第4話 転生先が宿屋だった件
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無事に転生した僕は、中世ヨーロッパくらいの文明のファンタジー世界に居た。
その世界の中でもわりかし裕福な、シャインハート聖王国という国の、王都エルトムントにある宿屋の息子に僕は転生した。
転生して十年の歳月が過ぎ、僕はなんの問題もなく、すくすくと成長していった。
そして数年前からお店の宿屋を手伝うようになり、今では毎日のように、僕はお店で忙しく働いている。
うれしい悲鳴が今日も聞こえる。主に母さんの。
ここは毎日家族とお客さんの笑顔が咲き誇る、僕の自慢のお店だ。
仲のいい家族に個性豊かなお客さん達、今日もお店は大盛況。忙しいけど楽しい日々を送っています。
店の名前は黒猫亭、何か運送していそうだがそういったサービスはしていない。
あっ、新規のお客様だ。
「リット! 席に案内したげて!」
「はーい」
「リットついでに出来た料理を運んでくれ!」
「あいよー」
リットそれが僕の名前だ。リット・アルジェント、かっこいいからそれなりに気に入っている。
転生前は何て名前だったっけ?
僕の名前のついでに、僕の家族を紹介しよう。
「おーい、まだかぁ?」
父がフライパンを回しながら僕を呼んでいる。
「今行くよー」
父の名はライオス、厨房で料理を作っている筋肉質な茶髪のイケメンヒゲおやじ。優しくて料理がうまい。とても趣味(料理)が合ってよく一緒に新作メニューを考えている。
あと母さんには尻に敷かれている。(笑)
「リットー、こっち片付けてー」
今度は母が僕を呼んでいる。テーブルの片付けのようだ。
ん? 母さん手空いてるよね?
「やって」
めっちゃ笑顔で拳を握っていた。
……うん、分かってました。僕がします。
母の名はルーティ、お店のホールでせわしなく働いている。見た目はクールビューティだが、実際は気が強くて、腕っ節も強いらしい。僕も母親の圧力の前には、神の加護さえも頼りなく感じてしまう。
黒猫亭という名前は、母の冒険者時代の二つ名から取っているらしい。黒髪だからかな? 僕は母親似で黒髪だ。
幼いのでたまに女の子に間違えられる。母が若々しいので、美人姉妹ですねぇ、と言われるのが一連の流れ。
それを言われて嬉しいのは母だけだ。僕は男です。
そして最後に紹介するのが、アルジェント家の宝!
「お兄ちゃーん! エール追加だってぇ!」
こちらを勢いよく振り向いてオーダーを通す金髪の美少女。振り向いた勢いで髪が大きく揺れてキラキラと輝いている。
はぅあっ! まっ、まぶしい! めっちゃシャイニング輝いてる!
そして、世界一可愛い!
この世界一輝く可愛い美少女の名前はエヴァ。
エヴァンジェリン・アルジェント、僕の何よりも大切な妹だ。
シスコン? それが何か?
エヴァンジェリンはまさに至宝、そして至高。この世の全ての財を集めても釣り合うことの敵わない究極の存在!
エヴァの顔立ちは本当によく整っていた。細くてキラキラ輝く金色の髪、見ていると吸い込まれそうなクリクリとした、碧く澄んだ大きな瞳。
造形の整った人物を、よく人形のようだと例えることがあるが、エヴァも例によってよく言われている。
だが、人形と比べるなど僕の妹を馬鹿にするなよ! と、言わせてもらいたい。
もし比べるとするならば神だ!
いや主神様とか師匠って言う意味じゃないよ。大体じいさんとおっさんじゃないか、論外だ。
比べるとするならば女神だね。そう女神!
まぁ、会ったことはないのだけれど……。
だが確信がある。美を司る女神がいるとして、エヴァは断じて引けを取らないと!
いや勢い余って女神を超えるまである! 断言しよう。
ふふふ、エヴァンジェリンばんざーい!
「もうっ! お兄ちゃんエール追加って言ってるでしょ!」
あ、はい。
頰を膨らませたエヴァに怒られてしまった。
ふぅ、いかんいかん軽くトリップしてた。
だがしかし、頰を膨らませて怒るエヴァも可愛いなぁ。
もっと怒らせたらどんな顔するかな?
見てみたい気もするけど、やっぱりエヴァには笑顔が似合う。
「ごめんごめん」
そう言って樽からエールをジョッキに注いだ。
「お兄ちゃん今度はこっちね」
はいはい。喜んで、お姫様。
「恥ずかしいから人前で言わないの!」
なるほど、誰もいなかったら良いんだね。と、胸の内で勝手に解釈した。
エヴァは、恥ずかしがりながらもどこか嬉しそうだった。
そんな表情がまた可愛くて、だらしなく頬を緩めてしまう。
エヴァの可愛さは、とどまるところを知らないなぁ。
転生先で、妹にデレデレのリット少年だった。
面白いと思っていただければ幸いです