17 吉岡と小言
「スプー、自分の気持ちに正直にならないから、こういうことになるんだぞ」
そう吉岡が説教臭いことを言ってきた。
こいつには慰めるという発想はない。ただ、あとで言い過ぎたと思ってフォローのメールが送られてくるくらいである。
「自分の気持ちに正直になってたよ」
何故か納得してないような顔をされた。心外だ。僕は妙なことは言ってない。
「それに、そんなこと言われたってなんで僕と連絡を断って学校に来なくなったのか分からないんだから、どうしようもないだろ」
「どうしようもなくはないと思うぞ」
こいつは何が言いたいんだ。
大体、何でこんなに責めるようなことを言われなくちゃならない、だんだん胸のところがムカムカしてきた。
「とにかく、もう終わったことだ。それに、そんなに落ち込んでない」
「落ち込んでなかったら、そんな風にはならないだろ」
こちらを見下ろしてくる吉岡の顔は少し心配げに見えた。
「そんなって僕はいつも通りだぞ」
そう言うと吉岡は、驚いたような顔をした。まるで、こいつ本当に分かってないのかとでも言いたげだ。
「お前、紅葉さんが来なくなってから、顔つきが酷いぞ。いつものなんか十倍ぐらい目が死んでるし、なんかやる気がないというか脱力したままだし」
「夢のあの子へ手がかりがなくなって落ち込んでいるからな、そのせいかもな」
吉岡はなんとも言えないという顔をして、
「そうは見えないんだがな」
と呟いた。
その日は家に帰ってから、何度も何度も夢でのあの子に会う方法を考え続けた。
今までは、紅葉秋と夢のあの子の関係を調べようと思っていた。しかし、もう紅葉秋に頼ることはできない。
それは大きな痛手に思える。本当に望みが立たれたような気分になってくる。
けれど今考えると、彼女を言い訳に使っていたのかもしれない。
夢の女の子に会うという非現実的な事を実現するための現実的な方法を自分が思いつけるはずがないと、心のどこかで思っていた。
だからこそ、それを考えないでいいように、紅葉秋という存在にすがり続けた。
考えることから逃げていたんだ。
現状と向き合う必要がある。夢のあの子をどうやって探すかについては完全に振り出しに戻った。
まず状況を整理しよう。
目指しているのは夢のあの子に会うこと。
方法は、一つしか思いつかない。夢の中の僕が、彼女に唯一会える僕が、彼女に自分の気持ちを伝えるという方法だ。ただ、それには大きなハードルがある。
夢の中の僕が夢が夢であると気がつく必要があるのだ。つまり、夢を明晰夢に変えなければならない。
そんなことが可能なんだろうか。
それでも、やるしかない。それしか道は見えていない。
そう決意したその日から、いろいろな方法を調べて、毎晩実行した。
彼女との夢でのことを思い出しながら、少しでも可能性がありそうなことは全部試した。
何か正解が一つでもないかと思いながら、悩みながら、彼女と夢で会えることを願って眠る。そんな夜が続いた。
本当に正しい道を進んでいるのか分からない、そもそもこんなことが本当に可能なのかも分からない。
ただ、すべてが終わってしまうようなそんな恐怖感に苛まれて、何かしていなければいられない気分だったんだ。




