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第34話 開店準備中

 

 ハンバーガー屋台の開店が3日後に決まった。

 これはヴァレリー家からの手紙で知った事だ。

 朝届いたのだが、仕込みなど忙しかったので、夜に開封することになってしまった。


 うん。急だね。


 てか早すぎだろ。


 準備期間ほぼゼロやん。

 あっしには黒猫亭の営業もありますからねぇ。


 まさか打ち合わせのすぐ後に出店が決まるとは。


 心の準備とかあるだろうが。


 結局フレデリクとイリナにされるがままだな。

 まぁ感謝はしているが。


 でもどうすればいいんだ?

 店を空けるのは父さんに悪いし。


 悩んでいるとルーティにおでこを小突かれた。


 あいたっ!


「眉間にシワが寄ってるわよ」


 母さんは目尻に増えたよね。


 余計な一言を言ったせいで拳骨をくらった。


 ……痛い。


「喧嘩売っとんのかおのれは」


 すいません……。


「それで、なんか悩みがあるんじゃないの?」


 よくわかったな。さては母さんエスパーだね。


「えす? 何だって? よく分かんないけど、悩みがあるなら言ってみなさい。それぐらいはしてあげるわよ」


 母さんが母親みたいだ!


 もう一発拳骨をくらった。


 同じ場所……。痛い。


「早よ言え」


 へい。


「実はフレデリクから手紙が届きまして………」


「まさか、工場と屋台で金銀貨幣ウハウハ大作戦が中止になったとかじゃないわよね」


 なにその作戦!?

 名前のセンス秀逸過ぎない!?


「でしょう」


 ルーティがドヤ顔になる。


 厨房で話を聞いていたライオスは苦笑いをしている。


(二人ともセンスないなぁ。リットは容姿だけじゃなく感性もルーティに似たのかもしれないな)


 ライオスは、仕込みをしながらそんな事を思って、微笑ましげに二人を見ていた。


「その作戦は実行段階に入っているよ。工場はよく分かんないけど……」


「じゃあ何よ? 何が心配なの?」


 実は、カクカクシカジカで。


「なるほど、マルマルウマウマね」


(二人ともそれで通じるのか?)


「リットあんた聞いてないの?」


(通じたみたいだな……。俺にはわからん)


「聞いてないって、何を?」


「……本当に聞いてないのね。はぁ。フレッドのイタズラにも困ったものね」


 なになに? イタズラだと?


「あんたを驚かせようとしたんでしょ」


 いつも驚かされてるから疲れるんだよ。

 で、内容は?


「明日からヴァレリー家のメイドがうちに手伝いに来るのよ。だから心配ないわよ。稼いでらっしゃい」


 明日!?


「何で教えてくれないの!」


 知ってたら盛大にお出迎えの準備をして株を上げれるのに!

 もう夜じゃないか!

 騒がしくすると、宿泊客に迷惑をかける。


「流石に知ってると思ったのよ」


 くそぅ。 せめて仕事内容を教えて出来る男を演出したい。


「朝から来るみたいだからよろしくね」


 朝からメイドが拝めるのか!?

 眼福 眼福。


 テンションが上がって寝付けないかもしれないな。

 だが、早めに寝て明日に備えたほうがいいな。

 寝ぼけた顔じゃかっこつかないし。

 メイドさんにチヤホヤされたい!


 よし寝よう!


「リット、仕込み」


 あ、はい。



 ――――――――――――――――――



 ――翌日の朝。



「おはようリット。いい朝だね」


「メイドさんは!?」


 フレデリクが朝から来訪したのだが、肝心なメイドさんがいない。


 どこに隠した!


「いや、隠すもなにも後から来るからね。準備があるでしょ」


 くっ、待ち遠しい。


「それじゃあリット、行こうか」


 へ? どこに?


「屋台を設営中だから、色々と使い勝手を試してみてもらいたいんだ。配置とかね、リハーサルみたいなものだよ」


 本当に急だよな。


「ごめん ごめん。工場の生産率を上げるためだよ。黒猫亭の事を早く知ってもらって人を集めるためにね。父上が他の貴族に宣伝して興味を持った人もいる。オーランドさんも宣伝して催促が来たらしい」


 色々早い!


 僕が普通に過ごしてたら、いつのまにか企画が最終段階に!


「だから、頼んだよ。君にかかってるんだ」


 プ、プレッシャーがパない……。


「さぁ、早く準備して行くよ」


「あの……メイドさんは……?」


「だから遅れてくるってば、ライオスさんルーティさんエヴァ、リットをこれから毎日借りるよ」


 いやあの、メイドさんは?

 ギブミーメイド。


「ああ、フレッドよろしく頼む」


「こき使ってやって」


 父さんと母さんが、僕をメイドから遠ざけようとする。


 待って! 少し時間をくれ! メイドさんとキャッキャウフフしたい!


「……わたしも行きたいのに。お兄ちゃん行かないで」


 そうだエヴァ。僕を引き止めるんだ。父さん母さんはキミにあまい。


 ここでフレデリクが余計な一言。


「早くリットが行かないと、ウチのメイドが来て、リットが取られちゃうかもよ」


 エヴァは顔を青くして。


「や! お兄ちゃん早く行って!」


 エヴァ!? まさかの裏切り!


 フレデリク許さん!


 フレデリクを睨み付けると、耳元でこう囁かれた。


「(向こうにもメイドがいるから)」


「よし行こう!」



 単純なリット少年だった。



 ――――――――――――――――――――



 ――王都エルトムント、城下町。



「遅いわよリット」


 城下町の人通りの多い一角で、イリナとヴァレリー家のメイド達が、屋台の設営を行なっていた。


 男手が足りなさそうだ。

 ふふふ、良いところを見せるチャンスだな。


 それにしても男の仕事じゃないのか? それにあの変態執事もいないし。周りを見る。

 ほっ、ウィリアムさんは居ないようだ。安心。


「何キョロキョロしてるのよ。早く手伝いなさい」


 へいへい。


 生返事を返したら、イリナに尻を蹴られた。


 お尻が二つに割れちゃう! あっ、最初から割れてた。


「しっかりしなさいよ。アンタの店でしょ」


 イリナに言われてハッとする。


 そうか、屋台とはいえ黒猫亭の名前を使うんだ。しっかりせねば。

 だが、少し訂正しなければならない。


「僕だけの店じゃない。これは()()()()()


 イリナとフレデリクを見る。


 フレデリクは笑顔で頷き、イリナは顔を赤くして照れていた。


 二人への感謝の気持ち、これで伝わったかな。

 また二人には、別の形でも感謝を伝えようとは思っていたが、このタイミングでも伝えたかった。


 さてさて、それじゃあ僕達の店を見せてもらおうじゃないか。

 ほとんど他の人に任せきりだったが……。


 リットは、設営している屋台を見る。


 ふむ、まだ完全ではないが形ができているな。


 ていうか何でわざわざこんな人に見られるところで作ってるんだ?


 あっ、なるほど何が出来るか見る人が楽しむためだな。早い話が宣伝か。


 前世でも、何か新しい店がオープンする前は気になって設営中の店を覗き込んだものだ。


 人は新しいものに目がないからな。


 だがしかし周りにも屋台が並んでいる。邪魔ではないだろうか?


「場所代を払ってるから問題ないよ。はみ出したら罰金だけどね」


 なるほど、なら安心。そしてお金を払っているヴァレリー家に感謝。


「リット、内装はアンタがやらないと、わけわかんなくなるわよ」


 そうだな。


 まぁ、鉄板置いて、隣に調理台、食材を入れる魔導冷蔵庫、あとは細かくなるから見て決めよう。


「今行くよ」


 そう言って、完成間近の屋台に近づいて行く。


 色々な人に手伝ってもらってるんだ。良い結果を出したい。


 さぁ、頑張って完成させるぞ!


 リットは意気込んで、屋台の設営を開始するのだった。



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