかしたら、深層心理で吉岡と一緒に帰るのを嫌がっていたのかもしれない。


「私、先生に頼まれたことがあるから、もう行くね。じゃあね、春ちゃん、吉岡くん。あっ、春ちゃん、放課後までに晩御飯何がいいか考えといてね」


 空が笑顔でかけていく。


 さっきのことの文句でも言ってやろうかと思って吉岡の方を見ると、何かを小声でつぶやきながら、一生懸命祈っていた。


「ノー二次元、ノーライフ。ノー二次元、ノーライフ。二次元の神よ、どうか私を三次元の攻撃からお救いください」


 こいつはやべぇな。そう思いました、まる。

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