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第6話 伯爵家の腹黒フレッド

 

 颯爽と現れたのは、高価そうな衣服を着た、十四、五歳の少年だった。

 いや、この世界では十五歳で成人するから、少年はおかしいのだろうか?

 まぁ、見た目はまだ幼いので、少年でも大丈夫だろう。


 見ただけで高価だとわかる服装、手入れのされたサラサラの金髪、深く濃い青色の瞳、その全てが彼を高貴な存在だと認識させる。

 内側からも高貴なオーラがにじみ出ているのだ。

 それもそのはず。何を隠そう、彼はヴァレリー伯爵家の長男、フレデリク・ヴァレリー様なのである。

 お金持ちでイケメンってどんなチートだよ。


 冒険者Aの関節をキメながら、フレデリクに挨拶をする。


「これはこれは、フレデリク様ではございませんか。このような体勢で失礼」


「……フレッド様いらっしゃいませ」


 おや? エヴァがフレデリクを見て面白くなさそうな顔をしているぞ。

 まぁ、最初の出会いがアレだったからな。


「いや、構わないよリット。ごきげんようエヴァ嬢。騒がしいと思ったけど、またかい?」


「ええ、お恥ずかしながら」


「ふふふ、そんなにかしこまらないでくれよ。僕と君との仲じゃあないか」


「そんな仲になったつもりはありませんが……」


 冗談はやめて欲しい。勘違いされてしまう。


「……お兄ちゃんは私のです」


 ほら、エヴァがすごい冷たい目で見ているぞ。

 うん。僕はエヴァの物だぞ〜。


「つれないなぁリットは。あとエヴァ嬢、冗談だからそんな目で見ないでくれ。その男は、何をしたかは分からないが、まぁ離してあげなよ」


 そう言われて、冒険者Aを解放する。

 冒険者Aは腕を気にしながら立ち上がった。


「あんた貴族かよ。助かったぜ」


「言葉遣いに気をつけたまえ、僕の友を煩わせた罪は重い」


 その言葉を聞いてかしこまる冒険者A。


「この店に迷惑をかけることは、僕が許さない。このフレデリク・ヴァレリーが」


 ヴァレリーの名を聞いて、ますますかしこまる。

 ヴァレリー家は、この聖王国でもかなり権力のある貴族なのだ。家柄が上の貴族でも、ヴァレリー家に直接喧嘩を売ったりしない。



「ははぁ」と、頭を下げる冒険者A。

 あのぅ、僕の時と、態度が違いすぎませんか?

 えっ? 格が違う? 現金な奴だ。とりあえず後でエヴァに謝ってくれよ。それでチャラだ。



 冒険者Aは、エヴァに頭を下げて謝罪をすると、仲間と一緒に店を出る。


「旦那ぁ、また来ますぜ」


「エヴァの嬢ちゃんもすまなかったな」


「フレデリク様これで失礼しやす」


 各々に挨拶をして店を後にした。



「さてと、これで食事を楽しめそうだ」


「フレデリク様ありがとうございます。少々腑に落ちませんが……」


「細かいことは気にしないことだよリット」


「そうですね……では、本日の昼の営業は終了しましたので、食事はまた明日ですね」


「ちょ、ちょっと待ってよリット!? おかしいよ。事情はわからな……大体エヴァ嬢がらみか。その事情を察して解決したのは僕じゃないかい? だったらご褒美があってもいいじゃないか」


「嫌です」


「バッサリ! いやいやバッサリすぎるよ。少しくらい延長して営業してもバチは当たらないよ」


「そうですか。バチは当たらない。なるほど……なら、お腹にあたる物なら提供しましょう」


「食事処にあるまじき発言だよ! 言葉遊びにしたって冗談がすぎるよ。何に腹を立てているんだい?」


 え? あなたと話しているとイラッとするからですが、何か?


「何故!? マイ フレンド!」


 そういう気持ち悪いとこだよ。


「僕とあなた様は身分違いなのです。お立場を考えては?」


「友情に身分は関係ない! 僕には君しかいないんだ!」


 やめろっ! 別れ話をする恋人同士みたいじゃないか。気色悪い……。

 ほらっ! エヴァがもう絶対零度の視線に! 大丈夫、兄にそんな趣味はない。

 まだ店にいる常連客達は、笑ってそのやりとりを見ている。



 フレデリクはいつもこんな調子なのだ。

 冗談なのか本気なのか分からない事を度々言って、僕を困らせてくる。

 そしてそれを楽しんでいる節がある。

 今だって、散々言い合いをしているのに時々ニヤケている。

 陰湿腹黒イケメンめ。知っているぞ、アンタが巷でなんと呼ばれているか。

 伯爵家の腹黒フレッド。


「失礼な。僕のお腹は白くて艶やかだよ。ピュアホワイツ! 見てみる? ねぇ、見てみる?」


 鬱陶しい!


 この鬱陶しい腹黒フレッドが、この店に通うようになってから半年は過ぎただろうか。貴族としての仕事もあり忙しいのに、週一のペースで足を運んでくれている。

 正直に言って月一のペースでも煩わしいが、黒猫亭の料理を気に入ってもらえた事は嬉しく思う。

 普通、貴族が庶民の宿屋に料理を食べにくる事自体おかしいのだ。

 彼は変わり者でも有名だからな。イケメンなのに勿体ない。


「それは僕が君に夢中だからさ」

「黙れ」


 あっ、つい素が。


 ん? エヴァその手に持っているものはなんだい? 危ないから置いておこうね。

 おい誰だ? エヴァに人の頭を簡単に砕いてしまうような禍々しい鈍器を渡したやつは?

 ははっ、あなたですか。後でお話があります。


「ここはいつ来ても騒がしいなぁ」


「誰のせいですか、それより注文するなら早くしてください」


「スマイル下さい」

「帰れ」


 ……誰かこいつを黙らせてくれ。


 あっ、エヴァそれは置いておこうね。




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