12 転校生と文通
それからはしばらく、早朝彼女の机に手紙を入れて、放課後空き教室に回収に行くという生活が続いた。
文通1回目
『返信くれて大変うれしいです。正直、返信してくれるとは思ってなかったので、テンパってしまっています。何が気になるかということでしたが、ひと目見たときにどうしても気になってしまって、それだけなんです、こういうのはなんていうんでしょうね、なんとも言葉で言い表せません。僕からも1つ質問してもいいですか、紅葉さんはお昼は何を食べてますか?』
『いえ、別に何か無下にするのも悪いかなと思って返信しただけですから。それで、私が何をお昼食べてるか、ですか? お昼はチョココロネを食べてますね。あなたは、お昼何食べてるんですか?』
そうだな、今日もチョココロネ食べてるな。
「文通やってんだから、ストーカー行為はやめろよ」
一緒に昼食を食べていた吉岡がそう言ってくる。
「いや、今までの癖が抜けなくてな。だいたい最近はちょっと見てることがあるだけで、前ほど見つめてるわけじゃないから」
吉岡はそこでちょっと自慢げな顔をした。
「まあ、俺のおかげで好きな子とのコミュニケーションが取れるようになったからな。舞い上がる気持ちもわからないではないけど」
こいつ、自分のおかげの比重大分重くしてない?
大体認識が間違ってる。
「いや、僕は別に好きじゃないぞ」
そう言うと吉岡はこっちを見て、ムカつく顔をした。
「文通をしながら毎日ストーカー行為を繰り返す相手のことが好きじゃないって、ちょっとその理屈は通らないと思うんだが」
そんなことをのたまってくる。
ストーカーじゃないし、別に好きじゃないとさらに反論しようかとも思ったが、めんどくさいので放っておいた。
文通2回目
『まだ緊張してしまいます。今更ですが、こんな面倒くさいはずのことに付き合ってくれてありがとうございます。質問については、僕はお昼は家から持ってきたお弁当を食べています。冷凍のハンバーグなんかが入っていることが多いですかね。今日も一つ質問させてもらいますね、紅葉さんは好きなキャラクターとかいますか。』
『そんなに緊張しなくても大丈夫ですよ。えっと、私の好きなキャラクターですか。タツノオトシゴのりゅうちゃんってキャラクターが強いて言えば好きですかね。可愛い見た目なんだけど、頑張って自分を強く見せようとしていて、でも全然うまくいってなくて、そんなところが可愛い子なんです。それにとにかく目が可愛いんですよ、とってもつぶらな瞳をしているっいうか、それに加えて特徴的な口もなんだか見ているととっても癒やされますよ。…』
それからも随分と長くりゅうちゃんへの愛が語られていた。やっぱりあのキャラクター、相当好きだったんだな。
その日の昼休みは、吉岡がまるで息子の学校での出来事を聞く父親のような顔をして、
「どうだ。うまくいってるか」
と聞いてきた。
「ちょっとずつ心を開いてくれてる感じはするな」
そう言うと、吉岡はドヤ顔をした。
「そうか、そうか」
そう言って、笑う。こいつは何目線でこっちを見てるんだろう。
その日の夜また彼女、紅葉空と過ごす夢を見た。
そして、また告白回数が増えた。
彼女につながる何かが得られないかと思っていたが、やはり夢の中の僕には期待できそうにない。どうにかして夢であるという事実を僕に分からせることができれば何かが変わるのかもしれない。ただ、どうすればいいのかは全く分からない。
夢の自分に対して、何で気づかないんだといら立ってしまう。これ以上考えていても何も思いつきそうにないな。それよりまだ希望が持てそうな可能性について考えていたい。
やはり紅葉秋と何か関係がある気がする。このタイミングで全く容姿が同じ人間に出会うとは考えづらい。ただ、彼女が何か知っていれば僕に話しかけてこないのもおかしい気がする。まぁ、その辺りも仲良く慣れれば、分かることだろう。
彼女と仲良くなろうと決意を新たにした。




