屍体の土の上には桜が植わっている!
屍体の土の上には桜が植わっている! これは信じていいことなんだよ。
土の中にはいろんなやつが潜っている。目には見えないが、そいつの発する音から、匂いから、なんとなくそいつらのことを想像して暮らしているんだ。そんなところに友情ってもんが生まれるから、こいつはどこかこじらせているぞと思うことがあるとついお節介をしたくなるのだろう。良くも悪くもここのやつらはみんな優しいから、大勢こぞって一心不乱に腐爛していくのさ。
俺はそいつがひどくおぞましいものに思えた。しかしついこのあいだ、俺はこの気分を解消する、いや、誤魔化すすべを思いついたのさ。
一体全体、このおぞましい屍の上にはなにがあって、その精気を吸って地上の世界で栄えているものはなんなのだろう。それは、ひょっとしたら美しい桜の樹なんじゃないか。―― すべての屍の上にはきっと桜の樹があって、美しい花を咲かせているのだ。
思えば、土の下に桜が埋まっていることのほうが考えてみればどうもおかしい。埋まっているのが桜だとすれば、地上に生えて栄えているものは、そいつは腐爛しきった屍に違いない! 土の下にはたくさんの屍体が埋まっているが、そのどれもが、地上ではなんともすばらしい、美しい花を咲かせているのだ。―― そう考えると、おぞましい気分も少しは楽にならないか。
君は眉をひそめているね、俺だってそうさ。こんなのみんな嘘っぱちだ? 俺だって、信じているわけじゃない。
しかし、いったいどこから湧いてきた空想かわからぬ桜の樹が、花が、おそらくあと数十分のあいだは俺の脳内を支配して、屍体のおぞましさを誤魔化しつづけるだろう。
そうさ、屍体の土の上には桜が植わっている。今こそ俺は、この土の中で酒が飲めそうな気がする!
はい、かなりダークな内容ですね^^;
でもね、思うのですよ。
たとえば、ここで荒れてる人が、地上ではちょー優秀なエリートで、
逆にこっちでまともに見える人が、地上ではあまり褒められた生活送ってなくて……
そういう空想をしてみると、なんか楽しいなって。
一種のオプティミスムですけどね。
そういう空想の物語ですので、どうかあんまりまじめにとらえないでくださいな。